第四十一話 来訪の真意
魔吸石にまつわる怖い想像から、救護院の前で待っていたタベッラに怯えて逃げ出したアルクス。
しかしタベッラはアルクスの報酬の増額を望んでいて……?
どうぞお楽しみください。
「本当にすみませんでした!」
「いや、こっちこそ不用意に声をかけてしまって悪かった。見知らぬ男からいきなり声かけられたら怖いよな」
「いえいえ! 悪いのは私です!」
救護院の応接室で、私は何度も頭を下げる。
あの後おば様達に守られながら救護院に来て、ウィンクトゥーラさんにタベッラさんの身分証を確認してもらった。
……本当に製薬組合の偉い人だった……。
「うちのアルクスがとんだ失礼を……。重ねてお詫びを申し上げます……」
「いや院長。失礼とかそういう事ではなく、不幸なすれ違いだ。気にしないでくれ」
ウィンクトゥーラさんにも頭を下げさせてしまっている……。
ううー! 恥ずかしいし申し訳ない!
「……ですがタベッラ支部長。何故製薬組合のあなたが、救護院の法術士の報酬について言及なさるのですか?」
あれ? 何かウィンクトゥーラさんの声が固い?
「……我々製薬組合に対抗するために、アルクス・チェレスティスの治療報酬を不当に引き下げているのではないか、という噂を聞いてな」
「え……」
不当に、引き下げてる……!?
前に比べたらめちゃくちゃ増えてるんですけど!?
「……一体どこからそんなお話が?」
「どこからでも出るだろう。本来薬でしか治療できないはずの病気や衰弱を法術で、しかも初級回復魔法の料金で治療していると聞けばな」
「え、あの……」
だって初級回復魔法だもん。
付与がついてるだけで。
「院長はアルブム教の修道女だ。薬を超える法術を奇跡と置き換えて聖女を祀り上げれば、キュープラムを聖地として信徒を増やす事も可能だからな」
「そ、そのような詐術紛いな行いを、神がお望みになるはずがありません!」
「ならば単純に薬屋を潰した後で、救護院の治療費を釣り上げる算段か? そうすれば大儲け間違いなしだな」
「違います! そんな事は……!」
「何にしても年端のいかない法術士を安価な報酬で酷使するような真似が、正しい行いだとは思えないがな」
「……!」
何こいつ!
黙って聞いてれば言いたい放題!
ウィンクトゥーラさんがどれだけ町の人達のために頑張ってるかも知らないで!
「アルクス・チェレスティス」
「……何ですか」
「人々のためだからとか吹き込まれているのだろうが、己を犠牲にする必要はない。お前はもっと正しく評価されるべきだ。不当に屈するな。声を上げろ」
……じゃあ遠慮なく……。
「この、すかぽんたあああぁぁぁん!」
「!?」
「支部長だか何だか知りませんけど! 何を偉そうに! 私は冒険者時代に騙されて『専魔の腕輪』を付けられて、初級回復魔法しか使えないんです!」
「え……? せんまの、腕輪……?」
「それを拾ってくれたのがウィンクトゥーラさんなんです! 初級回復魔法しか使えない私に、何とか仕事をくれていたんです!」
「あ、うん……」
「そこに先生が来て、初級回復魔法に付与のやり方を教えてもらったんです! それで沢山の人の力になれているんです! 私の誇りなんです!」
「……」
「私は初級回復魔法しか使ってないんで、不当でも何でもないんです! 勝手に私が可哀想とか、ウィンクトゥーラさんが悪者だとか決めつけないでください!」
「す、すまない……。だが、本当に……?」
もう! どこまで頭が固いのよ!
「じゃあ今日一日私の仕事を見てください! 絶対思ってたのと違いますから!」
「あ、あぁ……」
私はそう言うと、肩を怒らせて応接室を出るのだった……!
読了ありがとうございます。
アルクス怒りの営業開始。
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