第二十九話 求められる力
ポルポラの完治を祝う食事会。
そこにとある人物が忍び寄り……?
どうぞお楽しみください。
「かんぱーい!」
「乾杯」
「か、乾杯……!」
私は緊張しながら、ポルポラさんとウィンクトゥーラさんの器と器を合わせる。
目の前に並べられた料理が大変な事になってる!
大きな魚の丸焼き!
分厚いお肉!
きらきらしてるスープ!
見たことのない野菜ばかりのサラダ!
ふかふかのパン!
他にも炒め物とか煮物とか色々!
お、王様のご飯だ……!
「さ、好きなの食べな!」
「え、えっと……」
どれも初めてだから、何を食べていいのかわからない……!
「じゃあ私のおすすめをお皿に乗せるから食べてみて」
「あ、ありがとうございます……!」
ウィンクトゥーラさんの優しさがありがたい……!
……おぉ、まずはサラダと煮物……!
「い、いただきます……!」
フォークを持つ手が震える……!
サラダの野菜を恐る恐る口に運び……!
「……! お、美味しい〜……!」
しゃきっとした歯応えと一緒に、甘酸っぱくて、何かすごく美味しい味が広がる……!
このソース、野菜をご馳走に変えてる……!
「そんなに気に入ったか? 普通のサラダだと思うけどなー」
「アルクスちゃんが気に入ったんだからいいじゃない」
「それもそうだな」
次はこの煮物……!
いただきます!
「! 何これとろける〜……!」
多分蕪だと思うんだけど、柔らかさと味のしみ方がすごすぎる……!
噛むたびに、いや、舌で押すだけでも、美味しい煮汁がじゅわ〜って……!
「アルクスは食べさせ甲斐があるなー。スープ飲めスープ」
「ありがとうございます! ……美味しい上にいい香り〜!」
「次はお魚とお肉をよそうわね」
「ありがとうございます! ……お魚が口の中でほろほろ崩れます! ……! お肉、お肉がとろって! とろって!」
何を食べても美味しい!
こんないい日があるなんて……!
「ポルポラさん、ウィンクトゥーラさん、ありがとうございます!」
「……ふふっ、それはこっちの台詞だよ。あたしの顔を治してくれてありがとな、アルクス」
「えぇ、何回お礼を言っても足りないくらい! 本当にありがとう、アルクスちゃん!」
「……!」
ご馳走に、二人からのお礼。
まるで天国……!
こんないい日が私に来るなんて……!
先生ありがとう……!
あ、橙の時のお礼もまだなのに、緑の初級回復魔法を教えてもらっちゃった……。
早くお礼しないと!
「あの……、お食事中失礼します……」
あ、さっきお料理を運んでくれた、この宿のご主人さんだ。
「あの、お客様の顔の治療をされたと聞いたのですが……」
「あぁそうだ! このアルクスがあたしのただれた顔をこんなに綺麗にしてくれたんだ!」
「あぁ! 何という奇跡! 私の娘が顔にできものができて、人前に出る事ができずにおります! どうか治してやってください!」
「はい! もちろ……」
と頷きかけて、先生の言葉を思い出した。
『気持ちは分かるがそういうのは駄目だ。お前は法術士なんだからな』
ぐっと言葉を堪える。
「……ん構いませんので、明日救護院に来てください」
「はい! ありがとうございます!」
喜んでくれているのか、踊るように奥に戻る宿のご主人。
良かった。今度は間違えなかった。
「へー。アルクスも立派な法術士になったなー」
「そうでしょポルポラ。アルクスちゃん凄いんだから」
「あ、ありがとうございます……」
こうして楽しい夜は楽しいまま続いたのでした……。
その翌々日。
「アルクスちゃん、ありがとう!」
「……いえ、お大事にどうぞ……」
「次は私だよ! アルクスちゃん、頼むね!」
「……はい……」
ポルポラさんと宿の娘さんの顔を治した事が人伝いに広まって、救護院は大騒ぎになった……。
怪我や病気ではなく、しみやそばかすを治したい人が押し寄せたからだ……。
またしばらくは忙しくなりそう……。
読了ありがとうございます。
美容となれば目の色を変えるのも仕方ない。
次回もよろしくお願いいたします。




