第八十一話 数奇な縁
騎士の最高峰と言える『王国の盾』からの来訪に、立ち向かう決意をしたアルクス。
しかしその人物はアルクスの想像を遥かに上回っていて……?
どうぞお楽しみください。
「こんにちはアルクスさ……、あれ!?」
「え、ブルブスさん!? どうしたんですか!?」
覚悟を決めて開けた応接室の扉。
その中にいるのは、『王国の盾』の騎士様のはず……。
なのに何でブルブスさんがここに?
……え、まさか……!
「あ、アルクス、さん、ですか……?」
あ、私の子どもになった姿見たらびっくりするよね……。
私もびっくりだけど……。
「え、あ、はい、その、色々ありまして……」
「……それは、ルトゥム家の三男ルームスへの暴行と何か関係が……?」
「えっと、その、はい……」
やっぱりその事で来たんだ!
じゃあブルブスさんが『王国の盾』……!?
「……では、そのご事情、お聞かせいただけますか?」
「……わかりました」
左手をなくして、お孫さんに泣かれておろおろしていたブルブスさん。
それが騎士の中でも選ばれた人にしかなれない『王国の盾』だった事には驚いたけど、私のする事は変わらない!
ちゃんと説明して、わかってもらおう!
「えっと、まず私は去年、駆け出しの法術士としてルームス、さんの、冒険者仲間にいました」
「はい」
「その時、私はこの『専魔の腕輪』を付けさせられました。特定の初級魔法しか使えなくなる代わりに、早く、沢山発動できるようになるから、と……」
「そんな便利なものがあるのですね」
「えっと、まぁ、はい……」
あー、便利というか、何というか……。
ルームスは私を道具として使うつもりで付けさせてたんだけど、結果としてはいろんな人を助ける力になったし、うーん複雑……。
「でも自動で傷を回復する『癒しの鎧』を手に入れた後は『君はもう必要ない』と言って、冒険者仲間から追放したんです」
「……何故そこまで回復にこだわるのでしょうか」
「それはルームスの武器が、無傷の時は波動を飛ばせるけど、怪我をするとそれが使えなくなる『見守りの剣』だったからです」
「そんな武器があるのですね」
その由来を聞いて先生に笑い飛ばされてたルームスは、今思うと面白かったなぁ。
それをまるで伝説の武器みたいに振るってたもんなぁ。
……そう言えば先生は、何でそんな事知ってたんだろう?
「しかしそうすると、わざわざこの町に来る理由がありませんな」
「それが『癒しの鎧』の効果がなくなったみたいで、私にもう一度冒険者仲間に戻れって言いに来たんです」
「……ふむ。それで今回の騒動に?」
「いえ、その時は冒険者仲間だったポ……、私みたいに追放された人が助けてくれました」
「ふむ」
「その時に『見守りの剣』が、貴族のお坊ちゃんの安全のための武器って私の先生に言われたのを逆恨みして、……昨日、う、後ろから、剣で、刺して……!」
ううう……!
あの先生が刺された瞬間を思い出すと、また怒りが込み上げる……!
それを棚に上げて私を捕まえようとさせてる事にも腹が立つ……!
「……それで逆上して、ルームス・ルトゥムを殴ったと」
「……はい。その先生に教わった付与の力を全部使って……。その副作用で子どもの姿になりました……」
「副作用、ですか……。ちなみにその先生はご無事だったのですか?」
「あ、私が渡しておいた『再生』の付与をつけた魔吸石の効果で、大丈夫でした」
「魔吸石……。確か冒険者組合でのみ貸出をしている道具でしたね」
「あ、私が作ってるので」
「何と……」
あ! これ言わない方がよかったかな!?
失敗したかも……!
「成程……。だいぶ証言に行き違いがありますな……」
「る、ルームスは何て言ってたんですか?」
「……気を悪くしないでいただきたいのですが……」
……相当ひどい事言われてるなこれ……。
「『キュープラムの町に、刺しても死なないアーテルという化け物がいる。その側にいるアルクスという女も鎧を砕く化け物だ。早く捕らえて処刑しろ』と……」
「……!」
よくもまぁそんなに自分に都合のいいように……!
……でも貴族の言う事だから、みんな信じちゃうのかな……。
それならせめて先生は守らないと……!
「貴族の子息の言う事で、しかも冒険者としてかなりの功績を上げている人からの訴えです。ルトゥム家と繋がりのある貴族は、こぞって賛成しました」
「あ、あの」
「ですが全て黙らせました」
「……え?」
にっこり笑うブルブスさんに、私は言葉を失った。
「私の恩人に手を出すつもりなら、私は烈牙狼から国を守るために捧げ、そして再生してもらったこの左手にかけて、王以外の何者とでも戦おう、とね」
「……ブルブスさん……!」
そこまで言ってくれたなんて……!
……って烈牙狼……?
半年前くらいに現れて大騒ぎになった怪物……!
高位の冒険者と軍隊が協力してようやく倒したっていうくらい強かったって……。
呼ばれなかったルームスが荒れてたからよく覚えてる……。
ブルブスさん、本当に『王国の盾』なんだなぁ……。
「私怨で人を刺した挙句、失敗したら地位をかさに黙らせようとは、貴族の風上にも置けません」
「じゃあ……!」
「他の方の証言をいただいてになりますが、少なくとも処刑というような事態には私が絶対にさせません」
「ありがとうございます!」
あぁよかった!
これで今まで通りに過ごせる……!
「……この件はここで終わりで構わないのですが……」
「え?」
「アルクスさんの若返り、魔吸石の『再生』、これらを聞いてはこのまま帰るわけにはいかなくなりました」
「え……」
すごく真剣な顔……!
ど、どうなるの私……?
読了ありがとうございます。
情けは人の為ならず。
ちなみに『王国の盾』は王家の護衛も務める関係上、公爵と同レベルの扱いになります。
ルトゥム家は侯爵家。
「オイオイオイ」
「死んだわアイツ」
次回もよろしくお願いいたします。




