第四話 修行の始まり
いよいよアルクスの修行が始まりました。
しかしその方法は独特で……?
どうぞお楽しみください。
「ひいいいぃぃぃ……! せ、先生……! も、もう
て、手を、ああ上げてもいいですかあああぁぁぁ……!」
「まだまだ。『解毒』には水の感覚が必要なんだ。まだそのままだぞー」
「ぴいいいぃぃぃ……!」
そんな事言われても手の感覚がないんですけど!
それでも言われるまま、手を川の水につけ続ける。
「水が流れて押し流していく感覚、上手い事掴めよー」
「は、はいいいぃぃぃ……!」
初級回復魔法に『解毒』の効果を付与する修行。
その最初に指示されたのが、山の清流に手を突っ込み続ける事だった。
ひいいい……、冷たい……!
手の先から身体の芯まで冷えて行くみたい……!
「『解毒』と一口に言うが、魔法による解毒と薬による解毒の違い、わかるか?」
「は、はい!?」
こ、こんな状況で聞かれても……!
でもきっと必要な事なんだ……!
頭を回して……!
「え、えっと、き、効くのが、は、早いとか、ど、どど、毒の種類に、あわ、合わせる、ひっ、必要性、とか……!」
「正解だ。薬による解毒では、毒を特定して分解する薬を与える必要がある。対して魔法による『解毒』ではその必要がない」
せ、正解したから手を上げちゃ駄目ですか……!
寒いんです……!
冷たいんです……!
「そこで大事になるのが温度だ。毒が入ると生き物の身体はそれに抵抗する。その熱に反応して原因部分を知り、分解する、それが魔法による『解毒』だ」
「……!」
「まぁアルクスの場合は、魔法の形は初級回復魔法で固定だから、熱を持つ部分を理解したら『洗い流す』感覚になるけどな」
だからこんな修行を……!
私は寒さを奥歯で噛み締めて、感覚を研ぎ澄ませる……!
……寒い! 寒い寒い寒い!
震える身体に力を入れて、うううぅぅぅ!
「っ!?」
何、今の……。
金属を叩いたような澄んだ音。
そして頭に広がる色。
『青』……?
「へぇ、思ったより早く覚えたな。その感覚だ。じゃあ川から手を上げな」
「はいっ!」
て、手が真っ赤になってるうううぅぅぅ!
じんじんして痛い……!
「その状態で初級回復魔法を使ってみな」
「……はい!」
できればお湯とかであっためてからにしたかったけど……!
かじかむ手を前に伸ばして……!
「わっ……!」
今まで何度となく見てきた初級回復魔法の光。
いつもは薄い白なのに、青みがかった色になってる……!
「よし成功だな。この感覚を忘れるなよ」
「は、はい……」
手は痛いし、身体の震えは止まらない。
でもちょっとした傷の回復しかできなかった私に、法術士としてできる事が増えた!
それだけでも嬉しい!
「よし、じゃあ実践と行こうかな」
「はい!」
どこに行くんだろう?
やっぱり冒険者のところかな?
大蛇退治とかに解毒役は重宝されるもんね!
身体は冷え切っているけど、私の心は熱く燃えているのだった!
読了ありがとうございます。
アルクスが凄まじい勢いでフラグを立てていますが、果たして……?
次話もよろしくお願いいたします。