第37話 最初の任務
痛む首を押さえて、鱧は険しい顔で呟く。
「シム兄さんを仲間にするには危険やな。何をしでかすか予想できひんわ」
「私も同意見です。敵対した時、対処が難しそうですね」
「あんな暴力、HPとか関係ないからなぁ……」
二人の見解に対し、三好が控えめに手を挙げた。
彼は難しそうな顔で言う。
「でも、四人で魔王討伐に向かえと言われたけど」
「言い訳なんてどうとでもなるやろ。別にシム兄さん以外の四人でも……」
鱧が唐突に口を噤む。
大股で戻ってくる志村を目にしたからだった。
彼は巨大な丸太を肩に担いでいた。
かなりの重量のはずだが、それをものともしない歩みである。
小さく嘆息した後、鱧は嘘臭い笑顔で話しかけた。
「それどうしたん? めっちゃ重そうやけど」
「城の資材置き場から拾ってきた。武器にも盾にもなる」
「ほー、そりゃええね」
鱧はフランクに接しつつ、小声で「あんなんでぶっ飛ばされたらお陀仏やな」とぼやく。
それを聞いた三好は、丸太がゲーム用武器ではないことに気付いた。
(殺し合い上等ってわけか……)
三好は、自分が持っているゲーム用武器を途端に弱々しく感じてしまった。
丸太の一撃が飛んできた時、数値ばかりの玩具では身を守れないからだった。
ほどなくして四人のもとに城の使者が駆け足でやってきた。
使者は息を整えてから頷く。
「よし、全員揃ったな。では最初の任務を命じる」
「よっ、待ってました」
「魔王に操られた盗賊が、南の村で略奪を行っている。お前達はただちに村へ赴き、盗賊の悪事を食い止めるのだ」
「了解した。任せてくれ」
やる気に満ち溢れた志村が歩き出した。
丸太を揺らしながら彼は一人で進む。
その背中は使命感を滾らせていた。
「すぐに向かうぞ。村の人々を救わなければ」
離れていく志村を見て、鱧はニヤリと笑った。
「危険な状況はシム兄さんに丸投げしよか。そしたら安全にメインクエストを進められそうやわ」
「……相変わらず卑怯だな」
「デスゲーム中の卑怯は褒め言葉やで」
鱧は意地の悪い顔でピースサインを見せる。
それに対して三好は何も言い返せなかった。
鱧の言い分が間違っていないと思ってしまったからだった。
(俺もどんどん物騒な思考になってきてるんだな……)
肩をすくめた三好は、それ以上の感想を持たずに志村を追いかける。
そうして四人は南の村へと向かった。




