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初級回復魔法しか使えないようにされた上に追放された法術士の私が、虹の聖女と呼ばれるまでの物語  作者: 衣谷強
黄の章

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第六十七話 強い思い

ポルポラの言葉を受けて、再度タベッラに黄の初級回復魔法を付与した魔吸石の手配を頼もうとするアルクス。

しかし当然一筋縄ではいかないようで……?


どうぞお楽しみください。

「タベッラさん! これ、よろしくお願いします!」

「……おい、これ黄色に光ってるけど、『俊敏』と『鋭敏化』を付与した魔吸石まきゅうせきじゃないだろうな……?」


 私が机に広げた魔吸石まきゅうせきに、目を見開くタベッラさん。

 あれだけ言われたのに作っちゃったから、びっくりしたり怒ったりするのはわかるけど、それで断られちゃうと困る!

 ちゃんと説明して、冒険者組合に渡してもらわないと!


「あのですね! 『俊敏』と『鋭敏化』の付与は確かに負担がありますけど、この緑の初級回復魔法を付与した魔吸石を一緒に使えば、その負担を回復できます!」

「え、あ、そうなのか……」

「合わせてこっちに付与した藍の初級回復魔法を使えば、素早く動いて何かにぶつかった時の怪我も防げます!」

「あ、はい……」

「だからお願いです! 冒険者さん達を助けるために、この魔吸石を冒険者組合に渡してください!」

「……」


 タベッラさんは腕を組んで黙り込んだ。

 そうだよね……。

 副作用の件は解決しても、『俊敏薬』が売れなくなるのは変わらないもんね……。

 ……でも怪物が増えてきている以上、それに対抗しなきゃならないんだ!

 何とか解決策を相談して……!


「……アルクス、何があった?」

「え?」

「お前からただならない覚悟を感じる。前に副作用の話をした時には腰が引けていたのに……」

「……先生から聞いたんです。これから怪物が増えるから、冒険者さん達にこの付与に慣れておいてもらった方がいいって……」

「何?」

「実際ポルポラさんも怪物を討伐する依頼が増えてるって言っていました! だから私は冒険者の人を守るために、町の人を守るために、これを冒険者組合に……!」

「あー、待て。落ち着けアルクス」

「!」


 な、何この声……。

 すごく重たくて硬い声……。

 タベッラさんのこんな声、初めて聞く……!


「成程、アーテルの旦那が言ってた事なら、確かに聞き流すのは難しい。何せ百年以上前に失われたはずの技術を知ってるんだからな」

「えっ!? ひゃ、百年以上前!?」

「魔吸石とそれを使った技術について古い文献を当たってみたら、百二十年前の本に、『古い遺跡から溜めておいた魔術を使ったかまどらしきものを発見』とあった」

「百二十年前の、更に前の時代に、先生が知ってる技術があったって事ですか……?」

「そうなるな。そんな奴が怪物の増加を予言したんだ。冗談と切り捨てられないのはわかる」

「……はい……」


 ど、どういう事……?

 先生は一体何者なの……?

 ただ親切なだけの人じゃないって事……?


「しかし確証もない話で、製薬組合の不利益になる事に、はいそうですかと加担する訳にはいかない」

「……そう、ですよね……」


 知らなかった先生の話を知った事で、私の頭の中はぐしゃぐしゃだ……。

 タベッラさんの言ってる事にも反論の余地はない……。

 この魔吸石は諦めるしか……。


『お前はその人を救いたいって気持ちのまま、法術を使えばいいんだよ』


 ……どうしてだろう?

 今一番私を混乱させてる張本人なのに。

 今一番わけがわからないと思っている人なのに。

 先生の言葉が、私の引こうとする足を許さない!


「だが」

「駄目です! 増えた怪物をやっつけなかったら、他の町との商売とか、あの色々駄目になります!」

「ぅ」

「確かに高い薬が売れなくなったら損すると思いますけど、冒険者さん達が傷付いて買うどころか戦えなくなっちゃったらもっと損します!」

「……」

「だからお願いします! この魔吸石を冒険者組合に渡してください! お願いします!」

「……」


 黙ったままのタベッラさん。

 やっぱりすごい商売人のタベッラさんを動かすにはお金しかない……!

 私の稼いだお金と、これから魔吸石でもらえるお金を全部製薬組合に払ったら、損した分のお金にならないかな……!?


「お、お金なら、私が」

「やめろ馬鹿。これ以上俺を格好悪くするんじゃねぇよ」

「え……?」


 目の前のタベッラさんはにやっと笑っていた……。

 ……ど、どういう事……?


「ったく、ちょっと渋った後に『だが製薬組合は人なしじゃ稼げない。だから怪物共に一泡吹かせてやろうぜ』って決めるつもりだったのによ」

「……え、じゃ、じゃあ今のってお芝居だったんですか!?」


 ひどい!

 真剣に悩んだのに!


「しっかし今までは何も知らない子どもだと思ってたのに、いつの間にそんなに強くなったんだ?」

「強い、ですか……?」

「あぁ、正直気圧された。もうちょいと俺が金に執着があっても、頷かされていただろうな」

「そんな……」


 私の気持ちが、タベッラさんを動かすほどに強く届いた……?


「そんじゃ、この魔吸石を冒険者組合に渡してくるとするかね。また大騒ぎになりそうだがな……」

「よろしくお願いします!」

「やめろやめろ。頭なんか下げんな。俺はもうお前を娘のようだ、なんて思わない」

「え……」

「この町と、それに関わる人間を守る仲間だ」

「仲間……!」


 わ! わ! わ!

 嬉しくて胸の中が熱くなる!

 足に変に力が入って、ばたばたしたくなる!


「だから俺に『お願い』なんてするな。ばしっと任せてくれ!」

「……! わかりました! お任せします!」

「……はっはっは! ったく、しまらねぇなぁ」

「えっ、え!?」


 何か間違えていたのか、タベッラさんは大笑いをして帰って行った。

 何はともあれ、黄の初級回復魔法を付与した魔吸石は、無事冒険者組合に渡った。

 これで先生の言う怪物の増加に対応できたらいいんだけど……。

読了ありがとうございます。


タベッラがいつの間にか良いキャラに育って驚くばかりです。

プロットではちょい役だったのにねぇ……。


次回もよろしくお願いいたします。

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