任務その22 騎士団長初めての○○○○!
ギリギリ( ´△`)
眠……(´-ω-`)
今日も平和なサフィア王国。騎士団長の執務室ではアルフレッド達がせっせと仕事に励んでいた。
「そういえばもうすぐ建国祭ですね。団長達は有休どこに入れるか決めましたか?」
いつも通り雑談に励んでいるのは、自称仕事のできる男の補佐官。先日は団長を含む他の騎士団員達が休みになった為、ボッチで仕事処理させられた社畜(団畜?)である!
「俺は特に決めてないな」
淡々と答えるアルフレッド。彼もある意味騎士団に命を捧げている団畜と言えよう。
「私はまだ悩んでます~。出店が色々あるから、目当ての店の出店日で決めようかと」
そう答えたのはマーガレットだ。建国祭は二週間ほど続くので、出店も入れ替わる。その為、目当ての出店がある日に休みを入れるつもりだろう。
「出店日ですか。いいですねそれ。周辺諸国からの珍しい出店もあるみたいだし、自分もそれで休み決めようかなぁ」
マーガレットの話を聞いて、補佐官も有休の使いどころを決めたようだ。だが一方のマーガレットはため息をついている。
「でも行きたいところが多すぎて悩んじゃって……まだどこで休みを入れるか決めかねていて……」
「あー、そうですよねぇ……確かにこの予定表を見ると、悩むよなぁ。出店多いですし」
そう言って補佐官は手元の出店予定表を見下ろした。祭りの間の警備を担当する騎士団には、当然、出店情報の詳細が渡されている。どんな出店がいつ出るのかがわかるのだ。
そんな二人の会話を聞きながら、アルフレッドは密かに自分の休みもマーガレットに合わせようと心に決めた。何なら偶然を装って二人でお祭りデートができちゃうかもしれない。
しかしそんなアルフレッドの目論見を真っ向からぶち壊す者がいた。自称仕事のできる男の補佐官である!
「あ!それなら欲しい物をメモして、騎士団員みんなで持ち回りで買ってくるのはどうですか?それなら休みが合わなくても、目当ての店の物が買えるし。他のみんなも欲しいのが色々あるだろうし」
「いいですね!それ賛成です!なら欲しいの全部買えちゃいますね!」
補佐官の意見に大賛成の様子のマーガレット。それに気を良くした補佐官が、アルフレッドの思いと裏腹にどんどん決めていく。
「じゃあ自分で商品を見たい出店がある日を有休使って、後は誰か他の人に任せるのがいいでしょうね。確実にこれを買ってきてほしいってのは、団長の休みに買って来てもらうのはどうですか?団長はまだ休みを決めてないみたいですし」
「団長、それでも大丈夫ですか?無理なら他の方に頼むので……」
「あ……う…………あぁ……」
キラキラとした目で愛する嫁から問われれば、嫌だと断れないアルフレッドである。
「楽しみですねー、建国祭」
「あ……あぁ……」
結局何も言い出せないまま、休みを合わせることのできないアルフレッドだった。
********
そんなこんなでやって来た建国祭──
祭りの 3日目に休みを取れたアルフレッドは、騎士団員達から頼まれたお使いをする為に、祭りで賑わう街中へと繰り出していた。
「……随分と混んでいるな」
節目の年の建国祭ということで、いつもよりも盛大に行われており、出店の数も多い。通りは多くの観光客で賑わっていた。
そんな街中にやってきた騎士団長のアルフレッド。何故か仕事中と同じ騎士服で愛用の剣を装備中である!
突然の強面騎士の登場に、通りは不穏な空気に包まれる。
「……ぬーん(ー"ー*)」
──ザワザワ……ザワザワ──
「おい、なんか物凄く怖そうな騎士が来てるぞ……」
「捕物でもあるのか……?」
プライベートだというのに、すっかり周囲にあらぬ誤解を与えているアルフレッドである。当然、彼自身はそんな状況に気がついてはいない!
「む……この店だな……」
メモを片手に一つの出店にやって来たアルフレッド。今日は騎士団員達から色々なお使いを頼まれているから、近い場所から順番に行くつもりである。
「ひ、ひぇ……騎士様……な、何か御用で……?」
突然現れた厳つい騎士服の大男に、出店の主人はガクブルものである!もみ手をぶるぶると震わせながら、引き攣った笑顔で応対した!
「すまない……このくまちゃんモモ飴というのが欲しいんだが……」
「は、はい?」
「くまちゃんモモ飴だ(ー"ー*)ぬーん」
「!!」
──ザワザワザワ──
厳つい大男──それこそ凶悪な熊のような騎士の口から出てきた『くまちゃんモモ飴』というラブリーワードに、ざわつく周囲の野次馬達。なんだ、その可愛いくまちゃんを捻り殺すするつもりなのか──?と、凶悪犯を見るような視線をアルフレッドに向けている。
ここで真っ先に我に返ったのは、出店の店主である。相手がどれだけ強面の大男であろうと、商魂逞しいのが商売人というものだ。
「く、くまちゃんモモ飴ですね!はい!ありがとうございます!えと……おいくつ買われますか?」
「うむ……そうだな……(ー"ー*)」
──ゴ、ゴクリ……──
眉間に深い皺を寄せながら考えるアルフレッド。ただ商品を売るだけなのに、まるで不正調査されているかのようだ。周囲の野次馬達も固唾を飲んで見守る。
「取りあえず10袋いただこう」
「は、はい!ありがとうございますっ!」
新人騎士のように直立不動でハキハキと返事をする店主。アルフレッドは見た目は怖いが、それさえ我慢すれば大量購入の上客である。商品を包みながら、店主はそろりと他の商品も勧めてみる。
「あの……くまちゃんモモ飴も人気ですが、こちらのねこちゃんオレンジ飴やうさちゃんイチゴ飴、きつねちゃんレモン飴や他にも色々人気なのですが……」
「む……そうか……」
おすすめの可愛い動物飴シリーズに眉間にさらに皺を寄せるアルフレッド。その険しい表情に店主は「は、早まったか……?」と焦るも、素直なアルフレッドは普通に購入を決めたようだ。
「じゃあそれも10袋ずついただこう」
「はいっ!ありがとうございます!!」
マーガレットへの買い物もそうだが、意外と家族への土産に欲しいと他の騎士団員達からも頼まれていた。
おかげで大量購入することになったアルフレッドは、ファンシーな手提げ袋を持つ強面熊騎士というシュールな姿になっている。
「あの……5袋以上買われた方には、こちらのつけ耳を差し上げているのですが……」
そう言ってそっと渡されたのは、くまやねこの耳がついたカチューシャ。子供向けの商品ということで、おまけ用につけているものだが、アルフレッドのような大男にも需要があるかは果たして謎である。
しかしこれだけ大量に買ってくれたアルフレッドに渡さないわけにはいかない。
──ザワザワッ!──
流石にこのおまけは怒られるだろうと周囲が大いにざわつくも、素直なアルフレッドは普通にそれを受け取って装着した。強面熊騎士がくま耳カチューシャをつけるという、とんでもない事態だ!アルフレッドのヤバさが10アップした!
「ありがとう店主」
「こ、こちらこそ……お買い上げありがとうございましたっ!!」
顔面が膝につきそうなほどの勢いのあるお辞儀で、店主から見送られるアルフレッド(※くま耳装着中)。とりあえずおつかいの目的の一つを達成できたようだ。
「ふむ……これでくまちゃんモモ飴は買えたな……」
ファンシーなくま耳を装着したまま次の店へと向かう。
「む……次はここか……」
やってきのは毛皮の店。一枚ものの大きな毛皮から一部を使った小物まで、様々な商品が並んでいる。
店の前で立ち止まり見ていると、すかさず店主が声をかけてきた。
「ははっ!お客さん!つけ耳似合ってんね!次は尻尾でも買うかい?」
強面のアルフレッドに対し、気さくに声をかけてくる店主。どうやら可愛い(?)くまのつけ耳効果が発揮されているようだ。
「尻尾……?」
「あぁ、うちは皮革を扱ってるんだけどよ。余ったもので色々作ってんだ。ほら」
そう言って店主が渡してきたのは、尻尾のような見た目のアクセサリー。狐のようなふさふさのものから、まん丸のうさぎの尻尾のようなものまである。
「お客さんのくま耳に合うのはこれかな?」
「……これをつけるのか?」
「留め金があるから服の上からでも大丈夫だってよ!せっかくだからつけてみてくれないかい?」
「う……あぁ……」
何だかんだで押しに弱いアルフレッドである!
悪徳商人にでも騙されてしまいそうだが、幸いなことに一応は伯爵なので、自分で買い物をすることは武具を除けばほぼほぼない。
むしろ今回のお使いは、彼にとって初めてのお使いと言えるだろう!
だが感動ものの子供の初めてのお使いと違い、大の大人のお使いである。しかもくま耳をつけた怪しい強面騎士のお使いだ!見守る周囲は「ヤベー奴来たぞ……」といった不穏な空気に包まれている!
「……こんな感じでつければいいだろうか……?」
「おぉ!やっぱりそのくま耳と合うねぇ!せっかくだから買っていってよお客さん!他にも買うならおまけしとくし」
「あ、あぁ……」
何だかんだで色々買わされたアルフレッドである。
本来の目的のもの(※革製の鞄や財布)も安く買えたが、飴屋でもらった他の動物つけ耳の用の尻尾も、しっかり複数購入する羽目になっている。
「たくさん買ってくれてありがとうな!是非ともその尻尾でうちの商品を宣伝してってくれよ!」
「……わかった」
素直なアルフレッドはコクリと頷くと、尻尾を装備したまま、大量の手提げを抱えて歩き出した。
ファンシーなくまのつけ耳と尻尾を装備し、明らかに買わされたとわかる大量の荷物。普段なら強面の顔面のせいで近寄り難いアルフレッドだが、今は注目の的である。特に出店している商人達にとっては、カモねぎ状態のくまにしか見えない。
「お客さ~ん!うちにも寄っていってよ!サービスするよ!」
「お客さん!うちもうちも!お土産にオススメなのいっぱいあるからさ!」
「うちもオマケしちゃうよ!動物ものの商品もあるし見てってよ!」
早速商人達に目をつけられたアルフレッドだが、律儀な性格の為、声をかけられればその都度立ち止まる。そして次々と色んなものを買わされていったのだった──
********
──その日の夕方、騎士団長執務室──
「いやー、団長に買い物お願いできてよかったですねー。今日の出店は人気のとこばかりだから、早めに行かないと売り切れるかもですし」
「そうですね。でも何だか申し訳ないですけど……」
アルフレッドのいない騎士団長執務室では、補佐官と書記官のマーガレットが、おしゃべりをしながら仕事に励んでいた。もうすぐ終業時間である。
その時、突然執務室の扉がガチャリと開いた。
「あ、団長お帰りなさ──……っ!?!?」
「……ぬーん(ー"ー*)」
そこに現れたのは、ファンシーなくまのつけ耳と尻尾と、更にはどこから手に入れたのか、肉球つきのモコモコグローブをつけたアルフレッドがいた!腕には商人達から買わされた大量の荷物をぶら下げている。
「だ、団長……その格好は一体……?」
「……頼まれたものだ」
困惑する補佐官をよそに、ずいと荷物を差し出すアルフレッド(つけ耳尻尾肉球装備中)受け取る時に手が当たってしまい、プキュゥ!と変な音がアルフレッドの肉球から聞こえてくる。
「は、はぁ……」
見れば袋の中にはアルフレッドが着けているのと同じタイプのつけ耳やら尻尾やらが入っている。肉球も他の荷物に潰されて、プキュプキュうるさい。
こんなの頼んだか……?と、疑問に思うものの受け取るしかない。だが相当な量である。
「色々ありますね……これって全部頼んだものでしたっけ?」
「いや、オマケとかオススメされて買ったものだ。皆で分けるといい」
「そ、そうなんですね。ありがとうございます」
美味しそうな屋台飯もあれば、何だこれ?というようなよくわからない置物まで様々だ。明らかに商人達のカモにされている。
しかしそこは自称仕事のできる補佐官だ。上官がカモにされた事実は見ないふりをして、嬉しそうに声をあげた。
「わ、わぁ~。こんな服見たことないなぁ。スゴーイ」
思っくそ棒読みである。手にしたのは超リアルな熊の絵がプリントされた、熊出没注意!とデカデカと書かれたTシャツである。リアルな熊が口を大きく開けて、今にも襲い掛かって来そうで物凄く恐い。
うっかり手に取ってスゴーイと褒めてしまった補佐官は、内心冷や汗ものだ!
「あぁ、それは俺のとお揃いだな。何ならくまのつけ耳と尻尾もあるぞ」
「え"っ」
見れば確かにアルフレッドも騎士服の上に、熊出没注意!のTシャツを着ている。くま耳と尻尾のせいでかなりシュールな仕上がりだ!
「い、いや~、自分にはちょっと似合わないかもな~、あはは……」
笑って誤魔化そうとする補佐官。しかしフワフワのつけ耳をつけた熊騎士が、険しい表情で迫る。
「遠慮することはない。たくさんあるぞ」
「いや、あの、ちょっと……!」
強引に羽交い締めにされ、つけ耳と尻尾を装着させられる補佐官。そしてTシャツもと騎士服を脱がされそうになったその時──
──ガチャリ──
「失礼しまーす。団長!頼んでたものを取りにきまし──……っ!!!」
突然開かれた執務室の扉。その向こうには、多くの騎士団員達と何故か侍女達の姿まである。
「…………」
「…………」
「…………」
フリーズする両者。もちろんアルフレッドはつけ耳尻尾装備中であり、補佐官も半裸でつけ耳と尻尾をつけている。
「しっ、失礼しましたっ!」
ヤバゲな空気を感じとり、大慌てで扉を閉めようとする騎士団員。しかし侍女達が足をガッツリ入れてきて、閉められない!
「か、神シチュ……!獣人ものもいいわ!」
「熊騎士攻め!熊補佐官受け!!ケモ耳萌えーー!」
何やら腐侍女に大いに誤解されてしまったようだ。しかしある意味純粋な男共にその意味がわかるはずもない!
「やったわ!これで新刊祭り間違いなしね!」
「待ち遠しくて眠れそうもないわ!」
「しっかりこの神シチュを目に焼き付けておくのよ!」
こうして初めてのお使いが何故か新たな伝説を作る羽目になったアルフレッドと補佐官であった。
「……神シチュって一体……?」




