第12話 殺戮の刃
銀髪の青年がナイフを持って疾走する。
彼は流れるような動きで、逃げ惑う人々の首を切り裂いていた。
鮮血を噴き出しながら、人々はばたばたと倒れていく。
その光景に青年は機嫌よく笑う。
「あははっ、爽快だねー」
青年の顔面に斧が迫る。
特に慌てることもなく、青年は紙一重で身体を反らした。
斧は顎を掠めるように通過する。
攻撃を仕掛けたのは屈強な体格の男だった。
「ふざけやがって……よくも俺達の村をッ!」
吠える男が斧を叩き込む。
青年はひらりと回避し、ナイフの一突きを繰り出した。
「はい、どうぞ」
刃が村人の心臓を捉える。
致命傷を貰った村人は、血を吐いて崩れ落ちた。
青年は口笛を吹きながらスキップをする。
そこに鋭い声が投げかけられた。
「おい!」
「はーい?」
青年が耳に手を当てて振り返る。
ローブ姿の魔法使いが杖を掲げていた。
そこから火球を発射される。
物理法則を超越した攻撃を前に、青年は笑みを深めた。
「へえ、面白い手品だねー」
青年は軽々と跳躍して躱し、着地と同時に跳びかかった。
魔法使いは反応する間もなく首を刎ね飛ばされる。
倒れる死体を横目に、青年は虚空に質問をする。
「アテナ、次のレベルアップはいつ?」
『具体的な数値はお答えできませんがもう少しです』
「よし! じゃあ一気にいこうか」
走り出した青年は、近くの家屋へ突進した。
彼は蹴りで窓を割って室内に飛び込む。
そこには怯える数人の人間が隠れていた。
青年は舌なめずりをしてナイフをかざしてみせる。
「大丈夫大丈夫、一瞬で終わるから」
鮮やかなナイフ捌きにより、室内の人間は数秒で死体に変わった。
反撃できた者は一人もいなかった。
『おめでとうございます、レベルアップしました』
「やったー。スキルは貰えないの」
『今回はありません』
「ちぇっ、残念」
アテナの返答を聞いた青年は口を尖らせて座り込む。
ナイフを回す彼は、ふと室内の死体を見つめる。
いずれも血だらけでグロテスクな姿を晒していた。
しかし、青年はそれらが紛い物であることを知っている。
室内に血の臭いは少しも漂っておらず、ナイフにも汚れはない。
そもそもナイフは柔らかいクッション素材で、たとえ人間を刺しても傷一つ付けられない代物だった。
ナイフの刃先を手のひらでぐにぐにと曲げつつ、青年は悲しげにぼやく。
「残念と言えば、この村にプレーヤーがいなかったこともだよね。一人くらい殺れると思ったのに」
『ゲームのフィールドは広大です。辛抱強く探索していれば、いずれ遭遇するはずです』
「早く会いたいねー」
青年は退屈そうに立ち上がると、残る村人を殺すために外へ出た。




