任務その1 衝撃には蒼雷をもって備えよ!
※楠結衣様の騎士団長ヒーロー企画という企画への参加作品です。
結衣様、なろうバースデーおめでとうございます(`・ω・´)ゞ★
そしてご覧の皆様、どうぞ拙作の騎士団長をお楽しみくださいませ!それでは始まり始まり~☆
麗らかな日差しが降り注ぐ午後、サフィア王国の王城内にある騎士団長の執務室に、凄まじい衝撃が走った。
「団長、すみませんが今週末、お休みをいただけないでしょうか?実はその……お見合いがありまして………」
「っ──?!?!」
──ピシャァァァンッ!!──
穏やかなティータイムに走る戦慄。いつものように書記官のマーガレットが入れてくれる紅茶を楽しみにしていた騎士団長のアルフレッドは、衝撃のあまり目をカッと見開き戦慄いた。
……と同時に、彼らのいる団長室の窓から見える外では、凄まじい雷光が轟音と共にほとばしった。雲一つない晴天の下で放たれたそれは、アルフレッドの無意識の魔法の発動によるものだ。
窓の外からは「わーっ!団長の蒼雷がまた落ちた!」などと騎士団員達が騒いでいるのが聞こえてくるが、雷を落とした張本人であるアルフレッドはそれどころではない。何せ目の前の可愛くて仕方ない彼の書記官が、“見合い”などという不届きな言葉を口にしたのだ!
「……見合い……どういうことだ?」
地の底を這うような低い声が執務室に響く。
先ほどまでは、いつも密かに楽しみにしている甘いお菓子と、可愛い書記官であるマーガレットが入れてくれた紅茶に終始ご機嫌のアルフレッドだったが、今は地獄を見てきたかのような荒んだ目をして不機嫌さを露わにしていた。
その悪鬼のような形相を彼の部下達が目にしたら、飛び上がって逃げていくに違いない。
しかし分厚い眼鏡の小柄な書記官は、全くアルフレッドの機嫌の悪さなどに気付く様子もなく、普通に聞かれたことに対してその詳細を説明した。
「祖母の知り合いのお孫さんが、お嫁さんを探しているとかで、私がその……お嫁さん候補に……それであれよあれよと外堀を埋められてしまいまして」
「っ……!!」
──ぶちぃっ!!──
『なんだそのけしからん外堀はっっ!?!既に埋められたというのなら、そんなもん騎士団総出で地の底まで掘りぬいてやるっっっ!!!俺の嫁をお嫁さん候補などというふざけたものにしようとする不届き者めがっ!!』
※一部妄想による過激な副音声が含まれております。
…………などと凄まじい嵐が、怒りで頭の血管が何本もブチ切れたアルフレッドの胸の内に吹き荒れるものの、そんなことを当人に向かって言えるはずもなく。アルフレッドはティーカップの小さな持ち手を握りしめたままプルプルと怒りに打ち震えた。
「週末のお休みと合わせて実家の方へ帰らなければならないので、お休みを一日だけいただきたいのです」
「……………………」
「……団長?」
「……………………………………
……………………………………
……………………………………
……………………………………
……………………………………わかった」
──バキィッ!──
絞り出すように何とか答えた返事とは裏腹に、彼の心情を表すようにして犠牲となったのは、未だ握りしめていたティーカップの持ち手であった。無残にも粉々となり、テーブルの上に白い小さな山を作っている。
だがそこは腐っても騎士団長。持ち手を失くしたティーカップだろうがなんだろうが、彼は動じるような男ではない!(マーガレットに関することでは動揺しまくりであるが)
カップの中身が飛び散る前に彼はそれをシュバッ!っと、横で青い顔をしながら二人を見守っている補佐官へとパスした。
そんな緊張感(?)あふれる執務室で、書記官だけが一人、団長の返答に安堵したようにほわっと笑う。
「よかった!急なお休みの申請だったので、ダメかなと……」
「…………っ」
そうか、その手があったかっ!!──と、マーガレットの可愛らしい笑顔に胸をドキドキと高鳴らせつつ後悔するも、時すでに遅し。
本当なら彼女の見合いを阻止すべく休みを与えたくはなかったが、彼の可愛い書記官はいつも真面目に仕事に励んでくれている。そんな彼女が可愛らしくアルフレッドに懇願しているのを、どうして無下に断れよう。
ましてや「……団長?」と、そのつぶらな瞳をうるうるさせ、頬を赤らめながらこちらを見上げていたのだ。生真面目そうに見えて意外とムッツリなアルフレッドに、それを断るすべなどあるはずもない。
『団長……ダメなの……?こんなに貴方のことを好きなのに……(うるうる)』
※一部妄想による事実と異なる副音声が含まれております。
「…………団長?」
「はっ……!!」
再び声をかけられて、アルフレッドは甘い妄想の世界から戻ってきた。
横でティーカップの残骸を片付け終えた補佐官の青年が白けたような視線を向けるも、そんなもの騎士団長の分厚い鉄面皮にはどうってことない。しかしながら妄想中はどうやらその鉄面皮も、タコかひょっとこのような可笑しな顔になっていると裏でかなりの評判のようだが。
「…………一応休暇の申請書類を出すように」
「わかりました!ありがとうございます」
アルフレッドは団長として、休暇申請の書類を提出するように求めた。ここでみっともなく喚いたところで、どうにもならない上、彼の可愛い書記官が困惑するだけだろう。
本当であれば今座っているテーブルを真っ二つにしてやりたい所だったが、彼は努めて冷静に団長としての仕事を全うした。しかし彼の握りしめた拳が、ミシミシとテーブルの上でその天板を軋ませている。
そんな上司の様子に、横にいる補佐官は大量の冷や汗をかきつつ目を白黒とさせながら、慌てて休暇申請の書類を引っ張り出し、それを書記官のマーガレットへと渡そうとしたのだが──
──バチィッ!!──
「あイタぁッ!!」
補佐官の青年がアルフレッドの可愛い書記官に書類を渡すその寸前、静電気よりも凄まじい威力の小さな稲妻が青年の手を襲う。
ビリィッ!!と貫くような痛みに、哀れな補佐官の青年は痛みに涙目になりながら書類を取り落とした。
「わ、スゴイ静電気でしたね。大丈夫ですか?」
「あ………はは、だ、大丈夫です……」
マーガレットが床に落ちた書類を拾いつつ補佐官の青年を気遣うが、彼は彼女が近づくと、ビクッとして青い顔のまま後ずさるばかり。横からは彼の上司である騎士団長のアルフレッドが、凄まじい殺気を滲ませつつ青年を睨んでいる。
『それ以上、俺のマーガレットに近づいたら殺す……っ』
※一部内容に過激な心の副音声が含まれております。
「わ、私は団員達の方の調整がありますので、先に失礼をさせていただきます……っ」
補佐官は団長の補佐をすることが仕事であるのに、早々に戦線から離脱を宣言し、アルフレッドの許可を得るよりも先にとっとと逃げてしまった。実際の戦時下であれば、敵前逃亡は軍規違反の重罪である。
しかしながらアルフレッドは、彼の可愛いマーガレットと思いもよらず二人きりになったため、仕方ないから許してやろうと思った。目下の懸念事項は彼女のお見合いについてである。
「……休暇申請について、見合い…………が理由とのことだが、その詳細を書いてくれ……見合いについての」
「……お見合いについて……ですか?」
「…………そうだ。間違いがあってはいけないからな」
間違いとは一体なんだと聞かれても、答えることはできないが、アルフレッドは彼の考えうる最善の作戦を実行した。
休暇申請の書類に見合いに関する情報を書かせ、それを使って彼女の見合いを妨害しようというのだ。まさに職権乱用の最たるもの。
だがしかし、アルフレッドはこの国の騎士達のトップに立つ誉れ高き騎士団長だ。蒼雷の二つ名を持ち、至上最年少で騎士団長の地位についた彼が、厳つい容姿そのままに重々しく告げれば、どんな職権乱用も全く問題にされないレベルでスルーされるのが定石である。
「わかりました!まだお相手のこととかよくわかっていないですけど、一応わかる範囲で書きますね」
「…………そうしてくれ」
相手の男──その言葉だけで天板がミシッ!と悲痛な音を立てた。おそらく天板のどこかに亀裂が入ったに違いない。また補佐官が「備品の予算が……」などと大げさに嘆くだろうが、どうせ買い替えの費用を出すのはアルフレッドである。気にするのはテーブルの予算よりも、見合い相手の男のことである。
見合い後にその男についても報告もさせるか……と考えるも、はたとそこで気が付く。
そもそもマーガレットに見合いをさせるつもりはないのだから、見合い相手の報告も何もないのだ。寧ろ彼女が自分以外の男と会うこと自体が許せるものではない。
二人きりなどになったら、彼の可愛い書記官が襲われてしまうではないか!……と無駄に妄想力を発揮して、彼は己を正当化させた。
「見合い……についての準備の報告も密にするように。間違いがあってはいけない」
「もちろんです!では申請書類を書いてからお渡ししますね!」
マーガレットはにこやかに笑うと、頭を下げてアルフレッドの執務室から出て行った。
一人残されたアルフレッドは──
「……至急調査が必要だな……」
マーガレットの笑顔に一瞬その頬がだらしなく緩むものの、アルフレッドは彼女のお見合いを阻止すべく、更なる職権乱用に向けて一人思考を巡らせるのだった──
……とにかくまぁ、ムッツリ強面な堅物騎士団長を、作者がひたすらいじくり倒すだけのお話ですw
「間違いがあってはいけない」キリリ( *一”一)
つまり彼の恋路を邪魔するような間違いのことですね、ハイw
急遽企画への参加を決めたので、自転車操業で執筆予定。なるたけ止まらないように頑張ります。