第32話 舞い込む依頼
武器屋を出た鱧は、何度か振り返る。
店主の姿が見えない位置まで離れてから、彼は半笑いで呟いた。
「さっきの店長、プレーヤーやったな」
「そうですね」
「ミヨシンは気付いた?」
「いや、全然……どうやって見分けたんだ」
三好は驚きながら訊く。
鱧は特に隠さず断定した理由を明かした。
「会話してた時、スキルって言葉に疑問を抱いてなかったとこかな」
「NPCはスキルやレベル、ステータスといったゲーム用語を知らない設定です。アテナさんは例外ですね」
「そうそう。やから普通にスキルの話をしてたのがおかしいっちゅう寸法なんよ」
鱧と西園寺の解説を受けて、三好は己の注意力の低さを思い知る。
次に襲ってきたのは、諦めに近い自己嫌悪だった。
(なんか俺ってとことんダメなんだな……)
ゲーム開始以来、三好は目を背け続けてきた事実に苛まれていた。
すなわち自分自身の不甲斐なさや能力不足、劣等感である。
鱧と西園寺が鋭い考察を披露する中、三好だけが何も貢献できていない。
二人に追従するだけの役立たず――残酷な認識が彼の心をじくじくと苛め抜く。
(俺だって、本当はやれるんだ……まだチャンスが来ないだけで)
三好は懸命に自身を慰める。
そんな折、彼らの行く手を阻むように一人の男が現れた。
男は貴族のような礼服を身に纏い、冷徹な表情で命じる。
「そこの三人。止まれ」
三好達はほぼ同時に身構えた。
前方の男を注視したまま、鱧と西園寺が淡々とやり取りをする。
「なんや。またプレーヤーか?」
「どうでしょう」
「警戒した方がええね」
鱧が前に進み出た。
彼は嘘臭い笑顔で男に話しか蹴る。
「どうもどうも、何か用です?」
「私は王城の使者だ。お前達に依頼がある。至急、城まで来ていただきたい」
使者の男は硬い口調で用件を述べた。
三好達は顔を見合わせる。
「うーん、何かのイベントっぽいな。どうしよっか」
「罠の可能性も否めませんが、得する出来事があるかもしれません」
「RPGの知識でいくと、乗って損はない気もするなぁ。最悪、無理やり逃げればええわけやし」
「三好さんはどう思いますか?」
西園寺に意見を求められた三好は、マップを確認しながら答える。
「悪い展開じゃないと思う……城にもレアアイテムがあるから、それを貰えるかもしれない」
冒険者のスキル【宝の地図】の効果により、三好のマップにはレアアイテムを示す光点が点滅していた。
光点は街の中央部の城にも点在している。
鱧はさっそく使者に歩み寄り、低姿勢で揉み手をしながら接する。
「ほんじゃ、さっそくお城に行きましょか。ささ、どうぞどうぞ」
使者は困惑しながら先導を始める。
鱧のウインクを見て、西園寺と三好もすぐに後を追った。




