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初級回復魔法しか使えないようにされた上に追放された法術士の私が、虹の聖女と呼ばれるまでの物語  作者: 衣谷強
藍の章

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第三十五話 つまずく修行

アーテルに新たな付与を教わる事に決めたアルクス。

しかし修行は難航しているようで……?


どうぞお楽しみください。

「むー……」


 私は自分の部屋で、手に鉄の玉、胸に綿わたを抱えて悩んでいた。

 先生はこれが『硬化』を付与する修行だって言ってた……。


『この綿を、丸めたり押して固めたりしないで、この鉄の玉と同じように感じられたら修行は成功だ』


 なので朝ご飯を食べてからずっと触ってるけど……。

 ふわふわとかちかち……。

 軽いと重い……。

 すべすべとつるつる……。

 白いと黒い……。

 全然違うのを同じに感じろってどういう事ー!?

 きっと綿が人の身体で、それを鉄みたいに想像できれば、『硬化』の付与ができるって事なんだろう。

 丸めたり押し固めたりしちゃ駄目っていうのも、そういう理由だと思う。

 でもやっぱり綿と鉄は別物だよ……。


「……えいっ」


 私は綿を抱えたまま、寝台に飛び込んだ。

 うー、気持ちいい……。

 このまま寝たくなっちゃう。

 ……そういえば昼間に部屋にいるっていつぶりだろう。

 ルームスのところで冒険者……、というか回復係をしていた頃は、大抵が野宿だったし、町に戻ってきた時にも、


『主人である僕のために働くのが君らの勤めだろう? さぁ早くお酒を買って来たまえよ』

『何故お酒だけを買ってくるんだい? お酒にはつまみがつきものだろう? 全く気が利かないね』

『……木の実の塩炒りとは、つまみの選択が絶望的だね。このお酒に合うのはチーズだって事くらい理解できないのかな?』

『君がもたもたしているからお酒がなくなってしまったよ。早く次のお酒を持ってきたまえ』


 とか言われて、一日中お店とルームスの部屋を行ったり来たりしてたからなぁ……。

 先生に会う前は、救護院の仕事がない時間は町の人のお手伝いをしてお金をもらっていたし、先生と会ってからは休みは修行か色の使い分けの練習って感じだし……。


「……ふぁ……」


 ……ちょっとだけ……。

 ちょっとだけお昼寝してもいいかな……?

 ちょっと寝たら元気になれる気がするし、頭もすっきりするだろうし、うん、いいよね?

 誰に言うわけでもない言い訳を頭の中で呟くと、私の意識は一気に眠りへと落ちていった……。




 ……やわらかいもの……。

 おすとかたちがかわる……。

 かたいもの……。

 おしてもたたいても、かたちがかわらない……。

 うぃんくとぅーらさんとか、せんせいとか、ぽるぽらさんは、やわらかい……。

 わたしをふんわりうけとめてくれる……。

 やわらかいのは、よゆうがあるから……。

 わたがくうきをふくむみたいに、なにががはいるすきまがあるから……。

 ……かいぶつとたたかってきずつくのは、きばやつめがはいりこむから……?

 じゃあすきまをなくせば……?

 わたのすきまがなくなったら、てつみたいにかたくなる……。

 そうすればきっときずつかない……。




「はっ!?」


 目を覚ますと外はもう夜だった。

 あー! ちょっと昼寝のつもりだったのに、完全に寝ちゃった!

 どうしよう、修行も終わってないのに……。

 ……あれ?

 何か新しい色の感覚が……。

 『藍色』……?

 え、これってもしかして……?

読了ありがとうございます。


休みの日は寝るもの。

古事記にもそう書いてある。


次回もよろしくお願いいたします。

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