第22話 殺人者たち
日没後の草原。
薮蛇は軽い足取りで彷徨っていた。
彼は少し悔しそうにぼやく。
「いやー、さっきのは惜しかったなー。もう少しで殺せたのにさ」
『個人的な見解を述べるなら、HP管理が杜撰だったように思えます。特に魔法攻撃は強力なので、専用の対策を打つべきかと』
「結構ちゃんとアドバイスしてくれるんだね」
『私はサポートAIです。皆様が快適にゲームをプレイするために知識提供を行う義務があります』
アテナの主張を聞いて薮蛇は笑う。
その時、彼は背後から迫る殺気に気付いた。
振り返ると眼前に拳があった。
薮蛇は咄嗟に槍を割り込ませて防御する。
拳が槍を粉砕した。
薮蛇は大きく跳躍して距離を取る。
正拳突きの姿勢を取るのは闘技場の王者、笹川であった。
仏頂面の彼は獣のような殺気を垂れ流しながら立っている。
薮蛇はあえて気さくに話しかけた。
「やあ、はじめまして」
「プレーヤーだな。お前を殺す」
「いいねー。血気盛んじゃん」
薮蛇はわざとらしく茶化しつつ、笹川の装備を確認する。
背中に背負った布袋の他に持ち物はなかった。
武器も防具も着けておらず、ゲームシステムに頼る気がないのは明白である。
笹川は薮蛇に命じる。
「ゲーム用の武器を捨てろ。茶番に付き合うつもりはない」
「最高の提案だねー。僕もそう思ってたんだ」
薮蛇は折れた槍と石を握り込む。
笹川はボクシングの構えを取った。
その姿を見つめる薮蛇は、相手の恐ろしい本性を察知する。
(何人か殺ってるね。なかなか楽しめそうだ)
薮蛇は音もなく突進し、途中で石を投げる。
笹川は首を傾けただけで躱した。
初撃の失敗も気にせず、薮蛇は槍で刺突を繰り出す。
笹川は短いステップで回避すると、カウンター気味に蹴りを放った。
薮蛇は腕を割り込ませて防御する。
しかし、勢いを殺し切れずに吹っ飛ばされて転がった。
薮蛇は土を払ってゆっくりと立ち上がる。
蹴られた腕は痺れるような痛みを訴えており、上手く力が入らなかった。
肩をすくめた薮蛇は冗談めかして言う。
「親戚にゴリラでもいる?」
「いない」
淡々と答えた笹川が急接近し、両手を伸ばして組み付こうとする。
薮蛇はするりと抜けて、槍を笹川の太腿に突き刺した。
そして捕まる前に再び距離を取る。
笹川は太腿に刺さった槍を引き抜いて捨てて、薮蛇を睨みつけた。
薮蛇はこれ見よがしに拍手を鳴らす。
「あはっ、面白いねー。これで五分五分かな」
「……っ」
笹川は一瞬だけ凶悪な笑みを湛える。
刹那、彼は薮蛇に襲いかかった。




