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初級回復魔法しか使えないようにされた上に追放された法術士の私が、虹の聖女と呼ばれるまでの物語  作者: 衣谷強
黄の章

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第六十九話 迫る危機

アーテルに疑念を抱きつつも、告げられた怪物の増加に対して準備を進めるアルクス。

しかしその言葉が現実になるのは、思いの外早かったようで……?


どうぞお楽しみください。

「ひゃ、百……?」

「あぁ、およそ百体の怪物がこの町に向かっているそうだ。明日には到着するだろう」

「そんな……!」


 ポルポラさんの言葉に、私は血の気が引いた。

 冒険者だった時に何度も討伐に参加したけど、怪物に対処するには連携するのが鉄則だった。

 強い前衛の人が怪物を食い止めている間に魔術で攻撃したり、弓矢や魔術で怯ませた怪物に剣でとどめを刺したり、そういう工夫が必要だった。

 つまり一体の怪物を討伐するのに三、四人は必要なはずだ。

 百体の怪物を討伐するなら、三百から四百人の冒険者さんが必要になる……!

 でもこの町には、以前より増えたけど、冒険者さんは五十人いるかいないか……。

 勝てない……!


「何落ち込んでるんだアルクス?」

「だ、だって、百体の怪物だなんて、勝てるわけないですよね……! 早くみんなで逃げないと……!」


 大好きなこのキュープラムの町から離れないといけないのは辛い。

 でも命には代えられない!

 一日あれば、隣の町まで逃げられるはず!

 そこの冒険者さん達と力を合わせれば、何とか……!


「おいおい、まさかあたし達が負けると思ってるのか?」

「えっ!? ……だ、だって百体ですよ……?」


 どう考えたって勝てるわけが……!


「アルクス、お前は自分の付与の力を舐めすぎだ。あたし達はアルクスの作った魔吸石まきゅうせきでとんでもなく強くなったんだぞ?」

「で、でも……!」

「まぁ見てな! あたし達にかかったら、百体だろうが二百体だろうが相手にならないのさ!」

「えぇ……?」

「ただ魔吸石はかなり使うと思うから、今後に備えて付与をよろしく頼むな!」

「あ、は、はい! 頑張ります!」


 ……そうだ。

 こうなる事は先生に言われた時から覚悟していたはずだ。

 どんな怪我しても大丈夫なように、緑の初級回復魔法の付与を増やして……!

 ……いや、私も討伐に参加すれば、その場で治せる……!

 直接戦う力はなくても、冒険者のみんなを助けられれば、勝ち目は増えるはず!


「あの、ポルポラさん! 私も討伐に参加させてください!」

「え? いや、そりゃ構わないけど……」

「足手まといにはなりません! 頑張りますから!」

「……わかったよ。一緒に行こう」

「はい!」


 頭に置かれたポルポラさんの優しい手。

 この温もりを守るために、私は頑張る!




「……わぁお……」


 私はそう呟くのが精一杯だった。

 すごい速さで怪物を切り裂いていくポルポラさん。

 すごい早さで魔術を展開して怪物を吹き飛ばすロセウスさん。

 最初は目の前を埋め尽くすように思えた怪物の群れが、どんどん減っていく……。


「……!」

「……! ……! ……!」


 ポルポラさんが合図と共に飛び退いて、そこに聞き取れないほど早く詠唱を終えたロセウスさんの魔術が炸裂する……!

 すごい……!

 ポルポラさんは黄の初級回復魔法の付与で、すごい速さで怪物の間を駆け抜ける。

 橙の『体力回復』と緑の『再生』も使っているから、付与が切れるまでずっと動き続けていられるし、藍の『硬化』でぶつかる事故もない。


「……! ……! ……!」


 そうして怪物がポルポラさんに注意を向けたところで、ロセウスさんの魔術が怪物達を襲う。

 ロセウスさんも『俊敏』と『鋭敏化』で、魔術を普通ではあり得ない早さで展開して、紫の『魔力注入』で絶え間なく撃ち続ける。

 ……ポルポラさんの速く正確な剣と、ロセウスさんの早く強力な魔術で、怪物はお昼を待たずに全滅した……。


「……っと。これで終わりですね。お疲れ様でしたアルクスさん」

「いやいや! 私、何もしてないです!」


 ロセウスさんの言葉に、私は手と首を横に振る。

 百体もの怪物を討伐したのは、ポルポラさんとロセウスさんだ。

 私は立って見ていただけ……。


「何を言っているんですか。アルクスさんの付与があればこそです。この黄の初級回復魔法の付与がなかったら、こんなに簡単に討伐はできなかったでしょうから」

「……そう、ですか……?」

「えぇ。藍の初級回復魔法もそうですが、アルクスさんの付与は冒険者の生存率や依頼達成率を大きく上げています。本当に助かっているんですよ」

「あ、ありがとう、ございます……」


 ロセウスさんの言葉に、胸がふわってなる!

 頑張ってよかった!

 ルームスに冒険者仲間から追放された時は、こんな風になるなんて思ってもみなかったなぁ。


「よぉ、どうだった? あたし達の狩りは」

「すごかったです!」


 戻ってきたポルポラさんに、私は汗を拭く布を差し出す。

 見たところ怪我もなく、汗を拭いたらいつも通りの笑顔を見せてくれた。

 だから討伐じゃなくて狩りなんですね。

 あれだけ余裕なら当然かぁ。


「ポルポラさん、いいのいた?」

「あぁ、血抜きも冷やしもばっちりだ!」

「え? 何の事ですか?」


 二人の言葉に私が首を傾げると、


「楽しみにしてろよアルクス……!」

「たっぷりお礼をしますからねぇ……!」


 何か怖い感じでにやりと笑われた!

 わ、私何かしたっけ……!?

読了ありがとうございます。


さて、アルクスは何されちゃうんでしょうねぇ……。


次回もよろしくお願いいたします。

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