第三十四話 新たな願い
ルームスの企みなど全く知らないアルクス。
アーテルへの礼にアウラン食堂に行きますが……?
どうぞお楽しみください。
「さ、さぁ、先生! どうぞ召し上がれ!」
「おう、遠慮なくいただくぜ」
アウラン食堂で、私は先生と共に高級食材と向き合っていた。
ぶ、豚肉だぁ……!
鶏肉よりも更に高級品!
すりおろしたジンジアの根の香りが、じゅうじゅういうお肉から漂ってくる……!
あぁ、もう絶対美味しいやつ!
「いただきますっ!」
ナイフで一口の大きさに切って、フォークで刺す。
口元に持っていくと、美味しそうな匂いが鼻を直撃する!
……食べて、いいんだよね……?
生唾をごくり。
意を決して口に含むと……、うわあああぁぁぁ!
甘辛い味とお肉の美味しさ!
あふれる脂が甘い!
でもジンジアの根が脂っこさを消してくれるから、いくらでも食べられちゃいそう!
「お前は本当に美味そうに食うなぁ」
「本当に美味しいんだから仕方ないですよ!」
「ま、確かにな。……うん、美味い」
「そう言ってくれると作った甲斐があるねぇ。うちの豚肉ジンジア焼きは、タレに蜂蜜を使ってるんだ。だから味に深みが出るのさ」
「そうなんですね! そう聞くとより美味しく感じる……!」
「アルクス、顔溶けてるぞ」
「料理人冥利だねぇ」
先生も女将さんもにこにこしている。
美味しいご飯がここにある。
あぁ、何て幸せなんだろう……。
「しかしお前、緑の初級回復魔法を希望する患者が殺到したから、先月以上に給料もらったんだろ? それなら肉でも魚でも毎日食べれるだろうに」
「いえ! ご馳走は特別な時だけがいいと思います!」
ポルポラさんの顔が治ったお祝いに食べた宿屋のご馳走。
あれからしばらくの間、夢に見るようになってしまった。
本当に時々食べるのがいいんだと思う、ご馳走っていうのは。
「これはご馳走と言うか……、ま、アルクスが満足ならそれでいいか」
「はい!」
私は神に祝福されたと言っても過言ではない豚肉を、丹念に味わうのだった……。
「はぁ……。幸せです……」
豚肉のジンジア焼きを食べ終わった私は、美味しさの余韻に浸っていた。
やっぱりご馳走は、じっくり味わうのがいいなぁ……。
「さてと。報酬ももらった事だし、次に覚えたい付与は何かあるか?」
「……そうですね……」
先生の言葉に、私は考え込む。
正直、『解毒』『病気治癒』『体力回復』『再生』というすごい法術を、『専魔の腕輪』のおかげで魔力切れなく使えている今、さらにほしい付与なんて……。
あ!
「先生、あの、怪我しにくくなる付与ってありますか? えっと、『硬化』みたいな……」
「あぁ、あるぞ。あれか? 前に顔を治した女剣士にか?」
「はい」
ポルポラさんは冒険者組合に申請して、正式にルームスの仲間から外れた。
そして新しい仲間を見つけて、冒険に行くようになった。
でも悔しいけどルームスの仲間の時のような偉い人の助けはないし、装備や道具にかけるお金もぎりぎりだ。
ポルポラさんは、
『こういう風にあれこれ考えるのも面白いからな! あの馬鹿貴族のところにいた時より全然楽しいぜ!』
って言っていた。
楽しいのは本当だと思う。
私もあのねちねちしたいやーなルームスから離れられただけで、気持ちが晴れた覚えがあるから。
でも前の酸蜥蜴の時のように、大怪我をする事があったら……。
そう思うと何かしたくてたまらなくなる……。
「まー、できなくはないけどな。ただそれって冒険に行っている間、効果を持続したいんだよな」
「あ、はい。そうですね」
「だとしたらお前じゃ無理だ。色による付与は、術者が対象に接触してかけるものだからな。お前が一緒に冒険に行くなら別だが」
「そ、そうですか……」
うぅ、残念……。
ポルポラさんの事は心配だけど、救護院を長く休む事もできない。
「ただ魔吸石を使えば、そいつに付与を与えられる」
「まきゅう、せき……?」
「魔術や法術を溜めて少しずつ放出する効果のある石だ。氷結魔術を溜めて食べ物の保存をしたり、火炎魔術を溜めて暖を取ったりするやつ、知ってるか?」
「……?」
そんな便利なもの、あるんだ。
見た事ないな。
「知らないか。じゃあそれは俺の方で用意してやるよ」
「ありがとうございます!」
「じゃあ次の休みに修行するぞ」
「よろしくお願いします!」
ポルポラさんの事を守れるかもしれない。
そう思うと修行がとても楽しみに感じた。
読了ありがとうございます。
投稿が遅くなってすみません。
お酒ってやつの仕業なんだ……。
次回もよろしくお願いいたします。




