第八十八話 不安と緊張と
何とか虹の初級回復魔法を成功させ、王都に到着したアルクス。
しかし国王の治療という行為には、これまで以上の不安が高まって……?
どうぞお楽しみください。
「こちらでお待ちください」
「あ、ありがとうございます……」
「どーもー」
私と先生は、ブルブスさんに控えの間という部屋に通された。
うあー! 緊張するー!
ブルブスさんが国王様のお加減を伺って、そしたら私が治療するんだよね!?
大丈夫かな!?
普通の初級回復魔法に七色の付与を並べて、同時発動はできたけど、本当にそれで治るのかどうか……!
先生の言う事を疑うわけじゃないけど、もし失敗したら……!
「なーに緊張してんだアルクス」
「き、緊張もしますよ……。だってもし失敗したら……」
「それで死んだとしたら、それが国王の寿命だ」
「な……!」
何て事を……!
「考えてもみろ。ここの法術士や薬士がお手上げだったんだ。誰もお前に期待しちゃいないよ」
「う……、それは、そうですが……」
「これで回復しなくても、まぁ仕方ないか、で済む。問題は成功した時の方だ」
「え……?」
な、何で成功した時の方が問題なの……!?
「国の最高位だという自負のある連中の前で、小娘にしか見えないお前が治療するんだ。面目も何もあったもんじゃないだろ」
「そ、そうですか……?」
国王様が助かればみんな喜ぶと思うけど……。
「例えば!『陛下が治ったのは、この小娘の怪しげな術などではなく、これまでの我々の治療が身を結んだのです!』とか」
「えぇ……?」
「『本当に治ったかどうかわかりませんぞ! 麻酔的なもので一時的に治ったように見せかけただけかもしれません!』とか」
「まさか……」
「『元々陛下に毒を持っておいて、今解毒したのかもしれません! 捕まえて取り調べましょう!』とかな」
「先生……」
いくら何でも人を悪く言いすぎじゃないかな……。
あ、ルームスに刺されたから、人を信じられなくなってるのかな?
それは仕方ないよね。
「大丈夫ですよ先生。人間そう悪い人ばっかりじゃないですから」
「……何で上から目線なんだお前……」
ちょっとむっとした後、先生の唇がにやっと笑った。
「とにかく失敗してもお前の責任じゃない。だから命を無理に背負うな。たとえここで成功しても、百年も経てば大抵の人間は死ぬんだからな」
「……はい」
……そっか。
私の緊張をほぐすために……。
「むしろ失敗してこい。成功したら大騒ぎになって、王都観光もままならなくなるからな」
「嫌でーす。ここで大成功して、王都に私の名前を轟かせるんですー」
「お、言うなぁ。大騒ぎで揉みくちゃにされる姿が目に浮かぶぜ」
「その時は『この人が私に付与を教えた先生です!』ってみんなに紹介して巻き込みますから」
「……お前、いい性格してんなー」
「弟子は先生に似ますからねー」
言ってにやっと笑い合ったところで、扉を叩く音がした。
「ブルブスです。アルクスさん、お支度をお願いします」
「はい!」
もう一度虹の初級回復魔法を展開して、よし!
「よし、行ってこい」
「はい!」
扉を開いて、ブルブスさんに続いて廊下を進む。
大丈夫。
きっと大丈夫。
私は先生の弟子だ。
あの冗談を本当にしてみせる。
先生がこの国中から讃えられるように……!
読了ありがとうございます。
立てー! 立つんだフラグー!
次回もよろしくお願いいたします。




