第21話 チーム結成
鱧は無表情のまま頬を押さえる。
軽く切れた唇に触れた後、彼は淡々と言った。
「いきなり何すんねん」
「俺を見殺しにしただろ」
「あの状況は仕方ないやん。僕が戦っても二人仲良く死ぬだけや」
鱧は面倒くさそうに弁明する。
三好はさらに文句を言いたくなったが、それがおそらく無駄であろうことを察していた。
鱧は一切の罪悪感を抱いていない。
見殺しにしたことを本心から最善の行動だったと考えており、謝る気さえないと感じ取ったのである。
三好が次の言葉に迷う間、鱧は西園寺に話しかけた。
「そっちの美人さんがミヨシンを助けてくれたん?」
「西園寺です。よろしくお願いします」
「僕は鱧いいます。こちらこそよろしゅう」
鱧と西園寺は穏やかにやり取りを行う。
表面上、互いに友好的な態度を取っていた。
「西園寺……サイちゃんはプレーヤーやんね?」
「ええ、そうです」
「職業は? ちなみに僕は奴隷やで」
「私は魔女です。魔法に特化した装備と能力を持っています」
「サイちゃんはこれからどうすんの?」
「特に決めていません」
「それなら僕らと手を組まへん? 三人チームなら色々と安心やろ」
鱧の提案に、西園寺はお淑やかな笑みを見せた。
彼女は流暢に意見を語る。
「賛成です。殺人を好むプレーヤーもいるようですし、結託して自衛を図るべきでしょう」
「よし! これで僕らは一蓮托生や!」
「……また見殺しにする気か?」
三好が暗い目で異論を唱える。
すると鱧は苦笑気味に回答した。
「絶対やらんとは言えへんけど、まあ善処するわ。どのみち逃げっぱなしだとジリ貧やし」
「善処か。信用ならないな」
「正直に答えたんやから許してや。逆にミヨシンも僕がピンチだったら遠慮なく見捨ててもええよ」
鱧は悪気もなく三好の肩を叩いて宥める。
結局、三好は何も言い返せず、三人のチーム結成は決定した。
鱧が先導して歩き出した。
「ええ宿屋を見つけたんよ。三人で泊まろか」
「ありがとうございます。ちょうど休みたかったところです」
鱧についていく中、三好は自分の両腕を一瞥する。
土と痣と血で黒く汚れていた。
頭部の出血は止まっているがまだ痛む。
(自分の身は自分で守る……俺は生き残るぞ)
改めて決意した三好は二人の背中を負う。
宿屋は市場から数分の場所にあった。
三人は主人に宿泊費を支払って部屋へと向かう。
主人はつまらなさそうな顔で説明をする。
「連泊する時は言ってくれ。多少は割引させてもらう」
「ご厚意に感謝します」
西園寺が微笑むと、主人は驚いた様子で赤面した。
そして足早に部屋を立ち去ってしまう。
一部始終を目撃した三好は感心する。
(NPCにも感情はあるんだなぁ)
部屋に入った鱧は椅子に腰かけて伸びをする。
それからベッドを指差して言った。
「何が起こるか分からんし、交代で寝よか。最初は誰にする?」
「負傷している三好さんでいいかと」
「そやね。ミヨシン、三時間後に起こすから先に休んでな」
「じゃあお言葉に甘えて……」
負傷した状態での移動により、三好の体力は限界を超えていた。
彼はベッドに倒れ込むと、そのまま数秒後には意識を手放して眠った。




