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任務その7のおまけ 王国の影はつらいよ──その後

今回は前回の7話のおまけの小話です!

投稿カレンダーに7話が二つ入っているという大いなる間違いがありましたので、7話おまけとして投稿!失礼いたしました(´-ω-`)

それではどうぞお楽しみください★


「おまいら儂を殺す気か!!」


「そこを何とかお願いしますよ~大神官様~!こうして王太子殿下からの書状もありますんで~……」



 夜もすっかり更けた頃、大神殿の扉を叩いたのは王太子直属の影部隊の一員である影二号。デート(?)中のアルフレッドによって壊滅状態に追い込まれ、負傷した仲間を連れてやって来たのだ。



「そう言ってこないだも”治癒魔法終わるまで帰れまテン!”をさせたじゃろ?!なんでいつも夜に来るんじゃ!!もうとっくに通いの神官は帰っとるし、こんな年寄りをこき使って殺すつもりかっ?!」



 大神官が夜の祈りの為に大聖堂へと足を運べば、そこにやって来た招かれざる客──影二号と負傷した影達。


 勿論この国の神殿のトップに立つ大神官は、いついかなる時も慈愛をもって民を癒すことは吝かではないのだが……いかんせん彼等には苦労させられているから、お小言の一つでも言いたくなる。



「そうはおっしゃっても我々の活動時間はどうしても夜遅くなるというか……とにかく怪我人の治療もそうなんですが、こっちの呪いの解除の方を優先してお願いします!」


「……呪い?また今度は一体どんな厄介ごとを持ち込んだんじゃ!!」



 好好爺で優しい笑顔がトレードマークと評判の大神官であるが、今は目をギッと吊り上げて影二号の差し出した荷物を睨みつける。影達の前ではすっかり憤怒の表情が定番化してしまった大神官だ。


 連日こうして厄介ごとを頼まれては何かとストレスが溜まるので、先日も弟子の神官に「大神官様、何か気に障ることでもおありで?」と、普段からイライラしているみたいに言われて、若干ガラスのハートが傷ついている今日この頃である。


 訝し気に荷物を受け取り中を覗けば、そこには禍々しい気を放つ何かがあった。



「っ!?これは一体……?」


「あー……実は──かくかくじかじか──…………でして」



 影二号は簡潔に起こった出来事(※アルフレッドのデートという名の奇行からの呪物の生成に至るまで)を説明する。説明を追うごとに大神官の優しく垂れ下がった白い眉毛がどんどん吊り上がりプルプル小刻みに震えていく。


 そんな大神官の眉毛を見ながら影二号は「わーなんか猫の尻尾みたいだなー」なんてのんきなことを考えているが、任務を失敗して厄介ごとを持ち込んできた(張本人)である自分へのヘイトが爆上がりしているなどとは一つも思っていないだろう。


 厄介ごとを持ち込まれた翌日はいつも、大神官の辛うじて禿ハゲとは言われない程度のギリギリのラインで保っている頭髪が、過度なストレスのせいでごそっと抜けてしまうのだ。おそらくこの調子でいけば眉毛は猫の尻尾のようにふさふさしているものの、他が放送禁止用語(ツルッパゲ)という事態に陥りかねない。


 若かりし頃は持ち前の美貌でそれなりにモテていた大神官だが、今は頭髪が戦線離脱(抜け毛)しないように非常に涙ぐましい努力をしているのだ。だから厄介ごと(抜け毛原因)を持ち込んでくる影達は、大神官の頭髪()にとって天敵とも言える相手なのである!いつ大神官に呪い殺された(ハゲになる呪い)としてもおかしくない状況だ!



「またあの騎士団長殿(ストレスの元凶)が原因か……元の呪い装備はどんなものだったのだ?」


「あー、元々武具屋が仕入れたものの売ることもできずに倉庫に眠ってたやつらしいんですけど、なんか気が付いたら店頭に出てたとかなんとか……」


「ふむ……共鳴する何かを感じて呪い装備自体が対象者を求めたか……それであの騎士団長殿(抜け毛の元凶)はどうした?」


「何ていうか全身装備してもピンピンしてますよ?シュコーシュコーって、不気味な鼻息?みたいなの出して」



 何が気に入ったのか、アルフレッドは暗黒面ダークサイドなオーラをバシバシ放つ鎧を全身に纏い、そのままの状態で書記官のマーガレットと共に帰っていった。正直なところ、あの魔王みたいないかにも敵っぽい格好で王城に入れてもらえたのかな?と思わなくもない影二号である。


 とにかくヤバイ装備であることに代わりはないので、それから派生してしまった呪いもヤバイことに違いない。



「ふむ。とりあえず見てみよう」



 そう言って大神官はそれまでの怒りを鎮め、真剣な眼差しでその呪物を見つめた。神官一筋50年。これまでも多くの呪物の解呪に携わってきた。軽い気持ちで手を出せば、とんでもないしっぺ返しがくることはこれまでの経験上よく知っている。けっして己の頭髪だけに意識を向けてはいけない。いかにハゲの最前線にいる己の頭髪達が、戦線離脱(抜け毛)の危機に陥ろうとしていてもだ!


 大神官は己の中にある神聖力を最大限に発揮して、その呪物へと向けた。



「こ、これはっ……!」


「ど、どうしたんっすか?!」



 目をカッと見開き何かの衝撃に打ち震える大神官に、影二号はどんだけヤバイ呪いがあったんだと不安になる。


 王国最強と謳われる騎士団長のアルフレッドが付与した呪いだ。もしかしたらこれが王国に危機をもたらすかもしれないと思い、顔を青ざめさせていると──



「物理防御大、魔法防御大に回避大、反射大、特級反撃魔法、特級物理反撃効果…………」


「えぇ?!それって寧ろ伝説級の超スゴイ装備では……」


「いずれもこれを装備したものへ不埒なことをしようとする男へ向けて発動するようじゃな。ついでにスカートめくり禁止の呪いも付与されておる」


「……結局ヘタレ〇〇(童貞)丸出しかよっ!!」



 スカートめくり禁止の呪いで、思わずツッコんでしまった影二号。呪いなんかで無駄に意外性を出してくんじゃねー!と一人ご立腹だ。



「でもそうなったらこれって呪い装備というより、書記官殿を守る普通に良い装備ってことっすか?こんなに禍々しいのに……」


「まぁそこは普通に着ているだけで魔力をうんと食われ、次第に自我を失くしてくという効果もあるようじゃ」


「そこは普通に呪い装備なんかいーっ!!」



 びしぃぃっ!!と、そこらの芸人よりも切れ味のあるツッコミをしてしまった影二号である。そのツッコミの才能は素晴らしいが、あまりにヒートアップすると血圧が上がって影一号の二の舞である!



「と、とにかく解呪をお願いします……」


「あいわかった。流石にこんな危ないものは無視できんからの」



 冷静さを取り戻した影二号は、とりあえずは解呪を依頼することに成功した。(※もちろん費用は王太子ケビン持ち)そして無事に解呪が終わったものを翌朝すぐに届けたのだが──



────────


「あれ?マーガレットさん、その服可愛いですね?」


「あ、そうなんですよ。昨日の仕事終わりに買って、今朝荷物が届いたんですけど、普段着にもよさそうだから通勤用にと思って」



 同僚の女性と話ながら歩くマーガレット。早速買い込んだ服を着て通勤したようだが──



「あぶないっ!!」


「!!?」



 突如上がった叫び声と共に、視界の端に火の玉が向かってくるのが見える。おそらく魔法師団の演習場から飛んできた魔法だ。すると──



──シュバッ!!──



「ま、マーガレットさん?!」


「あ、なんか体が勝手に……」



 周囲の者が助けに入るよりも早く、書記官のマーガレットが見事なムーンサルトをかましてその火の玉を掻き消した。騎士団員や影達もびっくりの超絶達人的動きである。周囲では「え?魔法って物理攻撃で相殺できるもんなん?は?うそでしょ?」とざわついている。


 どうやらマーガレットの意志ではなく勝手に体が動いたようだが、その様子を近くで見守っていた影二号は一人、遠い目をしていた。



(あー、ヤバイ。あまりにしつこい呪いだったから、やっぱこうなったか……)



 危険な魔力食いの呪いや、対象が不埒な男という部分は取り除けたものの、それ以外の性能は普通に残ってしまったようだ。


 大神官の神聖力はどんな呪いをも解呪できるほどのものだが、防御や回避などの性能は呪いというよりは祝福に近いものがあるので、どうにもならなかったらしい。


 曰く、あのとんでも騎士団長(脳筋童貞)は女神様からの特別な祝福を受けているらしいから、自身に祝福を付与する能力があってもおかしくはないのだと言う。なら神官にでもなって一生○○(童貞)で神殿にでも籠ってろよ!──と、思わなくもないが今更言っても仕方ない。



「きゃー、マーガレットさんかっこいい!今の物語のヒーローみたいだったわ!」


「えー?そう?あはは、これ着てるとなんか体が軽くって」



 マーガレット自身があまり気にしていない様子なので、影二号は内心安堵の息を漏らす。


 しかしその後もどこぞの川でおぼれた子犬を超人スーパーマンの如く助けただとか、ひったくり犯を華麗なライダーキックでお縄にしただとか、とんでも性能をいかんなく発揮して活躍しているマーガレットの噂を耳にして、一人キリキリと胃を痛める羽目になる影二号なのだった。きっと王太子ケビン(※胃痛歴十数年の猛者)から、常用している特別な胃薬を支給される日も近いだろう!


 結果として一連の騒動は、王国に伝説級の装備を多くもたらすこととなり、そしてそれを装備した意外と肝っ玉のでかいマーガレットが、庶民のヒーローとして様々な逸話を残すことになったのである。


 めでたし、めでたし──



「いや!めでたしじぇねーっすよ!!俺の胃痛と大神官様の抜け毛の被害はどうしてくれるんっすか?!(By影二号)」



 めでたし──?



同僚女「そういえばさっきあれだけクルッと回転してたのに、スカートめくれてなかったね!パンツ見えるんじゃないかって違う意味でドキドキしちゃったわ!」

書記官「あ、本当だ。確かにスカートの裾はピッタリ張り付いて、全然めくれなかったわ」

同僚女「マーガレットも女の子なんだから、気を付けてよー?」

書記官「えへへ、ごめんごめん」


※スカートめくり禁止の呪いは解けなかった模様


影二号「だからDTかよ!!」

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