第二十八話 嬉し涙のその果てに
見事ポルポラの顔の治療に成功したアルクス。
しかし二人の嬉し泣きは新たな騒動を招いたようで……?
どうぞお楽しみください。
「いやー、本当にありがとなアルクス!」
「いえ! 治せて良かったです!」
思いっきり泣いたポルポラさんの顔は、鼻も目の周りも真っ赤になっていたけど、とっても可愛くて綺麗だった。
これなら結婚してお母さんになる夢も、きっと叶うはず。
「しかしアルクス、お前すごい法術を覚えたんだなー。これなら王都の救護院でも働けるぞー?」
「え? そ、そうですかね……?」
王都の救護院は文字通り最高峰。
安定した貴族のお抱え法術士や薬師より、王都を目指す人が多いくらいだ。
私なんか一生かけても無理じゃないかな……。
「だってそうだろ? 酸でただれた皮膚が元通りになるなんて、『再生』の法術みたいじゃないかー」
「そ、そんなわけないですよ!」
失った手足さえ元に戻す『再生』は上級法術!
儀式や薬の補助がないと、上級法術士でもなかなか成功させられない高難易度!
緑の初級回復魔法はすごいと思うけど、『再生』とは別物だと思う……。
「もっと力を注いだら、失った指とか元通りにできるんじゃないか? 今度やってみろよー」
「あ、あはは……。き、機会があれば……」
ポルポラさん、顔の傷痕が治って嬉しいんだろうけど、そんなに私を持ち上げなくても……。
「ポルポラ!? いる!? 無事!?」
「! トゥーラ姉!? どうした!?」
突然扉の外から聞こえる、ウィンクトゥーラさんの緊迫した声!
ポルポラさんが素早く剣を握って、扉に駆け寄り引き開ける!
「あぁ! 良かった! 無事だったのね!」
「どうしたんだトゥーラ姉……! 何かあったのか……?」
「それは私の台詞よ! 宿のご主人から、『ポルポラが誰かと部屋で大声で泣いてる』って報せを聞いて、急いで来たんだから!」
……あ。
そうだよね、当然心配するよね……。
「あー、それは、その……」
「ってポルポラ、あなた顔が……!?」
「アルクスが治してくれてー、そのー、嬉し泣きってやつで……、おわっ!?」
ウィンクトゥーラさんがポルポラさんに抱きついた!
そして、
「良かった……! 良かったねぇ、ポルポラ……!」
泣きながらポルポラさんの頭を撫で始めた。
「……うん、ありがと、トゥーラ姉……」
きゅっと抱きしめ返すポルポラさん。
あぁ、素敵だなぁ……。
また泣いちゃいそう……。
「アルクスちゃん!」
「は、はい!」
ポルポラさんを抱きしめたまま、ウィンクトゥーラさんが私を呼ぶ。
何だろう突然……?
「ありがとう! ポルポラを救ってくれて、本当にありがとう!」
「……ウィンクトゥーラさん……!」
頑張って良かった……!
勇気を出して良かった……!
ポルポラさんだけでなく、ウィンクトゥーラさんにも恩返しができた事が、嬉しくて嬉しくてたまらない……!
「アルクス!」
「……はい!」
「これから何か困った事があったら、まずあたしに言え!」
「ポルポラさん……!」
「私にもね、アルクスちゃん」
「ウィンクトゥーラさん……!」
二人が伸ばしてくれた手を、私はぎゅっと握った。
胸が熱くなって、私はもう一度嬉し涙を流したのだった……。
「はー、何かすっごく腹減ってきたなー! さっき飯食ったばっかなのに!」
「あ、緑の初級回復魔法は、身体の元になる栄養を使うそうなので、お肉とかお魚を食べるといいみたいです!」
「そっか! じゃあアルクス! トゥーラ姉! 飯に行こうぜー!」
「えっ!?」
「いいわね。ポルポラの快気祝いで」
「あ、でも、私……」
……お祝いはしたいけど、宿のご飯って地元の名産品とかを使うから、結構高かった気が……。
「大丈夫よ、私とポルポラの奢りよ」
「そうだ! 何たってあたしの恩人だからな!」
「え、えっと……」
「アルクスちゃんに嬉しさを一緒にお祝いしてほしいのよ」
「あぁ! だから頼む!」
「……はい!」
ここは遠慮しちゃ駄目だ!
目一杯一緒に楽しもう!
私はこの時、とても浮かれていた。
だから気が付かなかった。
この後に迫る、とんでもない騒動に……。
読了ありがとうございます。
何やら不穏な空気を醸し出しながら、緑の章はもう少し続きます。
次回もよろしくお願いいたします。




