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第3話 ゲームスタート

 誰かがしきりに呼びかけてくる。

 その声で三好は目覚めた。

 彼はぼんやりとした顔で上体を起こす。

 鎧を着た男達が三好を見下ろしていた。


「おーい、大丈夫かー?」


「真っ昼間から飲みすぎだろ」


「はは、間抜けな顔だなぁ」


 好き勝手に茶化す男達をよそに、三好は周囲を見回す。

 そこは木造建築の古めかしい酒場だった。

 木箱や樽をテーブルにした男達が騒ぎながらジョッキを呷っている。

 楽器の演奏に合わせて楽しげに歌う者もいた。

 肩を組んでダンスを踊る者もいる。


(俺、確かバイトの説明を受けてたはずだよな。それで契約書にサインをして……)


 混乱する三好は視界の異変に気付く。

 空中に「ステータス」や「マップ」といった文字が浮かんでいた。

 まるでゲームのような表示である。

 既視感を覚えた三好は、それぞれの文字に注目する。

 視線に合わせてウィンドウ画面を展開することができた。


(これってVRの機能……だよな?)


 三好は自分の頭部に手を伸ばす。

 しかし頭部には触れられず、全体が機械に覆われていることが判明した。

 彼が手探りで確かめたところ、それはVR用のゴーグルだった。

 三好はいよいよ困惑する。


(もうゲームが始まっているのか?)


 三好の周りに集まっていた男達は既に興味を失って離れている。

 彼が問いかけても答えてくれそうな者はいなかった。

 途方に暮れる三好の頭の中で、無機質な女の声が響く。


『トゥルー・ライフ・クエストへようこそ。わたしは知恵の女神アテナ。あなたの冒険をサポートします』


 驚いた三好は再び周囲を見渡すが、誰も彼を見ていなかった。

 三好は小声で話しかける。


「……あのー、ゲームのスタッフの方ですか? どこにいます?」


『わたしは運営会社が開発した人工知能です。物理的な肉体は持っておらず、あなたの装着するVR機器に搭載されています』


 人工知能を名乗る女神アテナは淀みのない口調で述べた。

 三好はゴーグルを掴んで少し引っ張ってみる。

 しっかりと固定されて外せそうになかった。

 するとアテナが冷淡に警告をする。


『無断でゴーグルを外すのは禁じられています。ゲームの放棄と見なされますよ』


「外して休憩するのも駄目なんですか?」


『はい。ゲーム終了まで常に装着してください』


 指示を聞いた三好はげんなりする。

 一週間もゴーグルを着けておかねばならないことに抵抗があったのだ。

 幸いにもゴーグルは軽く、頭部や首への負担はほとんどない。

 それでも三好は気乗りしなかったが、百万円のために我慢することにした。

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