第四十三話 広がる波紋
タベッラとウィンクトゥーラに藍の初級回復魔法を付与した魔吸石を見せたアルクス。
すると二人の反応は予想以上に大きくて……?
どうぞお楽しみください。
「……つまりこれは、アルクスの法術を込めておいて、いつでもどこでも使える石、という事か?」
「はい!」
「しかもその魔吸石ってのは屑石扱いで、ただで譲ってもらったと……」
「はい!」
「……!」
私の説明を聞いたタベッラさんが、難しい顔をして考え込んじゃった。
……やっぱり言うのまずかったかな……?
「……アルクスちゃん……。その魔吸石はどうするつもりなの……?」
「これはポルポラさんがお仕事中に怪我しないようにって作ったものなんで、後でお届けしようかと」
「……ポルポラなら、うん、大丈夫だとは思うけど、ちょっと待った方がいいかもしれないわ……」
「そうですか?」
早く渡したいけど、ウィンクトゥーラさんがそう言うならまた今度にしようかな。
「……それで、この事はアーテルさん以外に誰か知っているの……?」
ウィンクトゥーラさん、声震えてる……?
心配する事なんてないのに。
ここは一つ……。
「それがですね、先生が『無闇に配ると捕まって魔吸石に初級回復魔法を込めるだけの仕事をさせられるぞ』って脅かしたんで、話したのはお二人が初めてです」
「……そう、良かったわ……」
……真面目に受け取られちゃった……。
「まぁ! それは大袈裟よね!」って笑ってくれると思ったのに……。
「それにしても先生は大袈裟ですよねー。そんな事あるわけないのにー」
タベッラさんにはちょっと驚いたけど取り越し苦労だったし、落ち着いて考えてみればそこまでする人なんていないだろうし。
「……いや、その先生とやらの判断は正しい……」
「え?」
「アルクス、君はこの魔吸石の凄さをわかっているのか?」
「あ、はい。これがあれば、怪我をする冒険者さんが減りますよね?」
「いや、そうだが、そうじゃなくて……」
「?」
あ、そっか。
『解毒』とか『体力回復』とかも込められるもんね。
怪我はしなくてもお腹を壊したり、疲れて動けなくなっちゃう事もあるだろうから、そういうのにも対応できるのは確かにすごい。
あ、今思うと、ルームスの『癒しの鎧』の緑の光、あれは緑の初級回復魔法だったんだろうな。
「……君の先生と話がしたい。どこに行けば会える?」
「先生なら毎日ここの仕事が終わる頃に、私の魔力と『専魔の腕輪』を確認しに来てくれますけど……」
「……わかった……。その頃また来る……。院長、わかっているとは思うが、内密に頼む」
「……はい、よろしくお願いいたします……」
「……全力は、尽くす……」
すごい疲れた顔で席を立つタベッラさん。
橙の初級回復魔法をかけてあげればよかったかな?
「じゃあウィンクトゥーラさん、ご飯食べて午後も頑張りましょう!」
「……えぇ、そうね。今考えても仕方がないものね……」
「?」
ウィンクトゥーラさんまで疲れた顔してる……。
ご飯食べたらお仕事の前に、橙の初級回復魔法かけてあげよう!
「よぉアルクス。お疲れさん。……そっちの人は?」
「製薬組合の支部長のタベッラさんです」
「……初めまして。あなたがアルクスさんの先生のアーテルさんですか?」
「はいどーもー。アーテルでーす。よろしくー」
「……」
また先生はふざけた感じで挨拶する……。
ただでさえ仮面を付けてて変に思われるんだから、挨拶くらいちゃんとしたらいいのに……。
「……あなたがアルクスさんに初級回復魔法の付与を教えて、また魔吸石を渡した、という事で間違いありませんか……?」
「そーですよー。それが何か?」
「……わかりました。場所を変えてお話しましょう」
「わかりましたー。さ、アルクスも行くぞ」
「はい」
挨拶のせいか、タベッラさんがぴりぴりしてる気がする。
でも話したら大丈夫だよね。
先生もタベッラさんもいい人だから。
読了ありがとうございます。
立った! フラグが立った!
次回もよろしくお願いいたします。




