第四十七話 魔力持ちの苦悩
アーテルから『魔力注入』の付与を得るためには、魔力のない人間を魔力持ちにする必要があると聞かされたアルクス。
他人の人生を大きく変えかねない修行内容に、アルクスは……?
どうぞお楽しみください。
「あの、女将さんって魔法使ってみたいと思った事ありますか?」
「んー、かまどに火を入れる時に魔法がありゃ楽かなって思ったりはするけど、そんくらいだね!」
「はは、そうですよね……」
「カルクルムさんは、魔法使えたらいいなって思った事ありますか?」
「ありませんね。私は会計士の仕事に誇りを持っていますから。……もっとも橙の初級回復魔法に癒された時に、法術士の素晴らしさを知ったのも事実ですが……」
「あはは、ありがとうございます……」
「ポルポラさん! 冒険者って剣と魔法の両方使える人っていたりしません!?」
「あー? まぁいない訳じゃないけど、戦ってる最中に両方やるのはまず無理だ。だから魔術も法術も、専門の術士がやるのが普通だな」
「で、ですよね……」
「あ、でも今はアルクスの魔吸石があるからな! 法術が戦闘中に誰でも使えるのは大きい! 相当楽になったぞ!」
「あ、ありがとうございます……!」
「あの、タベッラさん……。魔法使いたいなーなんて思ったりは……」
「……おい。まさかとは思うが、人を魔力持ちにできる付与とかあるんじゃないだろうな?」
「は、はは、ま、まさか……。聞いてみただけですよ……。じゃ!」
駄目だー!
他にも町の人の何人かに聞いてみたりしたけど、誰も魔力を持ちたいとは思ってない!
やっぱり今の生活が大きく変わる上に、今よりよくなる保証もなければと思ったら、ね……。
「アルクスちゃん、何か困ってる事あるなら言ってね? 相談に乗るから」
「ありがとうございます、ウィンクトゥーラさん……」
ウィンクトゥーラさんが私の顔を見て、優しい言葉をかけてくれる。
……これ、相談していいのかな……?
アルブム教では、人を癒す法術は聖なる神アルブム様から与えられたものであると教えている。
それを私が魔力をあげられるってわかったら、何か大変な事になるかも……!
……いや、ウィンクトゥーラさんならわかってくれると思う!
心配だけさせて自分で抱え込んじゃ駄目だ!
「あの、驚かないで聞いてくださいね?」
「えぇ」
「実は先生から、次の付与は『魔力注入』だって言われてで……」
「は?」
「そのためには魔力のない人に魔力を注ぐ修行が必要で……」
「え?」
「そうするとその人は魔力持ちになっちゃうそうで、どうしたらいいかなって……」
「ま、待って待って! ちょっと整理させて!」
「……はい……」
すごい難しい顔して考えてる……。
そうだよね……。
ウィンクトゥーラさんには、アルブム教の修道女としての立場もある。
そう簡単に受け入れられないよね……。
「……あの、アルクスちゃん。その修行の相手って生まれつき魔力がない人じゃないと駄目なのかしら……?」
「え? あ……!」
そうか! 魔力切れ!
元々魔力を持っていた人なら、受け入れてくれるかも!
その人が魔法をまた使いたいと思ってくれたら、だけど……。
「アルブム様から選ばれていない人に魔力を与えるのは、修道女として頷けないわ。でも人のために尽くした結果、魔力を失ってしまった人になら……」
「わかりました! 先生に聞いてみます!」
「それで良ければ、他の救護院に魔力切れの患者さんが相談に来ていないか聞いたりできるわ。その患者さんが協力してくれるかは、聞いてみないとだけど……」
「魔力切れの患者さんって、結構いるんですか?」
「そうねぇ……。救護院全体でも年に一人いるかいないかね。治療できる訳じゃないから、他の仕事を紹介するくらいしかできないけど……」
う、少ない……。
でもいない訳じゃない!
まずは先生に確認して、それでよければ探してもらおう!
「……アルクスちゃん」
「はい?」
「もしその『魔力注入』ができるようになったら、救護院は大きく変わるわ。魔力切れを気にしないで治療ができるようになれば、救える命が確実に増える」
「!」
そうだ!
私の魔力切れの事ばかり考えていたけど、『魔力注入』ができるようになれば、一日一回とかの制限がある高位の法術も、もっと使えるようになる!
そうしたら手遅れになる人も減って、沢山の人が助かるんだ!
「だから応援するわ! 頑張って!」
「はい!」
やっぱり話してよかった!
ウィンクトゥーラさんの後押しを得た私は、『魔力注入』の習得にやる気を燃え上がらせるのだった……!
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ボクと契約して魔法(殴
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