第七十八話 付与の代償
付与全開でルームスを殴っていたら、刺されたはずのアーテルに止められたアルクス。
気が緩んだのか気を失ったアルクスに起こった変化とは……?
どうぞお楽しみください。
「……ぅゅ……」
とろんとした せかい。
じぶんの からだも ぼんやり。
あたたかさだけが わたしをつつんでいる。
あったかい ぎゅうにゅうみたい。
「……くす、おい、アルクス」
……だれ?
しってるこえ。
ちょっときびしくて ちょっといじわるで すごくやさしいこえ。
……せんせいだ。
せんせいが よんでる。
いかないと。
「はっ!?」
「おー、起きたかアルクス」
「先生!? わ、私、何を……!?」
目を覚ますと救護院の天井と、先生の仮面が見えた。
隣のウィンクトゥーラさんは、涙目!?
「あ、あの、どうしたんですかウィンクトゥーラさん!? 何があったんですか!?」
「何がって……! アルクスちゃん、その身体……!」
「へ?」
私の身体?
別に痛いところもないし、苦しいとかもな……。
……!?
手! 手が小さい!
握って、開いて……!
うん! 私の手だ!
でも何でこんな子どもみたいな大きさに……!?
「ほれ鏡」
「ありがとうござ……、えええぇぇぇ!?」
先生が寝台の上に乗せてくれた大きな鏡。
そこに映ってるのは、六歳くらいの子ども!?
表情を変えてみたり、身体を動かしたりすると、鏡の中の子どもも同じように動く……!
私だこれ……!
……わ、若返ってる……!?
「せ、先生、これ、一体……?」
「お前、覚えた付与全部自分に使っただろ」
「え、えっと……」
「赤の『筋力増強』と黄の『俊敏』、藍の『硬化』で攻撃力を高め、負荷は橙の『体力回復』と緑の『再生』、青の『解毒』と紫の『魔力注入』で補った。違うか?」
「む、無我夢中でよく覚えてないですけど、多分そうです……」
「付与は複数の種類を大量に使うと、その混ざり方で思わぬ効果を生む事がある。七色同時の効果は若返りだ。いやー、久し振りに見たぜ」
「……え……」
軽く言うけど若返り!?
大問題なんですけど!
こんなんじゃ本当に子ども扱いされちゃう……!
「アルクスちゃん……」
「う、ウィンクトゥーラさん……」
涙目のウィンクトゥーラさんが迫ってくる。
……心配かけちゃったよね。
ごめんなさい……。
「ねぇ、ぎゅってしていい……?」
「はい? それっ、てぇ!?」
聞き返す間もなく、抱きしめられる!
頭を撫でられて頬擦りされて、何なに何!?
「可愛い! ちっちゃいアルクスちゃん可愛い! あぁ、何て可愛いのかしら! 天使!」
「え、ちょ、あの……!?」
「……あー、院長さん、お前のその姿を見てから、ずっと耐えてたぞ……。横で見ててちょっと怖いくらいの我慢だった……」
先生が若干引いてる!
そんなに私を撫でたかったの!?
ウィンクトゥーラさん、子ども好きだとは知ってたけど、ここまでだったなんて……。
いつもは救護院の院長って立場だから、我慢してるのかな……。
「あぁ! すべすべ! ふにふに! さらさら! 可愛い! 可愛い! 可愛い!」
「あ、あの、ウィンクトゥーラさん……?」
撫でられてるうちにどんどん抱き寄せられて、椅子に座るウィンクトゥーラさんの膝の上に乗っちゃった……。
こんな風に抱きしめられるのって久しぶりだから、嫌じゃないけど恥ずかしい……。
「そうだ! アルクスちゃん! アーテルさんが、目を覚ましたらお腹を空かせてるだろうからって、アウラン食堂にご飯を頼んでおいてくれたのよ!」
「え、あ、ありがとうございます!」
言われたら何だかお腹空いてきた!
ウィンクトゥーラさんが寝台の横の台の袋を取って開くと、わ! 鶏肉がパンに挟まれてる!
美味しそう!
「はい、アルクスちゃん。あーん」
「え、いや、私、自分で……」
「あーん」
「あの、だから……」
「あーん」
くぅ〜。
「……はい」
……恥ずかしさよりお腹の空き具合が勝った……。
やっぱり付与の反動かなぁ……。
うあ! すごく美味しい!
「あぁ、美味しそうに食べるアルクスちゃん可愛い! さぁもう一つ!」
「ふぁい!」
「お前……」
あっ! 先生が呆れた顔で見てる!
……でも、お腹が空いてるんだもん!
仕方ないじゃない!
「はい、お茶」
「ありがとうございます!」
「ご飯はまだあるから、沢山食べてね」
「はい!」
「……くくっ」
先生のにやにや顔は一旦無視だ!
とにかく今はご飯だ!
ご飯を食べよう!
読了ありがとうございます。
アーテルの服装は黒ずくめ……。
……まさか(違)!?
次回もよろしくお願いいたします。




