表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初級回復魔法しか使えないようにされた上に追放された法術士の私が、虹の聖女と呼ばれるまでの物語  作者: 衣谷強
緑の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/113

第三十一話 もう一つの緑

緑の初級回復魔法に『再生』の法術と同じ効果がある事を知ったアルクス。

同時にそれが多くの患者を呼ぶ事をアーテルに教わり、戦々恐々としますが……?


どうぞお楽しみください。

「うえええん! やだぁ! おじいちゃんのて、こわいよー!」

「とぅ、トゥリパ……」


 空き地から駆け出ていく五、六歳くらいの女の子。

 取り残されたおじいさんは、がっくりとうなだれた。

 ……そのおじいさんには左手がなかった……。

 手首から先がつるんと丸くなっている……。


「……あの、どうかされましたか?」

「はは、いや、これはお恥ずかしい……。久し振りに孫に会いに来たのですがな。先日森で狼にやられた左手が怖いと泣かれてしまって……」

「そう、だったんですか……」

「私の紙折りや手品を喜んでいた子だったので、余計に手がない事の衝撃が大きかったのでしょう……」

「……」


 ……左手だけなら緑の初級回復魔法で治せる、はず……。

 でも先生の言葉が頭をよぎる……。


『失った身体を治せると知られたら、今の比じゃないくらいに人が押し寄せるからな。気をつけろよ』


 ……身震いがする。

 今でさえへろへろになるほど、患者さんが来ている。

 これ以上の、しかも今より必死に治療を求める人が来るってなったら……!


「……まぁ孫が元気なのがわかっただけで十分です。しばらくは会わないようにしようと思います。……わざわざ話を聞いてくれてありがとう、お嬢さん」

「待ってください!」

「!?」


 そんな事関係ない!

 今苦しんでいるお爺さんと、泣いて帰ってしまったお孫さん、その縁がここで切れてしまうなんて駄目だ!


「あの、私、その手を治せます!」

「な、何ですと!?」

「朝ご飯は食べました!?」

「あ、あぁ、食べたばかりだが、その、治せるというのは……?」

「なら付いてきてください!」

「え、あの、ちょっと!?」


 私はおじいさんの手を取って早足で歩き出した。

 後の事は治してから考えよう!




「ウィンクトゥーラさん!」

「あらアルクスちゃん。おはよう。今日もよろしくね」

「あの! このおじいさんの治療をしてもいいですか!?」

「え……? あ、治療って……、そ、その人の手を……?」

「はい!」


 朝の支度をしていたウィンクトゥーラさんは目を白黒させている。

 でも今じゃないと、他の患者さんに見られちゃう!

 そうしたら、いっぱいの患者さんが……!


「お願いします!」

「……わかったわ。でも私も一緒に診させてもらうわね」

「! ありがとうございます!」


 ウィンクトゥーラさんはそう言うと、おじいさんの方へ向き直った。


「では奥の部屋にどうぞ。あ、お名前は?」

「わ、私はブルブスと申しますが、その、本当に治るのですか……? 失礼を承知で申し上げますが、彼女は上級法術士の方には見えなくて……」


 う、そうだよね……。

 ウィンクトゥーラさんならともかく、私じゃ……。

 

「大丈夫です。彼女は、アルクスはこの救護院の中で最も優秀な法術士ですから」

「……!」

「……そうですか……。では、よろしくお願いいたします……」


 ……! ウィンクトゥーラさん!

 おじいさんの不安を軽くするための言葉だとしても、すごく嬉しい……!

 ……いやいや、浮かれてる場合じゃない!

 期待を裏切らないようにしなきゃ……!


「ではそこに横になってください」

「はい……」


 不安そうに施術台に横になるおじいさん。

 まずは橙の初級回復魔法で、元気になってもらおう。


「おぉ!? 何だか腹の奥の方からじんわり力が……!」

「……では、行きます!」


 私はおじいさんの左腕に手を当てて、緑の初級回復魔法をかける。

 ……おじいさんの左手の姿が頭に流れ込んでくる。

 この形になるようにするには……。


「……!」


 頭の中で、種が芽を出し、枝を伸ばして木になる姿が思い浮かぶ!

 そうか! 植物が伸びるように力の方向を調整すれば……!

 先生が種を使って教えてくれた意味がわかった!

 これなら、行ける……!


「な、何だ……!? ひ、左腕が、何か、変だ……!」


 緑の初級回復魔法に従って、身体の元が左腕に集まっていく。

 するとつるんとしていた左手の付け根から、ゆっくりと手が再生していく……!


「うぐっ!? ひ、左手が、か、かゆい……!」


 おじいさんが苦しがってる!


「が、我慢してください! 今、手が再生し始めているので!」

「そんな事言われても、かゆいものはかゆくて……!」


 必死に耐えてくれてるけど、おじいさんは苦しそう……。

 今再生したのは親指の付け根くらいまで……。

 まだまだ完全に再生するには時間がかかる……!

 一旦止めた方がいいのかな……?


「天に地に満ちる我らの創り手よ。の者の痛み苦しみを和らげたまえ。『鎮痛』」

「……おぉ、かゆみが治まった……!」

「ウィンクトゥーラさん!」


 『鎮痛』の法術を使ってくれたウィンクトゥーラさんが、私に向かって大きく頷く。


「さぁアルクスちゃん! 頑張って!」

「はい!」


 これなら行ける!

 私はおじいさんの手に集中して魔力を流し続けた……。

読了ありがとうございます。


自分の都合より人の都合を優先してしまう……。

そういうのってグッときますよね。

ヒ◯アカ? 大好きです!


次回もよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] バカだなあ、バカだなあ。 もっとうまいやり方だってあっただろうにさ。 自分のこととか保身とか、なんにも考えずに突っ走っちゃうんだから。 何かあったら助けてもらえるとかも、全然考えてないん…
[一言] ついに パンドラの箱は 開放されり
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ