第八十五話 七色の付与の秘密
王都に向かう馬車に揺られるアルクス。
そこでアーテルから語られた虹の初級回復魔法の秘密とは……?
どうぞお楽しみください。
「そ、それってつまり国王様を若返らせるって事ですか!?」
「えっ」
「ま、そうなるなー」
え、で、できるかな……?
昨日は確かに七色全部使ったみたいだけど、もう先生を刺された事で頭いっぱいになってたから、あんまり覚えてないんだよね……。
「こ、国王陛下を若返らせる……!? 本当にそんな事が……!? いえ、アルクスさんの変化を見ているのですが、しかし、それにしても……!」
ブルブスさんが、驚きながらも期待してる顔してる……!
これは頑張らないと……!
「先生! 国王様は若返れば治るんですか!?」
「正しく言うなら、『ほとんど手遅れだから、若返らせるくらいしか手がない』だなー」
「なっ……!」
ブルブスさんの顔が一気に青くなる!
もう! 先生はもうちょっと言い方とか考えないと……!
「現時点で最高の医療を受けながら、治療の効果がない。だがその状態でも衰弱しつつ生存している。おそらく国王の病気は癌だな」
「がん……?」
それってどんな病気なんだろう……。
名前の響きが何だか怖い……。
「そ、それはどのような病気なのですか……?」
「あー、身体の中に悪いできものが増える病気ですねー。そいつが身体の中で増えると、じわじわと衰弱するんですよー」
「何と、そんな病気が……!」
「しかも風邪なんかとは違って、身体の一部が変化したものなので、普通の病気に効く治療が効かない事が多いんですよー」
「それでどれ程手を尽くしても、陛下は御快復されなかったのですか……」
「聞き取っただけの内容ですから、まだ確定じゃないですけどねー」
先生とブルブスさんの話を聞いていて、先生の言った事がわかった……。
悪いできものが何年もかけて増えて広がっていて、しかも法術も薬も効かないなら、身体を若返らせて、できものができる前に戻すしかない……!
つまり私が虹の初級回復魔法を使えなかったら、国王様を助ける方法はないって事……!
何としてでも成功させないと……!
「先生! 虹の初級回復魔法を使うにはどうしたらいいですか!?」
「そうだな……。七色全てが身体を構成するものだと考えてみろ」
「え、えっと……。赤が筋肉、みたいな事ですか?」
「そうだ。橙は何だ?」
「えっと……、か、活力、ですか?」
「ま、良いかな。黄色は?」
「……確か、あのびりびりしてるのが身体を伝わって動かすって……、あ、神経、でしたっけ!?」
「いいぞ。緑は?」
「か、身体の作り方……!」
「よし。青」
「か、身体の水の流れ……?」
「まー、間違ってはいないか。藍、は少し難しいかな」
「『硬化』……。固くなる……。あ、骨!?」
「そうだ。最後は紫」
「魔力の元……。こ、心、ですか!?」
「うん、若干の違いはあるが、まぁ良いだろ」
よ、よかった……。
それにしても初級回復魔法の付与の七色って、そういう意味があったんだ……。
「身体を構成するその七つの要素に、七色の付与から直接力を注ぎ込む。命そのものが活性化する事で、老いを身体から遠ざける」
「それで若返るんですね……」
「そうだ。そうするとできものも正常な身体の一部に戻る。普通なら赤の初級回復魔法で身体自身に攻撃させるんだけどな。今回はそれだけじゃ足りなさそうだ」
「わかりました……!」
じゃあ七色を同時に使えるようにならないと……。
よーし早速……!
うぇ!? な、何かうまくまとまらない!
「これまでに使ってた魔力の使用感があるからなー。青や緑はかなり慣れてるだろうけど、あまり使ってない紫や昨日覚えたばかりの赤は制御が難しいだろー」
「こ、これはどうしたら……!?」
「慣れだからな。頑張れ」
「せ、先生!」
うぅ、国王様の、ひいては私の一大事なのに!
……でも頼ってばかりじゃ駄目だ!
集中! 集中!
「……よく似てるぜ」
「な、何か言いました!?」
「別にー。それよりこの馬車、どれくらいで王都に着くんですかー?」
「あ、その、夜通し馬車を進めるよう、中で休める高級客車を付けたので……」
遅くなるって事かな!?
二、三日かかるのかな!?
王都なんて行った事ないから距離感がわからない!
「……明日の昼には、到着します……」
……徹夜決定……。
でも国王様の命がかかってるんだ!
やってやるぅー!
読了ありがとうございます。
結構なハードスケジュール。
しかも超重要案件。
アルクスはブラックの運命から逃れられないのか……。
次回から新たな章となります。
よろしくお願いいたします。




