第33話 謁見
三好達は使者の案内で城に到着した。
見上げんばかりの立派な城を前に、三好はぽかんと開けて感心する。
「すごいな……」
「運営のこだわりやね」
使者はそのまま止まらずに進んでいく。
三好達は門番の視線を受けながら城内へと入った。
彼らは赤い絨毯の敷かれた長い廊下を歩く。
慌ただしく動き回る騎士や使用人を横目に、三好は疑問を口にした。
「運営はどうしてこんなゲームをしているんだろう。高額の賞金もそうだけど、絶対に赤字なのに」
「たぶん赤字ちゃうやろ」
「え?」
「そりゃ道楽の可能性も捨て切れんけど、儲かるからやってると考えるのが自然やんね」
鱧はちらちらと周囲を見やる。
それから少し声量を落として続きを話した。
「こんなゲーム、その気になればいくらでも稼げるで。たとえば有料配信なんてどうや? 物好きはいくらでも金を出すと思うけどな」
「確かに……」
「インターネットの無法地帯——ダークウェブにはこの手の動画が出回っていると聞きます。荒唐無稽な話にも思えますが、あながち間違っていない推測かと」
黙って話を聞いていた西園寺が補足した。
鱧は機嫌よく頷いた後、いたずらっぽい表情で三好に尋ねる。
「僕らの殺し合いが配信されてたらどうする?」
「……どうしようもないだろ。俺は賞金だけ貰って平穏に暮らしたいよ」
「ド正論やなぁ」
やがて三人は謁見の間に辿り着いた。
使者に促されて室内に踏み込む。
玉座には灰色の髪の王が顰め面で腰かけていた。
厳格な雰囲気を感じ取った三好は、緊張してたじろぐ。
彼は張り詰めた空気が嫌になり、さっそく外に出たくなっていた。
しかし、実行に移すほどの勇気もないのでじっと耐える。
三人を見た国王は、昨今の世界情勢について語る。
長々とした説明を終えた後、国王は三人に頼む。
「この世界は魔王の脅威に晒されている。どうか魔王を倒して世界の平和取り戻してくれぬか」
真っ先に反応したのは鱧だった。
彼は前に進み出ると、優雅に一礼して答える。
「ぜひやらせてくださいな」
「ふむ。実に頼もしい。よほどの自信家のようだ」
「いやいや、それほどでもないですよー」
三好はへらへらと笑う鱧の肩を掴み、小声で詰め寄った。
「即答していいのかっ!?」
「大丈夫やろ。というか、ここで断った方が危なそうやん。不敬罪とかな」
「そうだけども……」
反論された三好は言い淀む。
その間にアテナの声が脳内に響き渡った。
『メインクエストへの参加を確認しました。メインクエストはトゥルー・ライフ・クエスト全体に関わる物語です。プレーヤーの行動によって展開が大きく変化しますので、くれぐれもご注意ください』
「ほらな、受けて正解やろ。そんじゃ僕らで世界を救おっか」
軽い口調の鱧に、三好はそれ以上の文句を吞み込んだ。




