第18話 夕闇の暗殺者
三好は起き上がろうとして、激しい頭痛と吐き気を覚える。
彼は再び倒れて苦しんだ。
顔を濡らす己の血液を拭って呻く。
口笛を吹く薮蛇は、木の槍の他に小石を握っていた。
それを手の中で弄んでいる。
三好は自分が負傷した原因を理解した。
(あれを頭に投げつけられたのか……)
三好は相手の殺意に戦慄する。
ゲームシステムを無視した攻撃には、単純明快な殺傷力があった。
当たり所が悪ければ即死だったかもしれない。
その事実に三好は恐怖した。
(早く逃げないと)
そう考えた三好は上体を起こす。
ところが即座に押し退けられて転んでしまう。
鱧だった。
彼は全力疾走で街の方角へと逃げていく。
一度も振り返ることなく、鱧はあっという間に姿を消した。
その場に残された三好は唖然とする。
(嘘だろ……)
鱧の選択は間違っていない、と彼は思った。
危険なプレーヤーに襲われれば、三好も同じ行動を取っていた。
しかしあまりにも躊躇いがなかった。
仲間意識など形ばかりの物なのだと三好は悟った。
一方、藪蛇は愉快そうに笑う。
彼は槍を回しながら言った。
「あーあ、見捨てられてるじゃん。薄情だねー」
「俺を……殺すつもり、か……?」
「まあねー。人を殺したいからこのゲームに参加してるし」
薮蛇は悪気もなく答える。
殺人に対する忌避感は皆無だった。
むしろこの状況を心の底から楽しんでいる。
三好は目の前のプレーヤーの異常性を思い知った。
(……嫌だ。死にたくない)
涙を流す三好は、ふらつきつつも起き上がる。
そしてショートソードを構えた。
三好の行動を見た藪蛇は噴き出しそうになる。
「えっ、そのオモチャで戦う気? 冗談でしょ」
「この武器でお前のHPをゼロにする……死にたくないから殺してやるッ!」
「面白いねー。やってみなよ」
藪蛇はノーモーションで石を投擲する。
石は三好の肩に直撃した。
骨に響く衝撃と痛みに、三好は顔を顰める。
それでも彼は戦意を失わず、ショートソードを振りかぶって斬りかかった。
薮蛇はショートソードを槍で弾くと、三好の鳩尾を素早く蹴った。
三好は地面に蹲って悶絶する。
彼はショートソードも手放して転げ回る羽目となった。
そんな三好を薮蛇はからかう。
「弱いねー。もうちょっと粘ってくれないとつまんないなー」
「うわあああああああっ!」
叫ぶ三好が藪蛇の足にしがみつく。
藪蛇は槍の柄で軽々と殴り倒し、そこからさらに追撃を連発する。
穂先を使わず滅多打ちにされる三好は、ただ苦痛に悶えることしかできなかった。




