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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

別の世界ではただの日常です

笑って下さい

作者: 茅野榛人
掲載日:2023/11/18

「ハハハハハハハハハハ!」

 やっと俺が売れ始めた。

 かれこれ三十年以上大した人気を獲得出来なかった俺だが、今年の大会でブレイクした。

 今は一発屋になる不安よりも、俺は必ずお笑い芸人で食べて行けると言う自信で満ちている。

 苦難や挫折に負けそうになり、死にたくなる時もあったが、諦めなくて本当に良かった。

 これからは、お笑いで食べて行く!


「本当に……本当に良かったよ……」

「心配かけたな母さん」

「もうどれだけ心配したと思ってるのよ……」

「ふ……心配してくれてたんだな」

「当たり前でしょ! あんたの母よ?」

「長い事芽が出てなかったから、とっくに失望してんじゃないかって思ってた」

「あまり親舐めるんじゃないよ」

「分かったよ、舐めないよ、齧るよ」

「……」

「もしもし? もしもし?」

「……」

 もう夜遅い、恐らく寝落ちしてしまったのであろう。


 寝落ちなんかではなかった。

 昨日の夜、母が亡くなった。

 死因は不明、布団の上で携帯電話を片手に亡くなっていたとの事。

 これから幸せになれると思っていたのに、何故こうなる。


「死因が不明の死亡者が増加しております。本日、新たに五十三人の方々が亡くなりました」

 最近死因不明の死亡者が増え続けている。

 警察も医療関係者も殆ど詳細を明かさない。

 かろうじて立ち直りはしたが、やはりショックはショックだ。

 しかし、俺はピンのお笑い芸人だ。

 周りが俺のネタやギャグで笑ってくれれば、俺も幸せになる。

「思い出って、辛い時に思い出すと泣けますよね、でも俺は辛い時にはね、借金の思い出を思い出すようにしてます。何故か? 金を借りれる友達を思い出せるからです」

 突然、観客の殆どが突然倒れ始めた。

「救急車! 早く救急車!」


 倒れた観客達は全員死亡してしまった。

 恐ろしい事に、死亡者全員の死因が不明との事。

 一体何が起きたのであろうか?


「死因不明の死亡者が後を絶ちません。本日だけで二百十四人の方々が死亡しました」

 あれから俺はお笑い芸人の仕事を続けた。

 しかし、決まって俺が何かしらのネタやギャグを言った後に、死因不明の死亡者が出てしまい、まともに仕事が出来ない。

 無いとは思うが、何か俺に関係があるのであろうか?


「すみません、私達、こう言う者なのですが」

「警察……何かあったんですか?」

「いや、ちょっと気になった事が出てきたものですから」

「はあ」

「最近急増している、死因不明の死亡者の事なのですが……」

「はあ」

「実は、死亡者全員が、貴方の事をご覧になられているんですよ」

「はい?」

「貴方のいるスタジオで観客としていらしてたり、貴方の出演なされている番組の録画を所持なされていたり、更に貴方のDVDを所持されてたりと、死亡者全員が、何かしらの形で貴方を観ていたんですよ」

「え……いやでもこれは……偶然では? え……もしかして何か……俺捕まっちゃったりします?」

「いえいえ、ただ……お恥ずかしい話、我々警察も、お手上げなんです。綿密に捜査をした結果、死亡者の共通点が、貴方をご覧になられていると言う部分だけでしたから」

「そうですか……」

「何か心当たりでもありませんかと聞きに来てしまったんですが……ありませんよね?」

「ええ、ありません」


 死因不明の死亡者全員が、俺を観ていた。

 ただの偶然のはずなのだが、何か胸騒ぎがする。

 まさか俺が笑わせられなかったから死んだなんて事……流石に無いよな。

「俺……笑わ……死……」

 え? 何だ? 何か……頭に響く……。

「俺で笑わ……死ね……」

 え? 声? 小さい頃の俺の声だ……。

「俺で笑わない奴は全員死ね!」

 思い出した……俺がお笑い芸人になりたいと思い始めた頃……俺が学校で喚き散らしていた言葉だ……。

 お笑い芸人として売れた事によって、あの時の言葉が実現してしまったって事か?

 だとしたら……俺は……。


 俺はお笑い芸人を続けた。

 最初は引退しようと思っていたが、大勢の命を奪っておいて、逃げる事は許されないと思ったからだ。

 命を奪わない為に、慎重かついつも以上に力を注いで仕事に打ち込んだ。

 どんなお笑い芸人にも負けない、至高のネタやギャグを作った。

 そして俺は、有名なドームである『ゴッドドーム』でネタを披露する事になった。

 有名アーティストにしか送られないような拍手が巻き起こっている。

 信じられない、この拍手は、俺に向けられているのだ。

「ここで、サプライズです!」

「え? 何?」

 突然VTRが流れ始めた。

「思い出って、辛い時に思い出すと泣けますよね、でも俺は辛い時にはね、借金の思い出を思い出すようにしてます。何故か? 金を借りれる友達を思い出せるからです」

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