第九十一話 戸惑いは重なって
国王レクスの賞賛に、アーテルの名を告げたアルクス。
それに急変したレクスの態度に、アルクスは慌ててアーテルを呼びに行きますが……?
どうぞお楽しみください。
「先生!」
「どうしたアルクス。上手くいったんじゃないのか? さっき廊下を大喜びしてる連中が通ったが……」
「いえ、あの、成功はしたんですけど失敗してて……」
「ははーん。やり過ぎて若返らせたな? いくつくらいになった? 子どもまで戻してたら大事だな」
「そ、そこまではしてないですけど、そうじゃなくて!」
あぁ、もう!
ただでさえ頭が混乱してるんだから、余計な事を言わないで!
「落ち着け落ち着けー。慌てて上手く行く事なんか、この世に一つもないんだぞー?」
頭ぽんぽんしないで!
私を慌てさせてる元凶のくせに!
……でも、ちょっと落ち着いた。
何か悔しい。
「あの、虹の初級回復魔法はうまくいって、国王様は治せたんですけど……」
「そりゃ良かった」
「でもその後、国王様からこんなすごいのどこで習ったって聞かれて、先生の名前を言ったら、何だかすごく真剣な顔になって……」
「おー、ちゃんと伝わってるんだなー。感心感心」
「その時国王様が『破滅の時』って言ってたんです……。何ですか破滅の時って……」
「あー、それなー。ま、二回説明するのも面倒だし、国王の前でまとめてするんで良いか?」
「え、あ、はい……」
衝撃的な話のはずなのに、いつも通りの先生なのが、頼もしいけどもどかしい……。
「それでもう今国王のところに行って良いのか?」
「あ、はい」
「病み上がりだろ? ちゃんと身だしなみくらいは整えているのかねぇ」
「えぇ……?」
「ま、良いや。行くぞー、アルクス」
「は、はい!」
国王様に呼ばれてるのに、全然驚いてない……。
先生って本当に何者なの……?
「んで、お前から見て国王はどんな感じだ?」
「えっ? え、えっと、冗談が好きで、周りの人に優しい、その、いい人だと思います」
「そっか。助けた甲斐があったな」
「はい……」
廊下を進む先生は、救護院の後に患者さんの話をする時と一緒……。
だからこそ、さっきの言葉が頭の中でぐるぐる回る……。
『破滅の時』なんて怖い言葉、先生には関係ないですよね……?
「ここか? アルクス」
「え? あ、はい! ……あの、アルクスです! 先生をお連れしました!」
「……入れ」
「はい!」
ブルブスさんの答える声も固い!
一体何が起きてるの!?
「し、失礼します!」
扉を開けると、服を着替えた国王様と、ひざまずくブルブスさんが見えた。
国王様は白くてきらきらした布に金色の飾りのついた、すっごく高そうな服を着ていた。
厳しい顔と合わせて、やっぱり王様なんだなって改めて思う……。
「……アルクスよ」
「はっ、はいっ!」
「その者がお主の師、アーテル・ニグリオスで間違いないか?」
「……はい!」
「そうか……」
何なに何だか全然わからない!
わからないけど、もし先生が国から狙われるような事をしていて、国王様が先生をどうにかしようとしてるなら……!
「アーテル・ニグリオス様、世界のための長旅、誠にありがとうございます!」
「おー、まー気にしないで良いですよー」
国王様が膝をついてお辞儀した!?
先生は先生で余裕だし!
あーもー! どうなってるのこれー!?
読了ありがとうございます。
病み上がりとはいえ、国王レクスに膝をつかせたアーテル!
その仮面に隠された恐るべき実力とは!?
※本作品はゆるふわハイファンタジーです。
次回もよろしくお願いいたします。




