七十九話 語られる顛末
七色の付与を全開にしたために、幼児化したアルクス。
ウィンクトゥーラに愛でられながら、アーテルから事の顛末を聞きますが……?
どうぞお楽しみください。
「さて、お前が眠った後の事だが」
「先生!? この状態のまま話すんですか!?」
さらっと説明をしようとする先生!
信じられない!
ウィンクトゥーラさんのお膝抱っこで、ずっと頭撫でられてるんですけど!?
ずっと「可愛い可愛い」言ってるんですけど!?
……まぁその体勢のまま、ご飯食べてた私が言うのもなんですけど……。
「あの馬鹿貴族は回復して次殴る直前で俺が止めただろ? しばらく放心してたが、俺が声をかけたらすごい勢いで走って行った」
「話すんですね……」
まぁ気になってたから聞こう。
抱きしめられて撫でられているのには耐えよう。
「で、お前が壊した壁とかは、少年が大地の魔術で修復してくれたってよ」
「ロセウスさんごめんなさい!」
あー、迷惑かけちゃった……。
後でちゃんと謝ろう。
「後はそうだな……。町の人達は若干引いてたそうだから、ま、謝っとけ」
「わ、わかりました……」
ううー! やりすぎた……!
ロセウスさんや町のみんなに迷惑かけて……!
いくら先生が剣で刺されたからって……。
……あ!
「そ、そういえば先生! 胸を思いっきり刺されてましたけど大丈夫なんですか!?」
「おー、この通りぴんぴんしてるぞー」
「な、何で……?」
「これなーんだ?」
「……魔吸石……?」
先生が服の中から取り出したのは、灰色の魔吸石。
あ! 前にタベッラさんへのお礼の時に、先生に渡した緑のやつ!?
そっか! それで傷を『再生』して助かったんだ!
よかったぁ……!
「それで、あの、先生……」
「何だ?」
「この身体って、元に戻ります……?」
「戻るぞ」
「よかった!」
「十年も経てばな」
「ちょっ……!」
それ普通に成長してるだけじゃないですか!
やだー! 早く大人になりたいのに、逆に子どもになるなんてー!
「十年待つのが嫌なら、付与の調整で戻すしかないな」
「え……! で、できるんですか!?」
「おー。付与は組み合わせで別の効果が生まれるって言っただろ? 緑の『再生』を元にして、後二つ三つ付与を足せば、成長を促進させる事ができる」
「何を足せばいいんですか!?」
「それは……」
?
ウィンクトゥーラさんの、頭を撫でる手が止まった?
「アーテルさん」
「えっ」
「明日にしましょ?」
「……はい」
せ、先生!?
何素直に従ってるんですか!?
いつもの先生らしくない!
「アルクスちゃんも、明日でいいわよね?」
「え、でも……」
私の顔を笑顔でのぞき込んでくるウィンクトゥーラさん。
うーん、戻れるなら早く戻りたいんだけど……。
するとウィンクトゥーラさんは、とても寂しそうな表情に変わった。
「可愛いアルクスちゃんを見てたら、昔ポルポラを抱きしめて眠った事を思い出しちゃったの。……だからお願い……、ね?」
「……わかりました」
「ありがとうアルクスちゃん!」
他ならぬウィンクトゥーラさんのお願いだもんね。
それに誰かと一緒に寝るなんて久しぶりで、ちょっとわくわくする。
「じゃ、俺帰ります。じゃあなアルクス」
「あ、はい! おやすみなさい!」
さっさと帰っちゃう先生。
……てっきり「身も心もお子様だなぁ」とかからかってくるかと思ったのに……。
「さ、寝ましょ。アルクスちゃん」
「はい!」
まぁからかわれなくてよかった!
私は寝巻きに着替えたウィンクトゥーラさんと一緒に、布団の中に入った。
私を抱きしめるウィンクトゥーラさんが、あったかくて、柔らかくて、いい匂いがして、
「おやすみアルクスちゃん」
「おやふみ、なはい……」
私はすぐに眠りに落ちていった……。
読了ありがとうございます。
【母性解放】
子を守ろうとする母親(まれに父親)が発動する能力。
子に対して深い愛情を示すと同時に、外敵に対して強烈な警戒心を放つ。
その強烈な圧力は、手負いの怪物すら追い払うという。
二人の母親が一人の子どもを共に我が子と主張した際に、時の裁判官が母性解放の強さで真の母親を見抜いた名裁きはあまりにも有名である。
【駄疎書房刊「スキル『母性』は最強ですが、何で男の俺に授けたんですか女神様!?」より抜粋。
次回もよろしくお願いいたします。




