第31話 外れた箍
根岸は連続で閃光を放つ。
鎌倉の隠れる棚を集中的に攻撃しながら彼は叫ぶ。
「早く出ていけ! 二度と戻ってくるな!」
激昂する根岸とは対照的に、鎌倉には依然として余裕があった。
絶えず飛んでくる閃光にも怯まず、呑気に欠伸を洩らす。
「さて、そろそろ反撃するかね」
鎌倉は棚から魔法武器を掴み取ると、隙を見て根岸に投げ付けた。
閃光の反撃ができないペースで次々と投擲していく。
思わぬ行動に根岸は焦る
「や、やめろ! 店の商品だぞ!」
「ククッ、嫌なら止めてみろ」
鎌倉の投げた武器の一つが、根岸の足に当たった。
ゴーグルの振動後、HPが一気に減る。
レベルをあまり上げていない根岸はそれだけで瀕死となった。
あっけなく追い込まれた根岸は、狼狽えながら店の奥へと避難する。
「うわああああああああっ」
根岸は戻ってこない。
投擲を恐れる彼は戦意を喪失し、立て籠もることを選んだのであった。
残された鎌倉は荒れた店内を見て笑う。
「へっ、ビビリが」
『当然の反応かと思います』
「ああいう瞬間に踏ん張れない奴が死ぬんだよ」
アテナの会話しつつ、鎌倉は持てるだけの魔法武器をゴミ袋に放り込んでいく。
それをサンタクロースのように背負うと、彼は堂々と外へ出た。
「なあ、アテナ。NPCはプレーヤーの犯罪行為を咎めるんだよな?」
『はい。犯罪が発覚した場合、騎士団に通報されたり、攻撃されることもあります』
「つまり見つからなけりゃいいわけだ」
頷いた鎌倉は店の裏手に回る。
そこで彼が取り出したのは火炎瓶だった。
市場で調達できる物から作成したものである。
鎌倉は百円ライターで火炎瓶に着火すると、武器屋の壁に投げ付けた。
瓶が割れて炎が散る。
追加で何個か投げると、引火して店全体に炎が回り始めた。
目撃者がいないことを確認し、鎌倉はさっさと歩き出す。
通りではNPCが騒いでいるが、彼の存在に気付いている者はいなかった。
鎌倉は足を止めずにアテナに質問する。
「これであいつが死んだら俺のボーナスになんのか?」
『はい、トゥルー・ライフ・クエストはあらゆる角度からゲームを記録しています。各種ボーナスの不備が起きることはありません』
「なら安心だな」
鎌倉は満足げに立ち去る。
武器屋からは根岸の悲鳴が上がっていた。




