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初級回復魔法しか使えないようにされた上に追放された法術士の私が、虹の聖女と呼ばれるまでの物語  作者: 衣谷強
藍の章

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第三十八話 勝利のもたらしたもの

ポルポラを藍の初級回復魔法で勝利に導いたアルクス。

そこにアーテルが戻って来て……?


どうぞお楽しみください。

「何だか騒がしいと思ったら、何やってんだアルクス?」

「あ、先生!」


 ポルポラさんにぼこぼこにされたルームスが地面に落ちてぴくぴくしているのを見ていたら、先生が戻って来た!

 よかった! 早速お礼が言える!


「あの、先生のお陰で勝てました!」

「え、何の話?」


 あ、しまった。

 嬉しさのあまり、つい話をすっ飛ばしちゃった。


「あの、あそこで倒れてるのが私を冒険者仲間から追放したルームスで、何か急に仲間に戻れって言って来たのを断ったら、無理矢理連れて行かれそうになって……」

「あ、それでぼこぼこにされてるのか」

「はい、ポルポラさんが助けてくれて、その時に藍の初級回復魔法が役に立ったんです! お陰でポルポラさんに怪我もなかったし、ルームスは空を飛びました!」

「……最後がよくわからないが、まぁ良かったな」

「はい!」


 本当に先生に会えてよかった。

 もし付与の事を教わっていない時の私だったら、救護院であまり役に立ててない事と、生活の苦しさとでルームスの声に耳を傾けてしまったかもしれなかった。

 何よりこれまで色々な事を教えてもらえた事で、ルームスの事を恐れたり気圧されたりしなかったのが大きかったと思う。


「あー! すーっとしたぜ!」


 あ、そうだ、ポルポラさんにも先生を紹介しないと。


「ポルポラさーん!」

「アルクスー! 思いっきりぶちのめ……、何だそいつ……」

「どーもー」


 また先生は胡散臭い挨拶をする……!

 今ルームスと戦ってたかぶってるポルポラさんが勘違いしたら……!


「あんたその仮面、格好良いな! アルクスの知り合いか?」

「え? ポルポラさん……?」

「あ、えーっと、アーテルって言いますー……。どうもー……」

「アーテルか! よろしくな!」


 戸惑う先生の手をがしっと握るポルポラさん。

 ……そう言えばポルポラさんって、仮面を被って冒険者続けるつもりだったんだっけ……。

 ……先生の仮面、格好いい、のかぁ……。


「さーて、回復されても厄介だし、今のうちにこの『身護りの剣』折っておくか?」

「え!? ……おい、嘘だろ……?」


 ポルポラさんの言葉に、珍しく先生が驚いてる。

 どうしたんだろう……。

 まさか伝説の剣とか……!?


「……信じられない……! これを使う奴がまだいたなんて……!」


 剣を手に取って驚きの声を上げる先生。

 するといきなり、


「あーっはっはっはっは!」

「!?」


 大きな声で笑い出した!?


「おいおい! こんなお坊ちゃん用の武器振り回していきがっていたのか!? 情けない奴だなぁ!」

「な、何だと……!?」


 その声に手当てをされていたルームスが跳ね起きた。


「あ、あの、まだ回復は……」

「うるさいっ!」

「ひっ……!」


 法術を使っていたヴィリディスさんを怒鳴りつけ、先生を睨みつけるルームス。


「僕の剣が何だと言うんだ! ルトゥム家に伝わる由緒正しい魔道具だぞ!」

「そりゃ由緒正しいだろうさ。これは調子に乗りやすい貴族の坊ちゃんを狩りや戦いの場に連れて行く時に、安全のために持たせる剣だからな」

「何ぃ!? 出鱈目を言うな!」

「出鱈目じゃないさ。単に強い武器を持たせたら、調子に乗って深追いして命に関わる。だから負傷した時点で波動が出なくなるように作ってあるのさ」

「そんな……! そんな馬鹿な事が……!」

「おかしいと思わないのか? 怪我した時こそ持ち主を守るべき武器が、軽い負傷で力を失う事を。こいつは誰かが守ってくれる奴のための剣なんだよ」

「……う……」


 言葉を失うルームス。

 確かにそうだ。

 怪我をした途端に弱くなったら、危なくて使えないもんね。

 無茶をさせないように、怪我をしたらわざと弱くなるようにしてたんだ……。

 だから『身護りの剣』なんだな……。


「独り立ちできない奴を見守るための剣で『見守りの剣』なんて呼ばれてるから、持たされてるだけで恥と言われてたけどなぁ」

「……ぐぬ……!」


 え、名前ってそっちの意味だったんだ……。

 これは恥ずかしいな……。


「しかもその効果を維持するために『癒しの鎧』まで着込むとは、可愛いもんだなぁ」

「ぬーっ!」


 顔を真っ赤にしたルームスが鎧を乱暴に脱ぎ捨てると、肩を怒らせて町の外へと歩き出した。

 慌ててヴィリディスさんとロセウスさん、他の仲間の人達が慌てて追いかける。


「あ、あの、お待ちください、る、ルームス様……」

「あの、剣と鎧、どうするんですか!?」

「黙れっ!」


 ルームスの凄まじい声が響き渡った。


「あんなもの、もう僕には必要ない! 新しい魔道具を探すぞ!」


 そう言うと、ルームスとその仲間達は足早に去って行った。

 ロセウスさんが、こっちに一瞬頭を下げたのが見えた。

 ……きっと苦労をしてるんだろうな……。

 ってあれ? 先生、ルームスの鎧なんか調べて何してるんだろ?

 鎧の胸の真ん中あたりから、何かを外した?


「……あったあった魔吸石まきゅうせき。これだアルクス。これがあればお前の付与をもっと活かせるぞ」

「えっ!? その灰色の石が、ですか……?」


 見たところ普通の石と変わらないけど……。

 これに藍の初級回復魔法を込めれば、今みたいにポルポラさんを守れる……!?


「じゃあ早速それに藍の初級回復魔法を……!」

「いや、ちょっと待ってくれ。こいつを見本として採掘や宝石の専門家に似た石がないか聞いてみるからな」

「あ、もし他にも沢山あったら……!」

「そう。『硬化』だけじゃなく、『解毒』『体力回復』『再生』を身に付けた状態で冒険に行けるって訳だ」


 すごい!

 そうしたらきっと安全に冒険できる!


「へー! すごいなそれ! あたしも冒険者組合で聞いてみるわ!」

「そうしてくれるとありがたいな」


 ポルポラさんも協力してくれる!

 そうしたら冒険者さん皆が安全に仕事できるようになるかも!

 私はわくわくしながら、先生の手の中にある灰色の石を眺めるのだった……。

読了ありがとうございます。


やーいルームスー!

お前の武器、お子ちゃま仕様ー!


アーテルの言う『見守りの剣』の評価はそんな感じです。

これは恥ずかしい。


次回もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 身護りならぬ見守りの剣、これは恥ずかしいですね(笑) 専魔の腕輪といい、元々の由来が色々と間違って伝わっているものが多いのでしょうか。 身護りの剣は、親がわざとアレに嘘を付いて持たせた可能…
[一言] え!? そうだったの!? じゃあ、まともな貴族だったら「もっといい装備」をうまい使いこなしてるかも。 それにしても、「坊ちゃん用」の武器とは… ぷくく!
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