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初級回復魔法しか使えないようにされた上に追放された法術士の私が、虹の聖女と呼ばれるまでの物語  作者: 衣谷強
赤の章

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第八十四話 王都に向かって

身体も元に戻り、いよいよ王都へと向かうアルクス。

しかしアーテルの同行は、やはり波乱を生むようで……?


どうぞお楽しみください。

「えー……、その方がアルクスさんの先生で……?」

「どーもアーテルでーす。よろしくお願いしまーす」

「あの……、その、お願いします……」

「そ、そうですか、うーん……」


 ブルブスさんの笑顔がちょっと引きつってる……。

 目元を隠した仮面に黒ずくめの服。

 ……王様に会いに行く格好じゃないよね……。

 一応仮面を外したり服を着替えたりしてもらえないかお願いしたけど、


『なーに。俺の名前を聞いたらすぐに通してもらえるさ』


 って言われてしまった。

 本当にそうなのかな……?

 あまりに自信満々で言うから、それ以上何も言えなかったけど……。

 ……もしかして王様の親戚とか?

 実は国を出た王子様だったり!?


「……アーテル殿、その、国王陛下とはどのようなご関係で……?」

「アーテル・ニグリオス。そう言えばすぐにわかると思いますよー」

「ニグリオス……?」


 ……ブルブスさんが眉をひそめたままだ。


「……わかりました。ただ陛下がそのお名前に覚えがなければ、別室でお待ちいただく形になりますが、よろしいですか?」

「構いませんよー」

「……では、参りましょう」


 ごめんなさい! ブルブスさん!

 私が不安で先生に付いてきてほしいってわがまま言ったから……!

 でももし国王様のお部屋に一緒にいられなくても、何かあった時に聞きに行ける場所にいてくれたら、それだけでも安心する……。


「こちらが馬車になります」


 何これ!

 おっきい馬車!

 しかも何かどこもかしこも豪華!

 ブルブスさんが扉を開けてくれると、中も綺麗!


「どうぞ中に」


 言われるままに踏み台を登って中に入ると、馬車とは思えない広々とした感じ!

 椅子とか私の寝台より柔らかいし!

 え、いくらぐらいするんだろう……。


「へー、『王国の盾』ともなると、豪華な馬車をお持ちなんですねー」

「賓客の護衛などもいたしますので」

「成程ー。つまり最初からアルクスに国王の治療をさせる腹づもりだったんですねー」

「む……」

「おー、ふかふかだなアルクス」

「は、はい……」


 私の隣に座ってご機嫌の先生。

 難しい表情でその向かいに座るブルブスさん。

 ……椅子は柔らかいのに空気が固い……。


「んでー、ただ乗ってるのも暇でしょー? アルクスに病状でも伝えておいたらどうですかー?」

「……そう、ですね……。聞いていただけますか?」

「は、はい!」


 そう言うと、ブルブスさんはゆっくりと話し始めた。


「国王陛下の体調は数年前からすぐれませんでした。食欲の減退と腹の痛みに、下がらない微熱……」

「法術や薬はどんなものを差し上げたのですか?」

「『解毒』と『体力回復』、『解熱』に『鎮痛』などは術者を変え薬を変え、差し上げ続けました。しかしおやつれになる一方で……」

「そんな……」


 その病状だったら、私もそれくらいの対処しか思い付かない!

 宮廷の法術士や薬士なら、最高のものを差し上げているはず……。

 後は昨日身に付けたばかりの赤の初級回復魔法だけど、どちらかと言うと冒険者さんに付与するような効果で、本当に役に立つのかな……?


「アルクス」

「は、はい!」

「こりゃ赤じゃどうしようもないな」

「……え……」


 そんな……!

 先生にそう言われたら私……!


「だから王都に着くまでの間、練習しとけ」

「れ、練習って、何をですか!?」

「全部の付与を紡いで繋ぐ、虹色の付与をだよ」

読了ありがとうございます。


いよいよタイトル回収も近くなって参りました。


次回もよろしくお願いいたします。

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