第六十五話 先生への不満
黄の初級回復魔法の危険性をタベッラから教わったアルクス。
その事でアーテルに不満をぶつけますが……?
どうぞお楽しみください。
「先生!」
「よぉアルクス。何だ血相変えて」
「黄の初級回復魔法の事です! 『俊敏』や『鋭敏化』って使いすぎると危ないって聞いたんですけど!」
「え?」
「すごい付与ですけど、使えないんじゃ仕方がないじゃないですか!」
「いや、ちょっと待て。何の事だ?」
戸惑った様子の先生。
まさか知らないで私に教えたの……!?
「だから黄の初級回復魔法の事ですって! 素早く動いたり動きがゆっくり見えるようにするのは、身体とか頭に負担がかかるって聞いたんですけど」
「そりゃそうだよ。言っただろ俺?」
「え、いや、確かに……。でも多少って言ってませんでした!? タベッラさんに聞いたら最悪廃人になるって……!」
「……あー、まー、そりゃ使い続けりゃそういう事もあるかもなー」
「なら……!」
「そうならないように緑の初級回復魔法を付与した魔吸石を合わせりゃ良いじゃないか」
「……へ?」
……言われてみれば!
身体や頭に負担がかかるなら、治せばいいだけの事だ!
全然思い付かなかった!
「考えもしなかったって感じだな」
「う……、すみません……」
「別に謝る事はないさ。危険性を聞いて、使えるのを控えたんだろ? 新しい付与に舞い上がらず、落ち着いて考えられてるのは悪くない判断だ」
「あ、ありがとうございます……」
ほ、褒められる場面じゃないと思う……。
自分の視野の狭さで先生に見当違いの怒りをぶつけて、叱られもしないなんて逆に辛いよ……。
「前にも言ったが、何でもかんでも俺の言う通りにしようとしなくて良い。おかしいと思ったり不満に思う事は口にして解消するのが一番だ」
「は、はい……」
「だから今回の事はお前の成長と言える。先生として嬉しく思うぞ」
「……ありがとう、ございます……」
うぅー! むずがゆい!
これなら叱られた方がましだよー!
……今後はよく考えて話すようにしよう……。
「付与を使い過ぎる事の危険性は、もうだいぶ理解してるだろ? 『解毒』は毒素の排出、『体力回復』は多用による過労、『再生』は身体の元の不足……」
「はい……」
「『硬化』を使い続けて『攻撃を受けても問題ない』と思い込んだら技の切れは下がるし、『魔力注入』は魔力持ちを増やす。……これは俺は危険とは思わないが」
「いえ、危険だと思います……」
だからこそ私の治療も付与した魔吸石も、変に使われないように内緒にしたり管理してもらったりしてるんだ……。
危険性があって当たり前。
それを忘れて私は……!
「それがちゃんとわかってれば問題ないさ。『俊敏』と『鋭敏化』もうまく使ってやってくれ」
「は、はい……」
そう言う先生に、気にした様子は全くない。
それでも先生に怒ったのは間違いだと思う。
改めてちゃんと謝らないと!
「……あの、せん」
「これから怪物の量が増えるだろうからなー。今のうちに冒険者には慣れといてもらった方が良いぞー?」
「え……?」
突然の怖い話に息が詰まる……!
な、何でそんな事がわかるんだろう……?
雲一つない夜空を見て「明日は晴れるな」って言うくらいの気軽さで、でも自信ある感じ……!
「よし、魔力も腕輪も問題なし。じゃあまた明日なー」
「……はい……」
私は混乱したまま、いつも通りに立ち去る先生を見送る事しかできなかった……。
読了ありがとうございます。
さて何が起きるのやら……。
次回もよろしくお願いいたします。




