第百話 下された裁き
ブルブスに断罪され、捕えられたルームスに少し同情するアルクス。
そこにアーテルが歩み寄り……?
どうぞお楽しみください。
「おーい馬鹿貴族ー」
「……ひぃ、よ、寄るな化け物……! お前のせいで僕は、僕は……!」
近づく先生から、縛られたまま逃げようとするルームス。
でも騎士の人達に抑えられて、ただもそもそ動くだけだ。
「侯爵家の三男坊だってー? そりゃまた大変だよなー」
「お、お前なんかに何がわかる!」
「長男のように跡を継げる訳でもなく、次男みたいに備えにもなれず、好きに生きろと放り出されちゃ、何かを見下さなきゃやってられないよなー」
「う……、お、お前、なんかに……」
……ルームスの顔が変わった……?
どこかとげとげしさがなくなったみたい……。
「冒険者として名を上げれば、実家の奴等もお前さんの価値を見直す、そんな想像がお前さんの希望だったんだろー?」
「だ、黙れ! 違う! 僕は、僕は……!」
「でも今のお前さんの行動は、実家にさえ破滅を招こうとしてる。これはあれかー? 死なば諸共で、実家と心中するつもりなのかー?」
「ち、違う! ぼ、僕は僕の存在をあいつらに認めさせたかっただけで……!」
「へー。やっぱりそうかー。だから自分の価値を下げるように思える存在が許せなかった訳だー」
「うぐ……!」
先生の言葉で、ルームスの様子が変わっていく。
まるで仮面をはぎ取られていくみたい……。
「だったら価値を示すやり方が違うだろー。こう言っちゃあれだが、冒険者としてどれだけ怪物を狩ったって、頭のお堅いお前さんの家族は考えを改めないだろー?」
「……っ……! こ、功績を上げた冒険者は、騎士を飛び越して爵位を賜る事もある! そうしたら、僕は……!」
「ただの力馬鹿に爵位をやる程、この国は馬鹿じゃないぞー。大事なのはその狩る過程で、どれだけ仲間を大事にできてるかじゃないのかー?」
「そ、そんな甘い事で貴族になれる訳がない!」
「初級回復魔法一つで頑張ってたこいつ、顔を焼かれた女剣士、お前の指示で魔術を使えなくなった少年魔術士、それを扱い切るのが甘い事なのかー?」
「っ……」
「貴族や王族の価値はそこに尽きる。しかし親としては領民や部下に心を砕き続ける生活に、我が子を落としたくないと思うのは当然だよなー」
「……!」
「たまにいるけどな。全部自分の移し身だと勘違いして、子ども全員貴族仕立てにする奴。だが三男にして自由を与えるなんざ、貴族らしくはないわなー」
「……ぅ、ぁ……」
ルームスが、泣いた……?
そうか……。
無茶苦茶な事をいっぱいしたけど、ルームスにはルームスなりの理由があったんだ……。
貴族ってそこに生まれただけで恵まれてるんだと思ってたけど、そうじゃないんだね……。
もしかしたら、平民の家に生まれるよりずっと……。
「お前さん、向き合う相手をちゃんと考えなー。どれだけアルクスや他の連中を見下したって、本当に認めてほしい奴らには届かないんだからさー」
「……そ、そんなの、わか、わかって……、わ、か……」
言葉を失って、泣き崩れるルームス。
これが先生の考えた罰なんだろうか。
だとしたら、ルームスにはとても辛くて、とてもとても優しいと思う。
「んじゃ、他も見て回るぞアルクスー」
「は、はい!」
「!? あの、この者への処罰は!?」
驚くブルブスさんに、先生は肩越しににやっと笑う。
「もう済みましたよー。もうそいつが俺達を狙う事はないでしょうからー」
「……ではこの後はどのように……?」
「場所は何でも良いですけどー、静かに考えられる場所と一般的な食事をー。そして本人が希望したら、家に帰してやってくださいー」
「……はい。承りました」
ブルブスさんは驚いた顔を笑顔に変えると、騎士の人達にルームスを連れて行くように言った。
ルームスが見えなくなると、ブルブスさんは先生に深々と頭を下げた。
「深い洞察と暖かいお心遣い……。更生の余地などないと断じた自分を恥じるばかりです……。しかしあの者の事情をいつ知られたのですか?」
「なーに、五百年も生きてると、色々わかるようになるもんですよー。それにこれであいつが自ら死ぬ事もないでしょー。な? アルクス」
「え? ……あ!」
先生、まさか私が「私のせいで人が死ぬとか、絶対に嫌です!」って言ったから、ルームスが絶望して自殺とかしないように……?
「ありがとう、ございます……!」
「いいって事よー。んじゃ次どこ行くー?
当たり前のように笑う先生に、私は何が何でも先生を死なせない、と決意を新たにするのだった……。
読了ありがとうございます。
ルームスのざまぁが甘くなったのは私の責任だ。
だ が 私 は 謝 ら な い 。
プロットの時点からこうする予定だったからな。
……シテ……。許シテ……。
振り返れば百話到達。
次回もよろしくお願いいたします。




