第九十六話 師弟
アーテルに再び教えてもらえる事になったアルクス。
張り切って修行に励もうとしますが……?
どうぞお楽しみください。
「さて、最初に言っておくが、別に俺を生き延びさせなくても良いからなー」
「えっ!?」
お風呂から戻ってご飯も食べて、さぁ先生と虹の初級回復魔法を完成させようって時に、何でそんな事言うの!?
「睨むな睨むな。お前がそんなだからだよ。後三週間で虹の初級回復魔法を完璧にする事は不可能だ。だがきっかけを掴む事ぐらいはできる。俺の目的はそれさ」
「でもそれじゃ……!」
「五百年以上たっぷり生きた俺のために、これからのお前が身体を壊したり精神を病んだりするのは駄目だ。だから絶対無理をするな」
「……」
「……おーい、返事をしろー」
そんな約束はできない……!
絶対先生を助けるんだ……!
「……言う通りにしないなら、協力しないぞー?」
「ぅ……」
それは困る!
この一週間、自分だけでやってみてよくわかった……。
先生の教えなしじゃ、アドウェルサの復活までに間に合わない!
だからって残り三週間、多少の無理はしないとやっぱり間に合う気がしない!
何とかしないと……!
……そうだ!
「……わかりました……。先生の言った事に従います……」
「おぉ、やけに素直だな。ま、それなら俺も安心」
「ただし! 従うのは前に先生が言った『嫌なら嫌って言っていい』って言葉です! 先生が言ったんですから、駄目とは言いませんよね!?」
「……アルクス、お前……」
ちょっと驚いた顔をした先生が、にやりと笑った!
「それさー、こっそり無理して怒られてから言う方が有効だったんじゃないかー?」
「あ……」
し、しまった!
これなら勝てると思ったらつい……!
「まぁいいや。目の届かないとこで無茶されるくらいなら、俺の目の届く範囲で少し無理するくらいは認めてやるかー」
「え……」
「俺を助ける助けないは別として、三週間で一定の形にしたいのは俺も同じだからなー」
「先生……!」
「ただし、本当に無理だと思ったらすぐ止めるぞー。飯はちゃんと食う、夜はちゃんと寝る、たまに部屋から出る、それは守れよー」
「はい!」
よかった……!
先生に心配をかけないぎりぎりまで頑張ろう!
「そしたらまずは虹の初級回復魔法を展開してみろ」
「はい!」
これまで練習してきた通りに、虹の初級回復魔法を展開する。
……ふ、不安定だけど何とか……!
「へぇ、随分早く展開できるようになってるなー」
「……が、頑張ってますから……!」
「そしたら今並べて展開してる七色を、丸く配置してみろ」
「ま、丸く……!?」
「そうだ。円はどの方向にも均等に力が加わる、安定した形だ。そうすれば今より安定感は増すだろう」
「や、やってみます!」
一度解除して、再び虹の初級回復魔法を展開する。
……わ! 先生の言う通り、さっきより全然やりやすい!
「そしたらそれを維持……、いや、大きめの魔吸石をどこかから調達して、そこに注ぎ込む方が効率的だな」
「! そうですね!」
やっぱり先生はすごい!
私が一週間練習してても思いつかなかった事を、ぽんぽん思いつく!
五百年も生きてるからかな……。
……先生にこれからも教わり続けたい!
「じゃあブルブスさんにお願いして、魔吸石持ってきてもらいます!」
「いや、それは俺が行く。お前はそいつの維持に集中しな」
「わかりました!」
虹の初級回復魔法を完璧に制御する。
さっきまでは霧でてっぺんの見えない山みたいだった。
でも先生が教えてくれたら、霧が晴れて道が見えてきたような気がする。
高いけど、遠いけど、きっとたどり着く。
その決意を胸に、私は手のひらに意識を集中させていくのだった。
読了ありがとうございます。
アーテル、ちょっとツンデレ。
次回もよろしくお願いいたします。




