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初級回復魔法しか使えないようにされた上に追放された法術士の私が、虹の聖女と呼ばれるまでの物語  作者: 衣谷強
藍の章

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第四十五話 結ばれた契約

お待たせしました。


製薬組合の支部長タベッラに、魔吸石まきゅうせきを安全に販売するための交渉を任せたアルクス。

さてその結果は……?


どうぞお楽しみください。

「とりあえず一通りの手続きは終えてきた……」

「あ、ありがとうございます!」


 疲れた様子のタベッラさんが、私の前に書類を広げる。

 ウィンクトゥーラさんとポルポラさん、カルクルムさんと先生、そして私の五人でその書類を手分けして読む。


「まさかラーウス司祭様のご許可をいただけるなんて……! これでアルクスちゃんが救護院の仕事として魔吸石まきゅうせきの付与ができるわ……!」

「冒険者組合は魔吸石を、冒険者に有料で貸し出す制度にした訳か。これならあたし達が強い怪物と対峙する時や、新人が新しい依頼に挑戦する時も安心だな!」

「ふむ、魔吸石の契約は『貸与』ですか。確かに効果を使い切ってしまったら、再度アルクスさんに込め直してもらわないといけない訳ですから、妥当ですね」

「採掘組合との交渉も、当初屑石と扱っていた事をうまく使ったようですねー。随分仕入れ値を抑えられて、これなら結構利益が出るんじゃないですかー?」

「製薬組合さんとは、薬の売り上げの代わりに魔吸石の利益の一部を払う事と、普通の人に売らない事が約束ですね! わかりました!」

「これで何とか安心かな……」


 疲れた顔で、でもにっこり笑うタベッラさん。

 やり切ったって感じの笑顔。

 こんなに頑張ってもらったんだから、何かお返ししないと……。


「それにしてもタベッラさん、あなたの取り分の記載がどこにもありませんが、これはどういう事ですか?」

「え?」


 カルクルムさんが眼鏡を押し上げた。

 と、取り分の記載がないってどういう事……?

 タベッラさんとか色んな組合の人にどれだけ利益を分けるかはお任せするって言ったのに!

 それじゃあただ働きになっちゃうんじゃ……!


「アルクスの『できるだけ安くして、冒険者が気軽に使えるように』って願いを実現するためには、俺の取り分をなしにするのが一番交渉しやすかったからな」

「そ、そんな事したら、タベッラさん、お仕事しながら私のためにこんなに頑張ってくれたのに、何もなしに……!」

「良いんだアルクス。見返りを求めないで人のために頑張る君の上前をはねる真似はできないさ」

「タベッラさん……!」


 そんな……!

 私が自分の仕事を安くしてたから、タベッラさんが遠慮して……!

 先生が言うように、ちゃんと価値をわかっていたら……!


「……というのは建前でな」

「へ?」


 建前?


「アルブム教には所属する救護院が作る物によって、冒険者組合に大きな貸しを作れた。これは幅広く使える切り札になる」

「確かに……。依頼料が支払えない辺境の村や町にアルブム教の名の下に冒険者が派遣されれば、地域の安全に伴って信仰が高まるでしょうから……」


 ウィンクトゥーラさんが深々と頷く。


「冒険者組合としては、そんな借りを作ったとしても、お釣りが来るほど魔吸石の利は大きい。依頼成功率も冒険者の帰還率も跳ね上がるからな」

「そうだな! 冒険者が『硬化』で守られたら、腕の良い冒険者や将来有望な新人をみすみす失わなくて済む! これは大きいな!」


 ポルポラさんが嬉しそうに笑う。


「そして採掘組合は屑石が利益を生むようになった。まぁ効果を知ったら『もっと高値で買え』と迫られたが、アーテルさんの交渉が役に立ったよ」

「いやー、屑石って最初に言ったのはあっちですからねー。俺は大した事してませんよー」


 先生は相変わらず軽い感じでそう答える。


「その三者に利益を与えたのは、俺の所属する製薬組合。この交渉をやり遂げた俺は次期本部長の席を約束されている」

「成程。この上魔吸石の取り分を懐に収めては、いらぬ反感を買ってしまうという訳ですか」

「そういう事だ」


 カルクルムさんの言葉に、タベッラさんが頷いた。

 タベッラさん、この事で昇進できたんだ。

 ただ働きにならなくてよかった……。


「とにかくこれで魔吸石を冒険者組合に売ったり、知り合いに分けたりする分には、君の身は安全だ。これだけの後ろ盾を敵に回す馬鹿がいれば話は別だが」

「ありがとうございます! じゃあこれを……」


 私は特に大きい魔吸石に付与したものを皆に手渡す。

 ウィンクトゥーラさんには青の魔吸石を。


「ありがとう! アルクスちゃんがお休みの時に使わせてもらうわね!」


 ポルポラさんには藍の魔吸石を。


「ありがとな! これでばりばり怪物を狩ってくるぞー!」


 カルクルムさんには橙の魔吸石を。


「……感謝します。もっともこれに頼らずに仕事をするよう心がけますが」


 先生には緑の魔吸石を。


「……俺にもか? ま、一応もらっておくな。ありがとよ」


 そしてタベッラさんには、その全部を。


「お、おい、こんなにもらっちゃ悪いだろ……」

「いいえ! これでも足りないくらいです! 是非受け取ってください!」

「……そうか。ありがとう。お守りにさせてもらう」

「はい!」


 こうして私は、初級回復魔法の各色を付与した魔吸石を売る仕事を始める事になった。

 付与した魔吸石の本当の影響力を知らないままに……。

読了ありがとうございます。


今回一番利益を上げたのは間違いなくタベッラ。

散々頭を下げた甲斐があるというものです。


これにて藍の章は完結となります。

次回からは新章!

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] タベッラさん、難しい交渉を纏めるなんて、凄い優秀ですね。 アルクスちゃんのことを本気で心配してくれたり、本当に良い人で良かったです。 これもアルクスちゃんが良い子だからこその人徳ですね。 …
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