第三十七話 藍の初級回復魔法
ルームスの突然の勧誘に戸惑うも、拒絶の意思を示したアルクス。
それをかばったポルポラとルームスは一触即発の空気になり……?
どうぞお楽しみください。
「アルクスに何の用だ? ルームス」
ポルポラさんが地面に刺さった剣を抜いて、私とルームスの間に入ってくれた!
それだけで安心して涙が出そうになる……!
でも今のルームスは何かおかしい……!
ポルポラさんを守らないと……!
「おや、ポルポラじゃないか。顔の傷はどうした?」
「お前には関係ないね」
「その無礼な態度を改めるなら、その身体と顔に免じて夜の相手として雇ってあげてもいいんだけどな」
「死んでも御免だ。獣以下の屑が」
「……へぇ……」
ルームスが剣に手をかけた!
ポルポラさんも剣を構える!
「アルクス、下がってな」
「……」
悔しいけどルームスは強い。
ポルポラさんも強いけど、『身護りの剣』の威力を足すとルームスの方が有利……。
……でも……。
「ポルポラさん……」
「何だアルクス」
私はポルポラさんの耳に口を寄せて、ルームスに聞こえないようにささやく。
「……。だから負けないでください!」
「わかった!」
信じよう!
ポルポラさんと新しい力を!
「る、ルームス様! 町中ですよ!? こんなの冒険者組合に知られたら……!」
「うるさいよロセウス。先に剣を抜いたのはポルポラだ。それにこんな小さな町の組合が、僕に意見できるはずがない」
「……でも……」
「そんなにポルポラが気になるかい? 僕が遊んだ後に貸してあげようか?」
「……!」
ロセウス君が顔を真っ赤にして黙ってしまった。
あんな事言われたら誰だって腹が立つよね……!
ポルポラさんも嫌そうに舌打ちしてる……!
「さて、じゃあ……」
ルームスが剣を抜いた!
緊張感が周りの空気を張り詰めさせる!
「お仕置きといこうか」
ルームスが剣を振ると、波動がポルポラさんに向かう!
でもポルポラさんが剣を振ると、波動は澄んだ音を残して消えた。
「……へぇ。僕の波動を斬るなんて、魔道具かな? その剣は」
「そっちだって使ってるんだ。問題ないだろ?」
「生意気だよ。平民が僕の攻撃を防ぐなんてね」
そう言いながらもルームスは余裕の表情を崩さない。
次々に剣を振ってポルポラさんを攻め立てる!
「でも防ぐだけじゃ意味がないよねぇ!? いつまで持つかなぁ!? ひゃははは!」
「くっ……!」
ルームスは嫌な高笑いを上げながら、ポルポラさんへと近付いていく。
きっとあれだ。
前に亀の怪物を倒した時に使った、触れた状態から波動を放って、相手の内側を攻撃する技。
ポルポラさんの剣とぶつかった瞬間に波動を撃たれたら、まともに食らってしまうだろう。
でも……!
「ひざまずけ化け物女ぁ!」
剣と剣がぶつかり合った瞬間、波動が放たれた!
波動はポルポラさんを直撃して……!
「どうだポルほんごぉ!?」
ルームスが吹っ飛ばされた!
ポルポラさんの高々と上げた左拳に顎を撃ち抜かれて!
「へぇ……。アルクスー! すごいなこの力ー! 全然痛くなかったぞ!」
「よかったです!」
戦いの前に藍の初級回復魔法をかけておいてよかった!
ポルポラさんならルームスの攻撃を一回防げれば勝てると思ってた!
波動が当たったと油断したルームスは、思いっ切りぶん殴られて鼻血ぼたぼた。
あれならすぐには回復できないはず!
『身護りの剣』の波動がなければ、ポルポラさんに負けはない!
って剣も落としてるし!
「あが……! な、何で……!? 波動が当たったのに! うぅ、痛い……! ヴィリディス! 早く僕を治せ! ロセウス! 剣を拾え!」
「え、で、でも……」
「……」
「何をもたもたしてる! 早、く……?」
自分を見下ろす影に気付いたのだろう。
ルームスの言葉がそこで途切れた。
「そんな暇なんか与える訳ないだろ?」
「ま、待て! 卑怯じゃないか!?」
「卑怯? 何が?」
「け、剣を落とした相手を剣で攻撃するなんて、恥ずかしいと思わないのかい!?」
「……確かにな」
ポルポラさんが剣を鞘に納めた。
そしてルームスの鎧の胸元を掴んで立ち上がらせる!
……すごい力……!
「なら素手でやってやるよ」
「ひ……! ま、待」
「さぁ」
ポルポラさんが怖い笑顔を浮かべた!
「お 仕 置 き と い こ う か」
ポルポラさんの右の拳でルームスが宙を舞う!
更に左! 右! 左! 右! あ! 蹴り! また右……、いや左!? わわわ! 速くてよくわからない!
「ぶべっ! はぎゅ! ぼほっ! みぎゃ! ぎゃふっ! ぐはっ! べほっ! がっはぁ!」
殴られるたび、蹴られるたびに変な声を上げながら、宙に浮き続けるルームス。
……人が殴られてるのを見て喜ぶなんてよくない事だと思うけど、私は何だかとてもすっきりした気持ちでそれを眺めていたのだった……。
読了ありがとうございます。
空中コンボは浪漫。
でも飛ばすだけじゃなくて回ったりした方が良かったかな、なんて思います。
次回もよろしくお願いいたします。




