第五話 青の初級回復魔法
初級回復魔法に『青』の力を乗せるやり方を覚えたアルクス。
いざ実践となりましたが……?
どうぞお楽しみください。
「さぁ、着いたぞ。修行の成果を見せてやれ!」
はーい!
よーし新しい力のお披露目!
心機一転頑張るぞー!
「って! ここいつもの救護院じゃないですか先生!」
私の渾身の指摘に、先生は目をぱちくり。
いや、仮面してるからそれっぽい雰囲気がするってだけだけど!
「だってここ以上に患者が来る場所なんかないだろ」
「確かに患者さんは来ますけど、毒に侵された人なんか滅多に来ませんよ! 蛇に噛まれたとか蜂に刺されたなんていうのは年に数回で……!」
「あー、説明が悪かったな。お前の『解毒』は別に毒だけに使えるわけじゃない」
「へ?」
『解毒』が毒以外に効くって事?
でも何に使えるんだろう……?
「一般的な『解毒』の法術は、『身体の中の毒に抵抗している部分を温度で感知して分解する』という効果になっている」
「はぁ……。それと私の青い初級回復魔法は違うんですか?」
「あぁ。お前の場合は、小さな傷を回復した後、つまり役目を果たして形を失った魔力に水の特性が乗っている」
「水?」
「そ。そして身体の中で熱を持つ部分に作用し、その原因を洗い流すんだ」
「はぁ……」
それってさっきの『解毒』と何が違うんだろう?
分解ってより何か効果が弱い印象さえあるんだけど……。
「これは身体の外から入ってきた、極々小さな病気の元にも効く。つまり病気を治せるんだ」
「えっ!?」
病気を治せる法術なんて聞いた事ない!
病気は薬で治すしかないと思ってた!
それが本当ならすごい力!
「まぁ勿論全ての病気を治せるわけじゃない。ただ一般的な風邪やら食あたりやらには効果抜群だ」
「救護院に来る患者さんの半分近くがそういう病気ですから、すごく喜ばれると思います!」
よし! そうしたら早速試してみよう!
今日はお休みをもらっていたけど、この話をしたらきっと働ける!
そして皆から感謝されて……!
「あぁ待て待て。その前に一つ言っておかないといけない事がある」
「は、はい?」
もう! 折角やる気になってるのに……!
でも副作用とかあるのかな?
それならちゃんと聞いておかないと……。
「病気の元を水のように洗い流す、という事で、これで治す時には文字通り湯水のように魔力を注ぎ込まないといけない」
「あ、一回かけただけじゃ治らないって事ですね」
「そうだ。まぁ魔力については『専魔の腕輪』が周囲から取り込んでくれるので問題ないんだが……」
何だろう?
連続して初級回復魔法を使い続けるのなんて、ルームス様に散々やらされてるから今更どうって事はないんだけどな。
「大量の青の魔力で押し流された毒や病気の元は、身体の外に出さないと再び身体を傷つける。これはわかるな?」
「はい、そうですよね?」
改まって何の確認だろう。
だから風邪とか腹痛の時は、白湯とかお茶とかを沢山飲むよう勧めてるんだよね。
……あ!
「つまりだ。お前の魔力で治療した場合……」
続いた先生の言葉に、私の顔は新たに得た力のように青くなっていくのを感じた……。
読了ありがとうございます。
毒素や老廃物を物理的に排出する方法と言えば……。
次話もよろしくお願いいたします。