第五十六話 魔力かまどの威力
火炎系魔術を付与した魔吸石で、魔力かまどを作ってもらったアルクス。
その効果は思っていた以上のようで……?
どうぞお楽しみください。
「さて! じゃあ魔力かまど料理のお披露目といこうかねぇ!」
「よろしくお願いします!」
「楽しみです」
「納品して三日でお披露目とは、もう魔力かまどを使いこなしているのか……。やはりアルクスの周りは……」
アウラン食堂の女将さんが魔力かまどの前で胸を張る。
試食係は私とロセウスさんとタベッラさんだ。
何かタベッラさんがまた失礼っぽい事を言ってるけど、そんな事より試食だ!
「何を焼くんですか!?」
「鶏肉さ。かまどに慣れるまでのお試しと思っていたけど、なかなかの仕上がりになったからね」
そう言うと女将さんが、魔力かまどの横のつまみを下す。
職人さんが色々工夫してくれて、直接魔吸石に触れなくても発動できる仕組みになっているそうだ。
一抱えくらいの大きさの魔力かまどが、まるで焚き火の近くのような熱を持つ。
「良さそうだね! じゃあいくよ!」
女将さんが魔力かまどの扉を開き、鶏肉を中に入れた。
扉を閉めて少し待つと、美味しそうな匂いが漂い始めた。
「……よし! ここで火種を切って、と」
女将さんが真剣な顔でつまみを戻した。
もうできたの!? 早い!
「女将さん、もう食べれるんですか!?」
「いや、このまま残り火で中まで焼くのさ。そうすれば表面が焼けた状態で蒸し焼きになるから、肉の美味しさを閉じ込めたまま焼き上げる事ができるのさ」
「そうなんですね!」
「表面を焼いてから鉄の器に入れて火に入れるって面倒な料理法は、貴族がたまにやるとは聞いてたけどねぇ。こいつなら一つでそいつができちまう!」
「き、貴族……!」
じゃあこの鶏肉の味は……!
「最後にもう一度火を入れて……!」
「……わぁ……!」
もう一度女将さんがつまみを下ろした。
香ばしい香りが広がる……!
「さぁ、できたよ!」
「わぁ……!」
「おぉ……!」
「こいつは、すごいな……」
表面はしっかり焼き目がついて、女将さんの包丁を受けてばりって音がした!
切られたお肉からは水みたいに肉汁が流れる!
そして鼻をくすぐるこの匂い……!
絶対美味しいやつだ!
「いただきます!」
切り分けられた鶏肉をフォークで刺して口に運ぶ。
「んん〜っ!」
美味しい! 熱い! 美味しい!
噛んだ瞬間に甘い肉汁がぶわって口の中に広がった!
熱いけどそれ以上に美味しさが勝る!
そして柔らかいのに歯応えもしっかりあって、一口目なのにすごい満足感……!
そして美味しさを残して喉の奥へと消えていくお肉……!
幸せ……!
「女将さん! 最高です!」
「だろぉ? この焼き加減なら、王都の料理人にだって負けやしないさ!」
「本当に美味しいです……! こんな美味しい鶏肉、初めて食べました……!」
「あちこち旅する冒険者がそう言うなら、あたしの腕も本物だねぇ!」
「……本当に美味い……! なぁ女将さん、この調理法を売ってくれないか……? 魔力かまどと合わせれば、飛ぶように売れる……!」
「あぁ、構わないよ。きっと使ってるうちに誰かが思い付く焼き方だろうからねぇ」
皆大絶賛だ。
そりゃそうだよね!
こんなに美味しいんだもん!
「さ、もう一枚焼くからどんどん食べとくれ! 次のは少し辛めの味付けにしてみたんだよ!」
「わぁい! いただきます!」
わ! 辛い!
……でも中から出る肉汁の甘さと絡まって、めちゃくちゃ美味しい!
「僕辛いの苦手なんですけど、これは美味しいです……!」
「こ、このタレの作り方も……! いや、それは店の秘伝だな……」
こうして魔力かまどは大成功!
次はお店で食べようっと!
「……これなら釣り合うかな……」
? ロセウスさんが何か呟いた?
何だかすごく真剣な顔をしていたけど……?
読了ありがとうございます。
三日で極上の焼き加減を見つける辺り、女将さんも大概チート。
さて、ロセウスの決意とは……?
次回もよろしくお願いいたします。




