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初級回復魔法しか使えないようにされた上に追放された法術士の私が、虹の聖女と呼ばれるまでの物語  作者: 衣谷強
緑の章

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第三十二話 進むべき道

左手を失った老人ブルブスに緑の初級回復魔法で再生を試みるアルクス。

ウィンクトゥーラの助力を得た治療の結果は……?


どうぞお楽しみください。

「おぉ……! 動く……! 今まで通り、いや、それ以上かもしれない……!」

「よかったです!」


 おじいさんは再生した左手を握ったり開いたりして喜んでいる。

 治せてよかった……。

 あ、そうだ。ちゃんと言っておかないと。


「あの、この緑の初級回復魔法の事なんですけど、他の人には内緒にしてもらえませんか?」

「な、何故だね!? この素晴らしい力を公表すれば、お嬢さん、いや、アルクスさんは、王宮に招かれてもおかしくない!」

「いや、そういうのは……」


 私はそんなに大した法術士じゃない。

 『専魔の腕輪』の力を先生に引き出してもらっただけ。

 私そのものの力じゃない。

 先生は、その力を人に使う事を決めたのは私だから、評価を受ける資格があると言ってくれた。

 でもそれを受けるのは、正直怖い。

 もっと自分の力に自信を持てたら、その時に考えたい。


「まずはこの町でお世話になった人に恩返しをしながら、ゆっくり成長したいと思っています。なので……」

「……わかりました。周囲の人間にはうまく誤魔化すとしましょう」

「ありがとうございます!」

「ただ、もしあなたの力を真に必要とする者がいたら、秘密厳守を前提にご紹介してもよろしいですか?」

「えっと……」


 おじいさんの言葉に、私はちらっとウィンクトゥーラさんを見た。

 笑顔で頷いてくれたのを確認して、私はおじいさんに向き直る。


「はい! 私が力になれる事なら是非!」

「ありがとうございます。アルクスさんに出会えた事は、かけがえのない幸運です」

「あ、ありがとうございます……!」


 深々と頭を下げられて、何と答えていいかわからない……。

 反射的に頭を下げる。

 すると、おじいさんのお腹が大きな音を立てた。


「っ……。こ、これはこれはお恥ずかしい……。朝食は済ませたのですが……」


 恥ずかしがるおじいさんに、私は慌てて説明する。


「いえ、あの、身体の失った部分を補うために、身体の元になる食べ物を使うので、お腹空くんです!」

「そ、そうでしたか。成程、何も無いところから生える道理はありませんからな」

「な、なので、お肉とかお魚を食べてください」

「そういたします。本当にありがとうございます。ではこれで失礼いたします」


 ウィンクトゥーラさんにお金を払い、もう一度頭を下げると、おじいさんは救護院を出て行った。

 ……ふぅ、何とかなってよかった……。


「お疲れ様アルクスちゃん」

「あ、あの、ウィンクトゥーラさん、ありがとうございます! 急なお願いなのに、対応してくれて……」

「そうね。ちょっとびっくりはしたけど、一人で何とかしようとしないで、ちゃんと救護院を頼ってくれたの、嬉しかったわ」

「……はい!」


 やっぱり私はここで色々な事を勉強して、法術だけじゃなく人として成長して、ウィンクトゥーラさんや先生みたいな立派な人を目指そう!

 そしてちゃんと恩返しをしたら、私……!

 きらきらと輝く法衣をまとって、多くの人を治す自分の姿を思い浮かべて、気持ちはふわふわと舞い上がり……!


「さ、じゃあ急いで開院の準備をしましょう。今日もきっとアルクスちゃんに治療をお願いする人がいっぱい来るでしょうからね」

「……はい」


 ウィンクトゥーラさんの言葉に現実に引き戻される……。

 うん、今日も頑張ろう……。

読了ありがとうございます。


アルクスの中では、まだ初級回復魔法の付与による治療は、降って湧いた幸運であり、自分の力と信じきれていない部分があります。

治療の成功体験を重ねていけば、いつか自分のものだと確信できるでしょう。

女性陣の肌トラブル治療もそのためと思えば……。


緑の章はこれで完結となります。

次回閑話を一話挟みまして、いよいよざまぁパートに取り掛かりたいと思います。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] え? わたしたちの治療院はこれからだ! 打ち切りエンドじゃないんですか〜(笑)
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