表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初級回復魔法しか使えないようにされた上に追放された法術士の私が、虹の聖女と呼ばれるまでの物語  作者: 衣谷強
紫の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/113

第五十四話 魔術の付与

アーテルが魔術の付与を教える事をロセウスに伝えるアルクス。

果たして付与はうまくいくのでしょうか?


どうぞお楽しみください。

「あの、ロセウスさん」

「は、はい。何ですかアルクスさん?」


 私はお仕事の合間、救護院の廊下で会ったロセウスさんを呼び止める。

 取り込んだ洗濯物を持っているから、急ぎのお仕事はないはず。

 手短に話せば大丈夫だろう。


「今日のお仕事の後にお時間もらえますか?」

「えぇっ!?」


 何でそんなに驚くんだろう……?

 目を逸らして顔もちょっと赤い……?


「え、えっと、な、何の御用でございましょうかっ?」


 口調も何かおかしい……。


「あの、先生がロセウスさんに魔吸石まきゅうせきへの付与を教えたいって言ってて……」

「あ……、そうですか……。はは……」


 あ、元に戻った。

 ちょっとがっかりしてる……?

 何だろう?


「それにしても付与ですか……。僕、前に失敗してるから、何だか怖いな、はは……」

「大丈夫ですよ! 先生は教えるのすっごい上手ですから! それに覚えられたら、美味しいお肉が……」

「美味しいお肉?」


 あ、しまった!

 つい柔らかいお肉の事が頭に……!


「……えっと、あの、沢山の人の役に立てると思いますし、救護院も助かると思います!」

「え!? ふ、付与を覚えたら、僕救護院で働けるんですか!?」

「え? は、はい」


 わ、すごい勢い。

 先生の言う通り、本当に救護院で働きたいんだなぁ。

 ……そうか、ルームスのせいで冒険者のお仕事によくない印象がついちゃってるのかもしれない。

 まったくルームスはろくな事をしない!


「今タベッラさんっていう製薬組合の人のおかげで、魔吸石の付与は救護院のお仕事になってますから」

「そっかぁ……! なら何が何でも覚えられるように頑張ります!」

「はい! 頑張りましょう!」


 やっぱり先生はすごいな。

 きっとロセウスさんの様子から、冒険者のお仕事に前向きになれてないのに気付いたんだろう。

 それで付与を教えようと言ってくれたんだろうなぁ。

 私の時と同じように、選択肢を増やすために……。

 これで救護院でも冒険者でも働けるってなれば、気持ちの余裕もできるもんね!


「じゃあまたお仕事終わりに!」

「はい! よろしくお願いします!」


 そう言うと私は自分のお仕事に戻った。

 あぁ、夕方が楽しみだなぁ。




「よぉアルクス」

「先生! お疲れ様です!」

「ど、どうも……」

「お、少年。都合は大丈夫みたいだなー。で、どこでやる?」

「ウィンクトゥーラさんにお願いして、部屋と魔吸石、用意してあります!」

「よしよし。じゃあ案内してくれ」

「はい!」


 先生とロセウスさんとの三人で、お願いしていた部屋へと向かう。


「あ、あの、本当に僕、付与できますかね……?」

「ん? まぁやる気次第じゃないかー?」

「……はぁ……」


 先生の軽い感じに、少し不安そうなロセウスさん。

 こういう時、「お前ならできるさ!」みたいな事を言ってくれてもいいのに。

 ……先生がにっこり笑って、「お前ならできるさ!」……?


「ぶふっ!」

「え、あ、アルクスさん?」

「どうした? 思い出し笑いか?」

「……い、いえ、何でもないです……!」


 ……駄目だ! 想像したら面白すぎる……!

 やっぱり今のままがいいって事かな……。


「こちらです!」

「よーし、じゃあ少年。座って一個魔吸石を持ってみな」

「は、はい」


 椅子に座ったロセウスさんが、机の上の魔吸石を手に取る。

 私は横の席に座ってその様子を眺める。


「さて、始まる前に問題だ。魔術とは何だ?」

「え? あ、えっと、ま、魔力を世界の様々な現象に転換する事、です」

「まぁ正解だ。では魔術と法術の違いは何だ?」

「えっと……、攻撃するか、回復するか、ですか?」

「間違ってはいないが正しくもないな。魔術は魔力を事象に変換してから放つ。法術は魔力として対象の中に入ってから効果を発揮する」


 え、そうなんだ。

 私も魔術が攻撃で、法術が回復だと思ってた。


「だが身体の表面の傷を治す初級回復魔法は、体内に入る前に効果を発揮する。だから法術の括りではあるが、魔法と呼ぶんだ」

「へぇ……」

「知りませんでした……」


 本当に先生は色々な事を知っている。

 ……何でこんなに詳しいんだろう……?


「さて、そこで付与の話だが、今ので法術の方が魔吸石への付与がやりやすいのはわかったな?」

「はい……」

「だが初級回復魔法の話でわかる通り、魔術と法術の境界は実は曖昧だ。魔力を流し込んでから発動させる形を想像できれば、すぐに覚えられるだろう」

「わかりました。やってみます……」


 手のひらの魔吸石を見つめて、じっと集中するロセウスさん。


「遍く世界を渡る息吹よ……。その軽やかな羽で我らに清涼を与えたまえ……。『涼風』」


 ……あ! 魔吸石が黄緑色に光り始めた!


「よし上出来だ」

「これで付与できたんですか?」

「あぁ、使ってみろ。初級回復魔法の付与の時と同じで、魔吸石の中心辺りを軽く押すんだ」

「ど、どうぞ……」

「では……」


 ロセウスさんから受け取った魔吸石の真ん中をきゅっと押してみる。


「わ……!」


 涼しい風が吹き出してきた……!

 気持ちいい……!


「要領はわかったか?」

「はい! ありがとうございます!」


 癒される……。


「ただお前さんはアルクスと違って魔力は有限だ。アルクスの紫の初級回復魔法で補給はできるが、あまり無理をしないようにな」

「わかりました!」


 今の時期だともう少しあったかかったら最高だなぁ……。


「……アルクス、いつまで風浴びてんだ。めろ止めろ」

「あ! すみません!」


 もう一度握ると風が止まった。

 いやー、これいいなぁ。

 夏の暑い時期に使いたい。

 あと髪の毛乾かす時にも!

 ……魔力は補充するから作ってくれないかなぁ。

読了ありがとうございます。


風を自在に出せるなら、それだけで動力に凄まじい革命が起きるはずですが、アルクスにはそんな事思いつきません。

タベッラはこの幸運をどう活かすのか……。


次回もよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 現代現実世界なら思いつくことも昔やファンタジー世界では難しいのでしょう。 アルクスがポンコツだとか思ってませんよ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ