第15話 愉快な仲間たち
森を歩く丸岡は、前方で跳ねる白い毛玉を発見する。
それは額に鋭利な角を持つ兎だった。
足を止めた丸岡は怪訝そうに眉を寄せる。
「ん? 何だあれ」
『ツノウサギです。突進攻撃が得意なモンスターです』
アテナの説明中、ツノウサギが丸岡に向かって走り寄ってきた。
一本角が丸岡の腹部を狙っている。
「うお、まじかよっ」
焦る丸岡の前にスライムが飛び出し、ツノウサギの突進を遮った。
スライムに包まれたツノウサギは、息ができずに暴れ出す。
懸命に抵抗するも、粘液が相手ではまったく意味がない。
モンスター同士の攻防を前に丸岡は困惑する。
「俺を助けたのか……?」
『調教されたモンスターは主人を守るために行動します。命令することもできます』
やがてスライムがツノウサギを解放した。
地面にぐったりと倒れるツノウサギは、上目遣いで丸岡を見つめる。
そこには先ほどまでの敵意がなかった。
耳を垂らしてか細い声を発する。
『スキル【調教】の効果により、ツノウサギが服従しました。あなたの仲間になりたいようです』
「えっ、仲間!? いいよ! 俺のペットになってくれ!」
『承諾しました。以降、ツノウサギはあなたの仲間です』
アテナの報告の直後、ツノウサギが丸岡の足に擦り寄ってきた。
丸岡は恐る恐る撫でてみる。
感触はないが、ツノウサギは嬉しそうに飛び跳ねた。
「ははは、かわいいな」
丸岡が歩き出すと、スライムとツノウサギが追従する。
二体とも彼の周囲を巡回しており、敵からの攻撃を警戒していた。
頼もしい姿に感心しつつ、丸岡はアテナに確認する。
「仲間にできるモンスターの数に上限はあるのか?」
『上限はありません。ただし毎回必ず仲間にできるわけではないので、工夫しながら戦うことをおすすめします』
回答を聞いた丸岡は不敵に笑う。
彼は己のスキルの有用性に気づき始めていた。
(調教師……最初は弱いと思ったが、かなり便利な職業だな。上手く仲間を増やせば、村を滅ぼしたあいつも倒せそうだ)
丸岡は草むらに飛び込み、がさがさと乱暴に掻き分けて進んでいく。
彼の行動方針が逃亡から魔物探しに変わった瞬間だった。
弱腰だった雰囲気からすっかり前向きになり、ゲームの賞金が脳内を支配する。
「――やってやる。大儲けして借金をチャラにするぞーッ!」
丸岡は意気揚々と三体目の仲間を探し求める。
彼はまだトゥルー・ライフ・クエストがデスゲームであることを知らなかった。




