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初級回復魔法しか使えないようにされた上に追放された法術士の私が、虹の聖女と呼ばれるまでの物語  作者: 衣谷強
紫の章

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第四十六話 この国の魔力事情

新章になります。


魔吸石まきゅうせきへの付与も軌道に乗り始め、充実を感じるアルクス。

新たな修行へのきざはしも見えますが……?


どうぞお楽しみください。

「お疲れ様、アルクスちゃん。今日はもうおしまいにしましょう」

「はい!」


 魔吸石まきゅうせきの契約から半月。

 私は忙しいながらも充実した日々を送っていた。

 救護院で治療をしながら、魔吸石への付与をする。

 付与した魔吸石は冒険者組合に渡して、そこから冒険者さん達に貸し出される。

 付与を使い切って効果がなくなった魔吸石はまた戻されるので、新しい付与の石と交換していく。

 『専魔の腕輪』のおかげで付与するのは全然疲れないし、時間もそんなにかからない。

 ふぅ、人の役に立てるって嬉しいなぁ。


「おうアルクス」

「先生!」


 これも全部先生のおかげだよね。

 魔吸石のお金が入ったら、お礼をしないとね。

 ……牛肉……!

 それまでには覚悟を決めないと……!


「よし、今日も魔力と『専魔の腕輪』に問題はないな」

「そう言えば先生、何で毎日私の魔力とか『専魔の腕輪』を確認してくれるんですか?」

「あれ? お前『魔力切れ』を知らないのか?」

「魔力切れ、ですか?」


 聞いた事があるような、ないような……。


「魔力ってのは、基本休めば回復する。だが完全になくなると魔力を生み出す事ができなくなる」

「あー、聞いた事があります。だから必ず少しは残して休むようにって教わりました」


 『専魔の腕輪』をつけてからは自分の魔力をほとんど使わないから、忘れかけてた。


「それだ。まぁ財布の中身を小銭も残さず、ぴったり空になるよう使い切るようなもんだ。よっぽど無茶な使い方でもしないとならないが、お前の場合はなぁ……」

「え?」

「『専魔の腕輪』に不具合があっても、今まで通りに働こうとするだろう? だから何かと目が離せないんだよなぁ」

「う……、ご心配おかけします……」


 そんな事ない!と言えない自分が悲しい……。


「『専魔の腕輪』だって絶対に壊れない訳じゃない。違和感を覚えたらすぐに言えよ」

「わかりました!」

「お前の返事の良さは若干信用ならないんだよなぁ……」

「そ、そんな事ないですよ!」

「院長と会計士の旦那の時に、俺の忠告を無視したのは誰だっけ?」

「う……、こ、今度は大丈夫です! ちゃんと言う事聞きますって!」


 言う事聞かないなら教えないとか言われたら困る!

 必死に先生の顔を見つめると、先生が呆れたように息を吐いた。

 駄目、かな……?


「あたっ!?」


 頭を手刀で軽く叩かれた!

 見上げると先生の口元が笑ってる!?


「あの時はお前の判断の方が正しかったじゃないか。何でもかんでも俺の考えが正しいとは限らない」

「え……」

「俺はお前に色々教えはするが、絶対それに従えって事じゃない。製薬の支部長を見極めたみたいに、お前自身の考えや判断で決める事がこの先必要になるからな」

「じゃあ……!」

「ただし、自分の身体や技術や財産を安易に浪費しない事だ。それさえ守れば、俺の教えた事は参考程度で構わない」

「先生……!」


 やっぱり先生はすごいや。

 私の考えや思いもちゃんと考えてくれる。

 だからこそ信じて教わりたくなるのかもなぁ。


「あ、そうだ。万が一に備えて、『魔力注入』の付与を教えておくか」

「あ、そんなのあるって言ってましたね!」

「あぁ。それを魔吸石に入れておけば、万が一があっても魔力を復活できる」

「わかりました!」


 備えあれば憂いなし、ってやつだよね!

 そうとわかれば次のお休みは修行だ!


「さて、そしたらアルクス、お前の周りで魔法を使えるようになりたい奴とかいる?」

「え? いや、聞いた事ないですけど……」

「え、そうなの?」


 魔力を持って生まれてくる人の数は少ない。

 だからこの国では魔力を持っている事がわかったら、沢山の適性検査を受けさせられた後、魔術師か法術士かになる事が定められている。

 さも選ばれた存在のように言われてはいるけど、現実はそんなに甘くない。

 魔力が『ある』事しか注目されないので、その量が少なかったり適性が希望と違っていたりすると大変だ。

 私も魔力はそんなに多くなかったし……。

 お金持ちの人は、こっそり検査官の人にお金を渡して、自分の身内が魔力検査を受けないで済むようにしたりするらしい。

 だからなりたい人なんかいないんじゃないかなぁ……。


「じゃ、魔法を使いたいって奴が見つかったら修行をするからな」

「へ?」

「『魔力注入』の付与には、魔力を持たない人間が必要なんだよ」

「え、それって……」


 ……魔力を持たない人で、魔法を使えるようになりたい人を探せって事は……。


「……その、修行に付き合ってくれた人って、もしかして魔力持ちになったりします……?」

「お、正解。今日は冴えてるじゃないか」

「えええぇぇぇ!?」

「な、何でそんなに驚くんだ!?」


 とんでもない課題に、私は思わず叫び声を上げるのだった……。

読了ありがとうございます。


半端にあるよりない方がまし。

それがこの国での魔力の扱いです。

魔力量や適性が高ければ花形の仕事に就けますが、そうでないと悲惨。

適性あるからってヒトの形した決戦兵器に乗るのが確定するようなもんです。


次回もよろしくお願いいたします。

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