第30話 強盗
鎌倉の要求に対し、根岸は震える声でとぼけてみせる。
「な、何のことだ」
「騙されねえよ。お前はプレーヤーだ。間違いない」
鎌倉が鼻を鳴らした。
彼は呑気な態度で事情を語る。
「闘技場の賭けで大儲けしたんだが、まだ全然足りねえんだ。だから強盗しに来た。店ごと奪えば金と商品が丸ごと手に入るんだから効率的だろ」
鎌倉が根岸の腕を掴んだ。
指が食い込む感触に、鎌倉は不敵に笑う。
「ほら、実体だ」
「ぐっ……」
「痛い目に遭いたくなけりゃ、さっさと全部寄越せ」
鎌倉の指に徐々に力が込められていく。
もう一方の手はゆっくりとサーベルを振り上げていた。
鋭い眼差しからは欠片の慈悲も感じられない。
痛みに顔を顰めた根岸は、隠し持っていた杖を取り出した。
杖の先端から緑色の閃光が迸って鎌倉の肩に命中する。
「うおっ」
ゴーグルの振動を感じた鎌倉は、商品棚の陰に転がり込んだ。
閃光の当たらない位置でステータスを見た彼は文句を言う。
「おいおい、変な武器だな。HPが半分になったじゃねえか」
「黙れェ! 俺に近付くな!」
怒鳴る根岸が閃光を乱射した。
高威力の魔法攻撃を前に、鎌倉は迂闊な行動が取れなくなる。
不利な状況に陥った鎌倉は、慌てることなくサーベルを弄んでいた。
「ははっ、悪くねえな」
鎌倉は棚から少し顔を出すも、即座に閃光が飛んできたので再び隠れた。
その姿勢のまま、彼は楽しそうに喋る。
「最初は大人しくしようと思ってたのに、どいつもこいつも好き勝手に暴れてやがる。そうなったらこっちも乗るしかねえだろ」
鎌倉が別の棚へと走って移動する。
追い縋るように閃光が炸裂するも、彼に命中することはなかった。
「なあ、このゲームが殺し合いだと知ってるだろ? プレーヤーに武器を売るのは間違いじゃねえか?」
鎌倉の疑問に、根岸は顔を真っ赤にした。
根岸は胸中で叫ぶ。
(俺だって本当は売りたくないんだよッ!)
根岸の初期スキルには【商才】があった。
他プレーヤーにアイテムを売ることで経験値を得るという効果だ。
売れば売るほど獲得経験値が増大し、最終的には他プレーヤーとは比較にならない倍率になる。
戦闘を避ける根岸にとっては生命線に等しいスキルだった。
この【商才】を活かすため、根岸は武器屋を演じていたのである。




