第五十話 ロセウスの事情
ルームスのところを追放されたという魔術士ロセウスを信じる事にしたアルクス。
その事情は意外なもので……?
どうぞお楽しみください。
「さてロセウス。事情を聞かせてもらおうか」
「……はい」
救護院の応接室で、私とポルポラさんはロセウスさんから話を聞く事にした。
本当は開院準備をする時間だったけど、ウィンクトゥーラさんや救護院の他の人達が引き受けてくれた。
ありがとうございます!
「……あの、魔吸石って知ってますか……?」
「っ」
「あぁ。最近冒険者組合で貸し出してる、法術が使えるものだな。それがどうした?」
あ、危ない危ない……。
ポルポラさんが答えてくれなかったら、私は動揺して変な声を上げてしまった事だろう。
気を付けないと……。
「それにルームスさんが目を付けて、『使い切ったこの石に魔術を込めたら、僕に相応しい武器が作れる』って言って、僕に付与をするよう言ってきたんです……」
!
冒険者組合に魔吸石を返さなかったのはルームスだったんだ!
むー! あいつに使われてるの何かやだなぁ!
「でも何度やっても上手くいかなくて、『できるまでやりたまえ』って言われて、毎日のように催促と嫌味が続いて……」
「……酷いな」
膝に置いたロセウスさんの手が震えてる……。
本当にひどい!
ルームスは人を何だと思ってるんだろう!
「……それで、あの、数日前から、その、ま、魔術が使えなくなって……」
「え、そんな事あるのか?」
「ぼ、僕も経験した事がなくて……。疲れからくる一時的なものかと思って休んだりもしたんですが、全然魔力が感じられなくて……」
そ、それってもしかして……。
「それをルームスさんに話したら、『なら君は要らない』って言われて追放されたんです……」
「……成程な。それで他の冒険者のところにも行かなかったのか」
「はい……」
「すまなかった……!」
「えっ!?」
ポルポラさんが深々と頭を下げた。
ロセウスさんが驚いて、椅子から腰を浮かせる。
「知らなかったとは言え、追い討ちをかけるような真似をしてしまった。本当にすまない……!」
「い、いいんです! 僕も魔術が使えなくなった事、恥ずかしくて言えなくて……。だから頭を上げてください……!」
「……わかった。ありがとう」
「い、いえ、こちらこそ……」
ふっと空気が緩んだ。
これなら話しても大丈夫かな?
「あの、ロセウスさん。また魔術が使えるようになりたいですか?」
「も、勿論です! 救護院なら何か知ってる人がいるかもと思って……! キュープラムに来たのは、アルゲントゥムで知られると冒険者登録を消されそうで……」
魔術が使えなくなった事を知られたらそうなっちゃうよね。
私も初級回復魔法しか使えない事、ウィンクトゥーラさんじゃなかったら言えなかったかもしれなかったから、その気持ち、わかる。
「……それにここならアルクスさんもポルポラさんもいるので、もしもう魔術が使えなくなっても、その、お仕事を紹介してもらったりできないかなって……」
「そういう事だったのか」
「あの、僕魔術士だったので力は自信ないですけど、一人暮らしで家の仕事とかもできるので、何かそういう仕事があれば一生懸命頑張りますので……!」
でもまだ諦めるのは早いよロセウスさん!
「……わかりました。そしたら今日救護院のお仕事が終わった後、時間もらえますか?」
「何だアルクス。何か仕事の心当たりでもあるのか?」
「いえ、お仕事じゃなくて……。今先生から次の付与は『魔力注入』だって聞いてるんです。それには魔力のない人の協力が必要だそうなんです」
「! そ、それは魔力が戻るんですか!?」
勢い込むロセウスさんに私は頷く。
「魔力のない人が魔術や法術を使えるようになるそうなので、多分……。ただ元のように魔術が使えるっていう保証はないんですけど……」
「構いません! このまま何もできないままより、可能性がある方に挑戦したいです! 協力でも何でもしますから、よろしくお願いします!」
真剣な言葉……!
これなら上手くいく気がする。
「わかりました! ではまずはお仕事してきます!」
「よーし。あたしも荷物運びとか洗濯とか手伝ってくるかなー」
「あの! 僕にも手伝わせてください! 何でもしますから!」
「助かります! よろしくお願いします!」
「そしたらあたしの手伝いをしてもらおうかな!」
「はい!」
ロセウスさんの元気な声に、私もやる気が湧いてきた!
今日もお仕事をしっかりこなして、終わったら『魔力注入』の修行だ!
頑張るぞ!
読了ありがとうございます。
また馬鹿か壊れるなぁ。
今ひとつお仕置きが足りない様子ですね(にっこり)。
次回もよろしくお願いいたします。




