第28話 魔法武器
露店を巡る間、鱧は眉間に皺を寄せて何事かを考えていた。
ほどなくして彼は気になっていたことを口にする。
「んー、水と食糧を買い漁った形跡があるな」
「誰の仕業だろう……」
「間違いなくプレーヤーやね。NPCが買えるわけないし」
鱧の言葉に三好が険しい表情になった。
所持金を盗まれたばかりで敏感だった三好は、声量を落として尋ねる。
「どうして買い占めなんかするんだ」
「そりゃ兵糧攻めやろ。常套手段やん」
鱧はケラケラと笑う。
周囲を警戒する三好とは対照的に、彼はそこまで神経を尖らせていなかった。
ペットボトルの水を飲みつつ、鱧は三好に説明する。
「ゲームは七日間ある。もし食糧が追加されなかったらどうなると思う?」
「……奪い合うことになる」
「その時に予め買い占めておけば、ゲームを有利に進められるっちゅうわけや」
ここまで黙って話を聞いていた西園寺が提案をする。
「我々も食糧も買い込んでおくべきですね」
「でも裏技に使う資金が必要やし、レベルアップもせなあかん。ほんまやることが多いわぁ」
鱧が大げさに嘆息した。
三好は自分の腕の痣を見た後、小声で意見を言う。
「どれも半端になるのが一番良くない。戦略を立てていこう」
「おっ、ミヨシンもたまにはええこと言うやん」
「た、たまに……?」
「基本ネガティブ発言ばっかやからなぁ」
鱧は三好の肩に手を回して愉快そうに笑う。
そうして雑談しながら歩く三人は、品揃えの良い武器屋を発見した。
棚に置かれた武器は色とりどりの光を灯しており、それぞれに値札が付けられている。
鱧は感心した様子で物色する。
「へえ、魔法の武器ばっかりやん。レアな店やな」
「でも高いな」
「そんだけ効果が強いってことやろ。一つくらいなら買えそうやね」
鱧が店主を見る。
店主は肥満体型の若い男だった。
来客も気にせず、床をじっと見つめて黙り込んでいる。
そんな店主に鱧が話しかけた。
「なあ、この武器ってどこで仕入れてるん?」
「……企業秘密だ」
「オススメとかあるの?」
「一番攻撃力が高いのはその赤い剣だ」
店主が顔を上げずに棚の一つを指差す。
そこに飾られた剣の値段を見て三好はぎょっとした。
鱧は特に気にせず話を続ける。
「あの剣に合うスキルって何かな?」
「……さあな。近接系のスキルとの相性は良いんじゃないか。細かいことは自分で考えてくれ」
「参考になったわ。ありがとう」
鱧は勧められた赤い剣を購入し、三好と西園寺を促して退店した。




