第九十話 アルクスの失敗
虹の初級回復魔法で国王レクスの治療を続けるアルクス。
しかし事態は思惑とは裏腹に動いて……?
どうぞお楽しみください。
「……陛下……!」
「おぉ、何という事だ……!」
……私は失敗した……。
虹の初級回復魔法の事を、もっとわかってなければいけなかったのに……!
「陛下……!」
「何というお姿に……!」
みんな泣いてる……。
ごめんなさい、ブルブスさん……。
「はっはっは! どうだこの身体! 四十、いや三十代の時のような感覚だ! 力がみなぎっておる!」
黒い塊だけに虹の初級回復魔法をかければよかったのに、お腹の大きな塊を戻した後、身体中に散っている塊にもかけようとして、全身に一気にかけちゃった……。
すごい若返っちゃってる……。
「どうだブルブス! 見た目は儂の方が若くなったな! 羨ましいか? 羨ましいだろう! はっはっは!」
「……」
あぁ! 国王様がブルブスさんをすごいあおってる!
怒らないといいけど……。
「陛下!」
「うぉ!? な、何をする!」
あ! ブルブスさんが国王様につかみかかった!
駄目ですよ暴力は!
「……よくぞ、ご無事で……!」
「……よせ。しんみりしたのは好かぬ」
……そうか、嬉しさのあまり、抱きついただけだ……。
ブルブスさん、泣いて喜んでる。
力になれてよかった……。
「法術士アルクス!」
「は、はい!」
「命を救ってくれたこの恩、必ず報いよう! 心より感謝する!」
「い、いえ、その、治ってよかったです!」
わわ、国王様からお礼を言われるなんて!
先生も一緒にいてほしかったな……。
「薬士メディカーメン!」
「は、はい!」
「法術士サーニタース!」
「はっ!」
「医師メディキーナ!」
「はい……!」
「看護士ヌートリキウマ!」
「……ぁぃ……!」
「今日までよくぞ儂の命を繋いでくれた! お主達の献身がなければ、儂はこの奇跡を待たずに命尽きていた! 先の見えぬ中よく働いてくれた事、感謝する!」
「も、勿体無いお言葉……!」
「我々陛下がご無事であれば、そ、それで……!」
「御快復、お、おめでとうございます……!」
「ゔわあああぁぁぁ! 良かっだでずゔゔゔぅぅぅ!」
みんなが泣いてる……!
嬉し泣きに包まれてる……!
これまで数年間、ずっと国王様を助けるために頑張ってきたんだもんね……。
あ、何だか私も泣きそう……。
「お主達の労をねぎらうために祝いの席を設けねばな! 久々に飲むぞ!」
「お、お待ちください陛下!」
「先程まで伏せっておられたのに、いきなり酒など……!」
「せめて一日、養生をなさってください!」
「ごれでまだあっがじだらやでずゔゔゔぅぅぅ!」
わぁ、みなさんの勢いに涙が引っ込んだ。
「い、いやしかし、お主達をねぎらわねばならぬし……」
「……なら寝かせてください……」
「陛下のお加減が気になって、休憩中もよく眠れず……」
「安心したら、どっと疲れが出まして……」
「……眠い、です……」
「そ、そうか、すまぬすまぬ。日を改めるかの。今日はゆっくりと休むが良い」
そう言うと国王様は、みなさんの肩をぽんぽんと叩いて部屋から送り出した。
「してアルクス」
「はい!」
「お主どこでこのような奇跡を起こす法術を覚えた?」
「あの、私、先生がいまして、その人に全部教わって……」
「ほう! さぞかし名のある法術士なのだな! 名は何と言う?」
「えっと、アーテル、です」
「……ふむ、聞き覚えがないな。姓はわかるか?」
「えっと……、確か……」
「ニグリオス、と聞いております」
「あ、そうですその」
「何……!?」
え……?
ブルブスさんの助け舟で、国王様の顔色が変わった……?
「……そうか……。破滅の時が来るのか……」
「え、え……?」
「その者は今どこに」
「え、えっと、あっちの部屋に……」
さっきまでの優しい感じがうそみたい!
国王様の顔はすごく真剣で、少し怖いくらい……。
「控えの間に待たせております。連れて参りますか?」
「頼む」
「直ちに」
急に空気が変わってしまった王様の部屋。
「ま、待ってください! 私が連れてきます!」
「そうか。頼む。ブルブス、着替えを持って来させろ」
「畏まりました」
私は逃げ出すように部屋を出て、控えの間に走った。
先生……! 先生……!
何で国王様はあんな真剣な顔になったんですか……?
破滅の時って何ですか……?
……一体、先生は何者なんですか……!?
読了ありがとうございます。
失敗は失敗でも、命に関わらない方の失敗でした。
しかし再びシリアスが首をもたげてまいりました。
次回もよろしくお願いいたします。




