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初級回復魔法しか使えないようにされた上に追放された法術士の私が、虹の聖女と呼ばれるまでの物語  作者: 衣谷強
紫の章

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第四十九話 縋られて 姿重ねて

相次ぐ魔吸石まきゅうせきの未返還に、タベッラから警戒するよう言われたアルクス。

ポルポラが護衛について一安心かと思いきや……?


どうぞお楽しみください。

「おはようアルクス! 今日も元気か!?」

「おはようございます!」


 ポルポラさんがお迎えに来てくれるようになって三日。

 おかげで私は安心して救護院に通えている。

 怪物をやっつけたり、珍しいものを探してきたりする冒険者のお仕事の邪魔になっていないか心配したけど、


「何言ってんだ? 護衛だって冒険者の仕事の一つだ! ちゃんと給料も出るし、毎日アルクスとトゥーラねぇに会えるし、いい事づくめだ」


 と言ってくれた。

 冒険者組合に魔吸石まきゅうせきを返さない人の事で少し不安はあるけど、ポルポラさんがいてくれたら安心だよね!

 後はタベッラさんが調査してくれてる結果を待てば……。


「止まれアルクス」

「へ?」


 ポルポラさんの言葉に足を止めて視線の先を追うと、


「ロセウスさん!?」

「……ポルポラさん、アルクスさん……」


 そこには疲れ切った様子のロセウスさんがいた。

 慌てて周りを見回すけど、ルームスはいないみたい……。

 一人で来たのかな……?


「何をしに来たロセウス」

「あの、僕、ルームスさんから追い出されて……」

「え……!」

「ほう、何故だ」

「……ルームスさん、ポルポラさんに負けた後すごく荒れて、無茶な事をさせられて、できないと延々と嫌味を聞かされて、最後はいらないから出て行けと……」

「……!」


 私と一緒……!


「それで何故ここに来た?」

「……その、行く当てがなくて……」


 うつむくロセウスさん。

 ……そうだよね、辛いよね……。

 私に何かできる事はないかな……?


「本当か?」

「え?」

「本当にお前はルームスから追放されたのか?」

「な、何を言っているんですか……?」

「アルクスやあたしに近づくために、ルームスに一芝居打つよう言われたんじゃないか?」


 ……!

 そんな……!

 追放されたって、嘘なの……?

 私やポルポラさんを騙そうとしたの……?

 いや、ロセウスさんがそんな事するはずが……!


「ち、違います! 僕は本当に……!」

「不自然じゃないかロセウス。お前は優秀な魔術士だ。様々な属性の魔術を使いこなし、戦力として認められていたはずだ。それが簡単に追放されるものか?」

「え!? ……いや、それは……」

「たとえルームスのところを追放されたとしても、他の冒険者の仲間になる事だってできるはずだ。それをしないで大した後ろ盾もないあたし達の所に来るか?」

「……う……、それは……」

「隠し事があるようだな。それで信用しろと言うのは無理があるんじゃないか?」

「……その……、いえ……」


 何かを言いたそうにして、ロセウスさんは黙ってしまった。

 ……私達に隠してる事がある……?

 それはお芝居だから……?

 それとも……?


「……そうですね。信じてもらえなくても仕方ないです……。すみません、お騒がせしました……」

「ま、待って!」

「アルクス!?」


 気が付けば私はロセウスさんの袖を掴んでいた。

 剣に手をかけたポルポラさんが叫ぶ。


「何をしてるんだアルクス! 今言った通り、ロセウスは何かを隠している! それがお前を傷付ける事だったら」

「それでもいいです!」

「は!?」

「アルクス、さん……?」


 私は戸惑う二人をよそに、橙の初級回復魔法をかける。

 顔色がよくなったロセウスさんが、私をぼうっとした顔で見つめてくる。


「私はルームスに追放された時、絶望してました! でもポルポラさんとウィンクトゥーラさんに元気をもらって、もう一度頑張ろうって思ったんです!」

「アルクスさん……」

「アルクス、お前……」

「私と同じように傷付いたロセウスさんを見捨てたら、私ポルポラさんとウィンクトゥーラさんに顔向けできません! そうなるくらいなら傷付く方がましです!」

「あるぐずざん……!」

「ったく……!」


 ポルポラさんが剣から手を離し、自分の頭を乱暴に掻いた。


「……ったく、これじゃあたしが悪者じゃないか」

「そ、そんなつもりじゃないです!」

「冗談だよ。……アルクスに免じてあたしもあんたを信じるよロセウス」

「……あ、あぢがどゔございまず……!」


 泣きながら頭を下げるロセウスさん。

 その姿に嘘はないように思えた。

 よかった、追放されたロセウスさんを一人にしなくてすんだ……。


「ただし」

「あだっ!?」


 ポルポラさんの手刀が頭に落ちる!

 結構強めだったから痛い!


「やっぱり『硬化』かけてなかったな!? 最低限身を守れる状況でやらなかったら、それはただの自傷行為だからな!」

「ご、ごめんなさい!」


 しまった! 先生にも注意されていたのに!


「前から思っていたが、アルクスは自分の事を二の次にしすぎだ! もっと自分を大切にしろ!」

「はい!」

「トゥーラ姉からも聞いてるぞ!? 毎日仕事して、休みに修行して、ちゃんと休んでる日がないんじゃないかって!」

「あ、それは、その……」

「アルクスに何かあったら、あたしとトゥーラ姉は仕事も何も放り出しても助けに行くからな!」

「そ、そんな……!」

「嫌ならちゃんと自分の身を自分で守れ!」

「はいっ!」


 ポルポラさんの言葉は厳しくもあったかい感じがした。

 ありがとうポルポラさん……!

読了ありがとうございます。


ちなみにルームスの仲間だった時に、後衛職でアルクスの面倒を何かと見ていたのはロセウスでした。

ロセウスには歳の離れた兄と二人の妹がいるのですが、両妹がロセウスにめちゃくちゃ当たりが強いので、仲間の中で最年少かつ素直で真っ直ぐなアルクスは、守るべき存在として映ったのです。

それがここでロセウスを救いました。

情けは人のためならず。


次回もよろしくお願いいたします。

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