第八話 新たな力と代償
毒の治療を無事に終えたアルクス。
それによって救護院での仕事は飛躍的に増えました。
その結果……?
どうぞお楽しみください。
「すっげー! めちゃくちゃ汗かいただけで、頭痛と倦怠感がなくなったー!」
「まじかよォー!」
「お大事にどうぞ」
ふぅ、大分青の初級回復魔法にも慣れてきたなぁ。
あの後ウィンクトゥーラさんに先生の事を説明した。
すっごく警戒していたけど、『専魔の腕輪』の本当の使い方と、それに合わせた修行をしてもらった事を必死に説明したら、何とか頷いてくれた。
「幸い良い人みたいだから良かったけど、あまり簡単に人を信用しちゃ駄目よ! 特に男の人は!」
そう詰め寄るウィンクトゥーラさんに、ルームスの件がある私は苦笑いするしかなかった。
「それにしてもその、青の初級回復魔法……? お腹から身体の外に向かって流したらどうなるのかしら……?」
そんな話をしていたら、毒の治療をした患者さんのお兄さんが、
「なら頼みがある! うちのお袋を診てやってくれないか!?」
と申し出てくれた。
何でも弟さんと二人で山に入ったのは、数日前から咳の止まらないお母さんの為に、蜂蜜を探そうとしたのだと言う。
微熱が続いているものの、意識ははっきりしているし、食欲も多少はあるとの事で、蜂蜜で駄目なら救護院に連れてくるつもりだったそうだ。
ウィンクトゥーラさんに了承を得て、救護院に連れてきてもらい、万が一に備えてお手洗いは空いた状態で試した。
すると、
「熱くないのに汗が止まらないわ! でも熱も咳もなくなって、すっきりしたわ……!」
と汗だくになりながらも元気になった。
その後水を飲んで着替えたら、
「病気になる前よりも元気になったみたい」
と笑顔で帰って行かれた。
ご兄弟から感謝されたのは言うまでもない。
「成程なぁ。病気の元みたいに小さなものなら、毛穴から汗と一緒に出す事もできるのか」
これは先生も興味深そうに頷いていた。
お陰で青の初級回復魔法をかける場所によっても違いがある事がわかった。
それからは湯浴み着を着た患者さんに横になってもらって、お腹に青の初級回復魔法をかける事にした。
尋常じゃない汗をかくけど、お手洗いに駆け込むよりはいい。
こうして私は救護院で毎日仕事がもらえるようになった。
「ねーちゃんのお陰で風邪がぴたっと治ったぜ! ありがとよ!」
「どうしても仕事が休めないところだったから、本当に助かったわ!」
「おねーちゃんありがとう!」
「ありがとうねアルクスちゃん。大助かりよ」
充実した日々……!
本当に先生に出会えて良かった……!
私はこれだけで十分に幸せ……!
「あ、そうそうアルクスちゃん、これを……」
「!?」
ウィンクトゥーラさんから手渡された『それ』。
……膝が震える……。
受け取った腕が動かせない……。
「……せんせぇ……」
私はそう呟くのが精一杯だった……。
読了ありがとうございます。
ウィンクトゥーラが渡したものは一体……?
次回もよろしくお願いいたします。