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初級回復魔法しか使えないようにされた上に追放された法術士の私が、虹の聖女と呼ばれるまでの物語  作者: 衣谷強
藍の章

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第四十二話 示された誠意

遅くなりまして申し訳ありません。


不当に搾取されていると思い込んでウィンクトゥーラを責めるタベッラに怒るアルクス。

それなら仕事を見てもらおうと奮起しますが……?


どうぞお楽しみください。

「アルクスちゃん、今朝から頭が痛くて、熱も少しあるの……」

「では湯浴み着に着替えて、お水を飲んでお待ちください。次の方ー」

「すまないアルクスさん……。報告書の山場なんだが、徹夜続きで頭が回らなくて……」

「終わったら寝てくださいね。行きます」

「ふおおおー! みなぎって来たー!」

「くれぐれも今日だけにしてくださいね。次の方ー」

「ごめんねアルクスちゃん、うちの子転んで擦りむいちゃって……」

「うぇーん! うぇーん!」

「はい、すぐ治しますねー。ほら! もう痛いのないよねー?」

「うん!」

「泣くの我慢できてえらいね」

「うん!」

「次から転ばないように気をつけてね」

「はーい! ばいばーい!」

「ありがとうございます」

「お気を付けて。では次の方ー」

「……アルクスちゃん……。二日酔いで……」

「身体壊しますよ……? じゃあお着替えをしてもらって……」

「い、いや、それもだるいから、便所の方で……」

「……はい。ではお水を飲んでもらって……。行きます!」

「きたきたきたー! 便所借りるぜ!」

「……いってらっしゃい」

「……あの、着替えと水飲み、済ませました……」

「はーい。じゃあこちらに横になってください。行きますよー」

「わ……。汗が出て、すっきり……」

「お疲れ様です。着替えたらまたお水飲んでくださいね」


 ふぅ、今日も忙しい!

 でも患者さんが元気になって帰っていくのを見るのは、やっぱり嬉しいな。


「アルクスちゃーん。今日は友達を連れて来たのよ!」

「ほ、本当にしみが消えるのかい……? 何か騙されているんじゃ……」

「大丈夫です! うまくいかなかったらお金はお返ししますので!」

「……じゃあお願いしようかねぇ……」

「では行きます!」

「……あああかゆい! 何だかとてもかゆいよ!?」

「あ、掻かないでそのままにしてください。……はい、終わりです」

「はい鏡」

「ほ、本当だ……。ずっと気になっていた頬のしみが……! ありがとうアルクスさん!」

「お役に立てたなら良かったです!」


 さぁ、今日も患者さんはいっぱいだ!

 頑張っていこう!

 ……あれ? 何か忘れているような……?


「アルクスちゃん! 腰また頼むわ!」

「はーい!」


 いや、今は患者さんが一番だ!

 頑張るぞー!




「……この度は誠にすまなかった……」

「いえ、あの、タベッラさん、顔を上げてください……」


 お昼休憩の時間。

 タベッラさんはウィンクトゥーラさんに深々と頭を下げた。


「まさか本当に初級回復魔法だけで治療してただなんて……。しかもアルクスは本当に楽しそうに働いているし……」

「実際に見ないと信じられないのも無理はありませんわ。私もこの目で見るまでは、初級回復魔法にこんな力があるなんて思いもしませんでしたから……」

「だろうな……」


 タベッラさんが納得してくれて良かった!

 ……途中から存在を忘れていたのは内緒にしよう。


「本当にすまない。洗脳に近い状態だと思い込んで、目を覚まさせようと酷い事を言ってしまった。心より謝罪して撤回する」

「……アルクスを思っての事、嬉しく思います。どうぞお手をお上げになってください」

「感謝する」


 もう一度深く頭を下げると、今度は私に向き直った。


「アルクスにもすまない事をした。勝手に君が搾取されていると思い込んでいた」

「わかってもらえたなら、もう大丈夫です!」

「ありがとう。それにしてもあれだけの患者を手早く、しかも正確に治療するとは……。大したもんだ」

「ありがとうございます!」


 褒められると嬉しい!

 嫌な感じがしてたのは、私を心配してくれてたからで、本当はいい人なんだろうな。


「だが報酬については考えた方がいいぞ。確かに使っているのは初級回復魔法だが、効果はまるで別物だ。今の倍、いや三倍取っても許されると思うぞ?」


 うーん、それは前にウィンクトゥーラさんからも提案されたんだけど……。


「……そう言ってもらえるのは嬉しいんですけど、私がお金なくて大変だった時に、町の人達が色々助けてくれたんです。だから……」

「……恩返しってわけだ。なら俺がこれ以上口を挟む事じゃないな。すまないアルクス。改めて詫びさせてくれ」

「見ず知らずの私をここまで心配してくれて、ありがとうございます!」

「俺には君くらいの子どもがいるもんでな。他人事とは思えなかったんだ。今後何か困る事があったら、出来る限り力になるから、遠慮なく言ってくれ」

「はい!」


 朝はとんでもない日だと思ったけど、こうなるととてもいい日だなって思う。

 『専魔の腕輪』のおかげで色々な人と縁が繋がっていくのが、心強くて嬉しい。


「そう言えばアルクス、朝は何であんなに必死に逃げたんだ? 誰かに狙われるような事でもあるのか?」

「あ、えっと、それは……」


 誰かに相談しないといけない事だけど、今言っていいのかな……?

 でも心配してくれてるタベッラさんに、変なごまかしはしたくないな……。


「あの、これの事でちょっと不安になってて……」

「何だこれ? 藍色に光ってる……」

「えっと、『硬化』を付与した魔吸石まきゅうせきなんですけど……」

「は?」


 私の言葉に、タベッラさんとウィンクトゥーラさんが同時に固まった……。

読了ありがとうございます。


この判断が吉と出るか凶と出るか。


明日も投稿がいつもより遅くなるかと思いますが、更新はする予定ですので、次回もよろしくお願いいたします。

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